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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
二章 イスカの街編
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黒猫の庭 6

「やべえ、マジでやべえわ、ニヤニヤが止まらない!」


 俺はカタログを開いて現在のポイントの欄を見ている。

 現在のポイントは273832ポイントだ。

 夢の十万ポイント台だ!

 これで欲しかったものが色々買える!

 まずは洗濯機にトイレにお風呂に冷蔵庫に移動用の車みたいなものも欲しいな。

 ヤバイ!

 ついにうちも文明開化だ!


「大斗、欲望が駄々漏れですよ」


「はっ、あまりのポイントについ我を失ってしまった」


 どうやら思っていたことが実際口に出していたみたいだ。

 いけない、いけない。

 こういうことは黙っておかないとまたコンに小言を言われてしまう。

 そう思ったがどうやら遅かったみたいだ。


「しかも戦闘用のスキルじゃなくて、なんでほとんど全部生活用品なんですか。普通戦力を整えるのが先でしょう」


「それはね、文明人としてこれ以上、この生活は耐えられないんだよ!」


 俺は大声を上げて説明し始める。


「トイレは常に野糞のぐそ、洗濯できないので大量生産品の服を使い捨ての日々、飲み物はぬるい、お風呂がないので常に川での水行、川が近くにないと風呂は入れない、テレビは見れなくてもいいわ、パソコンでネットしたい! それに家族と一緒に遊びたい! ポイントがたくさん入ったら少しは……少しは贅沢したいよ!」


 俺の目は自然に涙が流れていた。

 あれ?

 おかしいな。

 なんで涙なんかが出てるんだろう。

 それに今はもういない家族の事まで口走ってしまっている。


 コンが近くに来てくれて顔をぺろぺろ舐めてくれる。


「私が先を急ぎ過ぎていましたね、大斗は大斗の調子でゆっくりと強くなっていけばいいんですよね」


「ごめん、慣れたとはいえ、やっぱり俺は疲れていたみたいだ。前の世界のことを思い出すとどうしてもね、元の世界に帰ったとしても家族なんて誰も残っていないのに……」


「そうですか、だから大斗は今まで元の世界に帰る方法を聞かなかったんですね」


「向こうの世界にいると、あの家に居るとどうしても家族のことを思い出してしまうから、帰る気にはならなかったんだ。どうせ帰っても誰もいないんだから……」


 俺がコンを撫で撫でしていると自分落ち着いて来るのを感じる。

 懐かしいな、コンを撫でているとどうしても昔うちで飼っていた猫のことを思い出す。

 あの子は無事に天国に行けたのだろうか。

 俺も落ち着いてきてコンに声を掛ける。


「ごめんな、急に泣き出してしまって、コンも意味分からないよな」


「いえ、大斗が意味分からないのはいつものことですから」


「そうだな」


「それとですね、生活用品を買うのでしたら1戸建ての家(色々な付属品あり)を買うと良いですよ。三十万ポイントしますが大斗が望む装備は全部揃ってますから」


「家か、それもいいな、じゃあそれを買うために頑張るか」


「そうですね、頑張りましょう」


 俺とコンは今日もまた召喚トラップでレべリング兼ポイント貯めをする。




「しっかしこの方法他の奴は思いつかなかったのかねえ?」


 さすがにずっと魔物を狩っているか、移動しているかに飽きたのか俺は肩に乗っているコンを撫で撫でしながらコンに問いかける。


「そうですね、普通の人にとっては20体の魔物というのは手強いでしょうから、自ら召喚トラップを踏もうだなんて馬鹿なことはしないでしょうから」


「それもそうだな、俺はレベルも高いし、ここの適正レベルを超えているからできることであって、ここの適正レベルの人は間違っても実行しようとは思わないからな」


「そういえば、その適正レベルなんですが気付いたことが1つあります」


「何なんだ?」


「このダンジョンに入っている人は大体5~6人のパーティーで入っているみたいなんです。もしかしたらこの適正レベルってこのレベル帯の人が5,6人集まって始めて適正になるんじゃないでしょうか?」


 そういえばこのダンジョンに入る前に見たパーティーはほとんど5,6人だったような気がする。

 それにダンジョン系のゲームでもそのくらいの人数が当たり前だったような。

 主人公が一人で出てくる魔物が1体ずつじゃないゲームにおいてだが。


「あり得そうだな、ここに一人で入っているような奴はいるのか?」


「いないですね、最低が二人ですね。しかも片方の方はレベル40と高いですから、これも例外でしょう」


「もしかして、俺達ってこのままダンジョンの外に出たら非常に目立つとか?」


「というか入る時もめちゃくちゃ目立ってましたね。私が居るせいというのもありますが」


「イスカの街でも有名になり、ここでも有名になるとか止めて欲しいな。俺は普通に過ごせればそれでいいんだけど、ただ、まあ俺の望む生活には大量のポイントが必要なのも確かだけどな」


「そうですね、大斗が我がままだから……」


「それに強くなるってのは男のロマンだからな!」


 俺はそういうと召喚トラップを発動させる。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「シア様、前方からグレイウルフが3匹来ます」


「分かったわ」


 私は腰のレイピアを引き抜き構える。

 グレイウルフが3匹程度ならカレンを頼らずとも私だけで対処できるだろう。

 私はグレイウルフが出てくるのを待つ。

 そして、グレイウルフが見えた瞬間、先頭のグレイウルフに向かって走っていく。


「スラッシュ!」


 私は簡単にグレイウルフの首を切り飛ばす。

 残りの2匹は仲間がやられたことに怒りを露わにしてえ、同時に飛びかかって来る。

 私は冷静に後方に下がりつつ魔法を発動させる。


「アイスアロー!」


 氷の矢が十数本現れ向かって来るグレイウルフに放たれる。

 突然の魔法にグレイウルフは避けようとするが間に合わず、氷の矢を受けてしまう。

 私はその隙を逃さずグレイウルフにトドメを差していく。


 戦闘が終わり私はレイピアを仕舞い、ハンカチで汗を拭う。

 慣れてきたとは言え実戦はやはり緊張する。

 今みたいに一対複数の構図になるとどうしても焦ってしまう。

 ここの魔物なら1対1ならば苦労することはないと思うけど複数となるとね。

 私はカレンの方に向き直る、戦闘の後はカレンに毎回戦闘の評価をして貰っているのだ。

 今回もあんまりよくない戦い方だったと思うからあんまり評価はして欲しくないのだけど。


「今の程度の相手ならスキルや魔法の使用なしで封殺できないと駄目ですね」


 相変わらずカレンの評価は辛口だった。

 カレンはこうやってスキルや魔法をなるべく使わず倒せと言うけど、私は女の子としては体を鍛えている方だけど男と比べると力は強い方ではない。

 その力で完全に相手の息の根を一撃で仕留めようとすると、スキルや魔法を使った方が確実性が増すのだ。

 だからこそスキルを使ってしまう。

1対1の相手ならスキルを使わずに倒せるが、どうしても複数の相手となると1撃で倒せない可能性を考えると怖くなりつい使ってしまうのだ。


「スキルを使わずにできるよう、ちゃんと我慢してくださいね」


「う~」


 私は女の子らしからぬ声を出す。

 カレンは厳し過ぎだよ!

 私だって努力はしているんだよ。

 最初はスキルで全部倒そうとしていたけどそうせず、今回は魔法は牽制けんせいに抑えたのだから進歩と言って欲しいものだけど。

 カレンに言わせてみればそれもほとんど変わらないと言うのだろう。

 少しずつだって進歩はしているからそれを認めて欲しいのだけどとカレンに視線を向けると、カレンは別の方向を向いていた。


「どうしたの、カレン?」


「シア様、魔物が20体ほど召喚されました。おそらくは召喚トラップかと」


「それって大丈夫そうなの?」


「トラップを発動させたのは冒険者が一人と……1匹?ですか、このままじゃまずいと思います。どうされますか?」


「そうね、助けに行きましょう」


「分かりました、私が先行しますので付いてきてください」


 そう言ってカレンは走り出した。

 凄い速度で走っていくカレンを私はなんとか追っていく。


現在のカタログポイントは274790となっています。


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