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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
二章 イスカの街編
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黒猫の庭 3

「ふぅ、倒し終わったか」


 俺はあれだけの魔物を殺しておきながらも何の感慨もわいてこないことに落胆する。

 まあ、俺よりレベルが低い魔物ばかりだったから少しも苦戦しなかったからな。

 そんなことを考えつつ、周りを見回すが新たに魔物が出てくる気配はない。

 一応コンに確認を取ることにしよう。

 俺はコンに呼び掛ける。


「コン、ここら一帯の魔物はいなくなったか?」


「ええ、居ないみたいですね。しかしあれだけ派手にやったのですから他の魔物が寄ってくるかもしれません、一応ここから離れた方が良いかと」


「そうか、あの冒険者たちの前で物納するわけにもいかないし、勿体ないけどこの死体は放置かあ」


 俺が残念そうに死体を見つめていると。


「大斗、私の狐火には幻覚効果があるのでそれで誤魔化すこともできますよ。他の魔物が来そうだからとか適当な事言って、全部燃やしたことにすればいいかと」


「それだ! 早速やってください、コン様」


「はい、分かりました」


 コンから放たれた炎は一気に死体へと放たれ、全ての死体を等しく灰も残さず焼けていく幻覚を見せる。

 俺はその隙に物納を行う。

 光の渦がどんどんそこらにある死体を呑込んでいくが、さすがに数が多いのかなかなか終わらない。

 俺はそれを見守っていると。


「おい、あんた何してるんだ! そんなことしたら魔物の素材が駄目になってしまうじゃないか」


 さっき助けた冒険者の一人が抗議しにやってきていた。

 というか普通は最初に助けられたお礼とか言うものだと思うんだけど。

 いきなりそんなことして素材は勿体ないって……それはないだろう。

 俺は冒険者の発言に呆れつつ、この手の魔物の素材とか魔石を売って生計を立てている人ならではの思考なのだろうと納得することにした。

 まあ、売れる物を燃やしていると考えれば俺も勿体ないと思うしな。


「こんだけ派手に闘ったんだすぐに他の魔物もここにやって来るだろ、ゆっくり素材を剥ぎ取ったり、魔石を取り出してたりしたらまた同じように襲われるだろ、それを堂々巡りするわけにもいかないし、このまま死体を放置したら大量のアンデッドが生れるだろ、他の人の迷惑にならないように片付けようとしているんだ」


 俺が尤もらしいことを言うと、男性は何を言っているんだという顔をして。


「あんたこそ何を言っているんだ、あの程度の魔物あんたなら物の数じゃないだろ? それにダンジョンではアンデッドは発生しないんだぜ。死体を放置してアンデッドが発生するのはダンジョンの外だけだぜ」


 アンデッドのことは俺の勘違いでいいだろう。

 俺はここの世界の常識がまだまだないことは自覚しているけど。

 それは置いといて。

 あいつの発言は何なんだ。

 厚顔無恥もいいところだ。

 頭湧いてるんじゃないのか? 

 

 お前助けられておいてその言い草は何なんだよ。


 俺は冒険者の発言に静かに怒りが溜まっていくのを感じながら、全ての死体を物納し終えたのを確認した。

 コンにアイコンタクトすると、今までゆっくりと溶けていた死体が一気に燃え上がり塵も残さず消えた。

 その光景を見て冒険者は。


「な、何で炎を止めなかったんだ! あれだけの素材売れば金貨数枚にはなったのに」


 相変わらずな発言をした。

 



「自己紹介をしよう、俺の名はビーン、Cランクの冒険者で我らがパーティーワイルドウルフのリーダーをやっている」


「よろしく、俺の名前は大斗だ、Eランクの冒険者でここにはレベル上げに来ている。そして、こっちは相棒の霊獣のコンだ」


「よろしく」


 コンが嫌そうに冒険者に挨拶をする。

 どうも最初に話しかけて来たビーンが変な発言ばかりしているので、気にいらないらしい。

 まあ、俺もどうかと思うけどこの世界の人とあまり話していないからなあ。

 元の世界でも国が違えば考え方とか違ったしね。


 俺が自己紹介をするとワイルドウルフのみなさんは怪訝そうに見ている。


「ええっと大斗、ここのダンジョンには確かDランク以上の冒険者しか入れないはずなんだが」


 おっとそういえばそういう規則だったんだよな。

 俺は腰の袋の中からギルドマスターに貰った許可証を取り出す。


「俺はまだEランクだけど実力はあるから特別に許可証を貰ってここに入ったんだよ」


 彼らに見えるように許可証を差し出す。

 彼らはこぞって許可証を見て。


「本当に許可証だ」


「マジかよ、凄いな」


「へ~」


 どうやら納得してくれたらしい。

 俺のことはいいとしてこれからの事だ。

 見たところ彼らのうち武器を持っていたのは3人、他の3人は武器を捨てて逃げて来たのだろう。

 これだとこのまま彼らと別れると無事に買えるかどうかわからないな。

 送り届けた方がいいか?

 正直めんどくさいんだが。

 コンの方を見ると『無視してこいつら置いていきましょう』アイコンタクトを送って来る。

 仕方なく俺は『さすがに可哀そうだから出口までは送ってあげよう』と返すと、コンはむすっとしてそっぽを向いた。

 そんなに邪険にしなくても良いと思うけど。

 確かにウザいとは思うが。


「それでワイルドウルフの皆さんはどうします、このまま自分たちで出口まで帰れますか?」


 俺がそう言うと彼らは『えっ』という驚いた顔をしている。

 そして、彼らの一人が。


「出口まで連れて行ってくれないんですか?」


 おい、こいつら本気でここに置いて行こうか。

 普通はすまなさそうにお願いするのが基本だというのに、なんでこいつらはされて当然という顔でそれを言うんだ。

 さすがに愛想が尽きてきた。

 最初っから好感なんて持ってないけどな。

 しかし、せっかく助けたのにここで見殺しにするのも嫌なので仕方なく、俺とコンは彼らを出口まで送って行くことにした。




「しかし、大斗は強いよな、どうやったらそんなに強くなるんだ? もしかして、その剣の力か? 雷を撃ってたから凄い魔道具だとは思うが身体能力を強化する機能も付いているのか、凄いなあ。それってダンジョンで手に入れたのか? それとも買ったのか?」


「次々質問を続けないでくれ、俺が強いのは大量の魔物を倒しているからだよ。それに剣は電撃効果が付いているだけで、身体能力効果は付いていないよ。それとこの剣は俺の親から貰ったんだ、入手経路は知らない」


 俺は淡々と質問に答えるが彼らの反応はというと。


「ははは、そんな年でそんなに強いわけがないじゃないか」


「その剣の効果を実力と思っちゃいけないよ。その剣が無くなったらどうするんだい」


「やっぱ剣を見たときから金持ちのぼんぼんだと思っていたよ」


「その霊獣も親に欲しがって買ってもらったんだろう」


「さすがに霊獣の売買はいけないとお兄さんは思うな」


 まったくもって俺の話を聞いてなかった。

 こいつら俺に話させる意味がないじゃないか。

 というか冒険者ってこんなのばっかなのか?

 そうだとしたら俺はずっとコンと二人っきりでいいわ。


「それで実力が十分ある大斗はレベルいくつくらいなんだ? さすがに10は超えていると思うが」


 レベル10ってなんだよ。

 お前らの手に負えない魔物をあれだけ殺しておいて俺のレベル10は超えているって……。

 この世界の人は頭が悪い人ばかりなのだろうか。

 俺は呆れつつ素直に答える。


「俺のレベルは30だ」




「「「「「「…………」」」」」」




 なぜか彼らは黙りこんだ。

 あれ?

 俺素直にレベル30って言ってるじゃん。

 秘密にしておこうと思っていたのに、こいつらがあまりにもアレな事しか言わないからつい気が緩んでしまった。

 面倒なことにならないと良いなと思っていたが――。


「「「「「「ぎゃはははっははははははははははは」」」」」」


「そ、それはサバ読み過ぎにも程があるだろ」


「いやいや、大斗くんは背伸びしたいお年頃なんだよ」


「おいおい、15歳くらいガキが随分と高く出たじゃなねえか」


 心配などする必要もなかったみたいだ。

 良かったこいつらが馬鹿で。

 しかし、さすがにこれが常時続くのなら俺は耐えられないぞ。

 ここから徒歩で後4時間程の付き合いだと俺は割り切ることにした。

 

 そして、俺はすでに陽が落ちかけていることに気付いていなかった。


現在のカタログポイントは25834となっています。


このままの変態度で行こうと思いましたが、反対に1票入ったようでこれ以上の過剰な変態は自重しようと思います。


次の獣人はリザードマン(男)で鱗をぺろぺろしようと思いましたが自重します。


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