ギルドマスター
すいません、ギリギリ書き終わりませんでした。今度からちゃんと予約しておきますので……。
ご意見、ご感想お願いします。
「おい、お前!」
「あ?」
俺とコンがギルドへと向かっている途中に声を掛けられた。
振り向いてみるとよくいる筋肉ムキムキの冒険者だ。
何の用だ?
俺はそいつの顔を見てみるが見覚えがない。
そもそも俺は冒険者と会話すらしてないから、知り合いが居るはずもないんだがな。
取り敢えず無視するのも失礼なので答えておく。
「何用だ?」
「貴様が噂の霊獣を無理やり従わせているという屑冒険者だな」
「は?」
何言ってんだ、こいつ。
脳味噌湧いてるんじゃねえか?
一応コンの方にその噂を知っているかとアイコンタクトしてみるが、知らないと返ってきた。
まったく状況が分からないが、取り敢えずこの男に聞いてみればいいだろう。
「いや、そんなことしてないんだが、なあコン」
「ええ、私は大斗に無理やり従わせられていませんよ」
それを聞いて冒険者はあれおかしいなと首を傾げ、少し考え込むが。
「えええい、貴様が無理やりそう言わせているんだろう!」
「いや、そんなことないし」
「私は私の意思で大斗に付いて行ってますし」
「ぐぬぬぬ、よくも霊獣をそこまで調教しているな! 俺がこの手で衛兵に突き出してやろう!」
「というかなんでそんな噂が出回っているんだ? さっぱり覚えがないんだが」
「何を惚けている! 貴様が『薬草採集』に失敗しているという噂を聞いている。その程度の冒険者に霊獣が付いて来るはずはない!」
「いえ、それは私の勝手でしょうが、あなたにとやかく言われる覚えはありません」
コンの一言に冒険者はたじろいでいる。
まあ、正論だしね。
というか『薬草採集』の失敗がそこまで大きくなっているのかよ。
絶対これは厄介事になるに決まっているな。
これだとここをどうにかしても他の正義感馬鹿とかにも絡まれそうだな。
これは街を変えるべきか?
俺が本気で街の移住を考え始めたところで、男が動いた。
「ええい、とにかく貴様を衛兵に突き出してやる! 霊獣は俺が責任持って世話してやるからな安心しろ!」
おいおい。
正義感のせの字もないじゃないか。
これ霊獣を横取りしたいから、こいつ俺に襲いかかっているじゃん。
正義感馬鹿がめんどくさいなと思いきや。
下心満載ですよ。
もはや呆れて声が出ない。
冒険者ってこんな屑ばっかなのかよ。
俺はため息をしつつ、襲いかかって来る冒険者の金的を蹴り上げた。
「あばっばばばばばばばばばああああああああああああああああああああ」
男は意味不明な言葉を言いつつごろごろと地面を転がり、そして動かなくなった。
俺はもう興味はないとばかりギルドへと向かうことにした。
馬鹿はこうでもしないと治らないからな。
ギルドに入ると外と同様に俺をちら見しつつ、こそこそ話しているやつらがけっこう居た。
やはり、さっきの奴が言っていた噂は広がっているのだろう。
俺は依頼が張ってあるボードの所に行こうとしたところで――。
「大斗さん! こっち、こっちに来てください!」
いつもの受付嬢が何か叫んでいた。
俺は仕方なく少女の所に歩いて行くことにした。
少女の前まで行くと少女が胸倉を掴んで来て少女の方に引き寄せられた。
「大斗さん、なんであんな噂が出回っているんですか! まだギルドに入って1週間でどうしてこんな噂が立つんですか、私不思議で堪りませんよ!」
少女が矢継ぎ早に話しかけてくる。
それとお願いだからあんま引っ張らないで、首が閉まるんですけど。
「いやあ、俺も身に覚えがないんだよな。心辺りといったら『薬草採集』を失敗したぐらいしか」
「それは私も知っているけど、それだけじゃ普通『霊獣様を無理やり従わせている』って噂が出回るはずないでしょ!」
「そうなのか?」
さっきの男が言っていた通り。
『薬草採集』を失敗した。
そんな奴に霊獣が従うはずがない。
無理やり従わせているはず。
っていう感じで連想する人も中にはいると思うんだけど。
「大斗さん、まさか厄介事を起こしていませんよね?」
少女が恐る恐る聞いて来る。
「えーっと、君が言った通りの事を言って襲ってきたやつを返り討ちにしたかなあ」
「何してるんですか! そういうときは逃げるとかしてくださいよ。また変な噂が立つかもしれないんですから!」
「いやぁ、済まない」
「はぁ、もうしちゃったことは仕方ないですから、ギルドマスターがお呼びですから会って話をしてください。これは強制ですから、いいですね?」
「ああ、分かった」
こうして俺はギルドマスターと話をすることになった。
ただの『薬草採集』の失敗が大きな話になったものだ。
部屋に入ると初老の男性がソファーに腰掛けていた。
ギルドマスターというからには筋肉ムキムキの強い人かと思っていたが普通の人に見える。
残念ながら俺にはコンみたいに相手のレベルとかが分からないので何とも言えないのだが。
「どうぞ座ってくれ」
俺は言葉の通りに男性の反対側のソファーに座る。
俺と男性の間には机が置いてあり、いくつかの書類らしきものと水晶球が置かれていた。
俺はそれを見つつ男性に話しかける。
「それで何の用で呼ばれたのでしょうか? まあ、大体は察しが付くのですが」
「今回呼びだしたのは噂の件についてだ。噂については知っているかな?」
「ええ、知っていますよ。その噂を聞いて来た冒険者が一人居まして、その喧嘩売って来た方にご丁寧に説明して貰いましたから」
「そうか、それでその冒険者は返り討ちにしたのかい?」
「ええ、余り強くなかったので問題なく」
「ふふ、さすがはレベル30近いだけの事はあるね」
その一言に俺は男性を睨む。
こいつ、俺のレベルを知っているのか?
もしかしてギルドは冒険者カードの隠した部分を閲覧でき、人のレベルやスキルが簡単に分かるのか?
そうだったら困ったことになるな。
特殊なスキルなんかの習得が難しくなるし、そもそも適当にランクを上げたら後は上げずにだらだらと過ごす予定だったのに、高レベルだってのがばれたら何かと駆り出されたりと面倒だ。
俺がギルドを抜けようか本気で審議し始めたら、男性が笑いながら。
「済まないね、レベルの件はリムくんから無理やり聞いていたんだ。彼女を責めないでやってくれないか?」
――ということはギルドが自由に冒険者のステータスを見れないということなのか?
それなら本当に安心できるのだが。
いや、簡単にそんなことが信じられるわけがない。
普通に考えて登録している冒険者のレベルやスキルが分かっていた方が、依頼を頼む時により適切な人に依頼できたり、国なんかの引き抜きほう助なんてこともできるだろう。
どう考えても冒険者のステータスを見れない方がおかしい。
俺はギルドの脱退を心に決め、男性を睨みつける。
その視線に気づいたのか男性は。
「もしかして、今の話疑っているのかい? ギルドは冒険者のステータスを勝手に覗き見していないよ」
「その言葉を簡単に信じると思っているのか?」
「だよね、でもここに良いものがあるんだよね」
そう言って男性は机に置いてある水晶球を指さす。
これはただの水晶球じゃないのか?
コンの方を見ると。
「これは簡単な嘘発見器ですね、嘘を吐けば色が変わるタイプのようです」
「いやあ、さすが霊獣様だね。これけっこう高い嘘発見器なんだけどね、簡単なって……」
なるほどその発見器で嘘かどうか真偽を確かめてもらうということか。
「なら質問するぞ? ギルドは冒険者の隠されたステータスを閲覧することが出来るか?」
「できないね」
水晶の色は変わらなかった。
どうやら本当の事らしい。
これならギルドを別に抜けなくてもいいのかな。
まあ、俺は別にどっちでもいいんだけどね。
ギルドを頼らなくても簡単にこの世界のお金を手に入れる方法知っているし。
あの高名なスレイ○ーズのリナ様はおっしゃいました。
お金が無ければ盗賊から絞り取ればいいのよ!
俺の場合人間を物納できて尚美味しい。
盗賊の場所なんて調べようと思えばコンがいくらでも特定してくれるしな。
ガッポガッポだよ!
さてと何の話だったか。
「それでは私の方からも君に質問させて貰うよ? 君は噂の通り霊獣様を無理やり従えているのかい?」
なるほど。
そのためにも男性はこの嘘発見器を用意していたのか。
妙な噂が本当なら元を断てば簡単に解決するからな。
俺はそれに堂々と答える。
「俺はコンを無理やり従えてない。コンはコンの意思で俺についてきているはずだ」
「その通りですよ、大斗」
コンの方も俺に追従してくれた。
机の上の水晶球は色が変わらない。
それを見て男性の方も肩を落としてリラックスしていた。
「いやあ、疑って済まなかったね。私も職務上やらないといけなくてね」
「いえ、いいですよ。別にそれほど時間がかかるようなものでもありませんでしたし」
「そう言ってくれると嬉しいよ。それと残念ながら噂が嘘だということが分かったんだが、それが嘘だとギルドから公式に発表しないといけないんだが、その発表もこの街全体に伝わるまで少し時間が必要なんだ。その間に事件が起きないとも限らないので1週間ほど別の街に行って貰えないかな?」
ふむ、たしかにこの男が言っていることは正しいし、適切だろう。
俺も噂の事で何度も喧嘩を売られるとか止めて欲しい。
ゆっくり別の街で過ごしておこう。
「この街から2日の所にダンジョンがあるんだそこで過ごしてくれないかい?」
「ダンジョン?」
「ああ、大丈夫だよ。ダンジョンと言っても等級は三級のたいしたことのないダンジョンだ。ダンジョンの前にはちょっとした村みたいなものができているから寝止まりの心配もないしね」
ダンジョンか。
そういうファンタジーな物がこの世界にはあるんだな。
ぜひとも行ってみたいな。
コンの方を見てみると『大斗の好きな様にやれば?』という答えが返ってきた。
こうして俺とコンは初のダンジョンに行くことになった。