表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
二章 イスカの街編
22/68

美味しいお米が食べたいです

「あー、米が食いたいわ、米が」


 俺とコンはお昼と夕ご飯の行きつけになった店、グロール料理店でご飯を食べていた最中、俺は心の声を吐露していた。


「米ならポイントで買えるじゃないですか」


 コンが不思議そうに言う。

 そう、弁当などはポイントで買えるのだ。

 なのでお米自体は食べていると言ってもおかしくないはずだ。


「そういうのじゃないんだよ。料理店みたいなとこで、美味しい丼ぶりとかカレーとかが食いたいんだよな。結局弁当程度じゃそこそこ程度の味でしかないじゃん」


 そう1ポイントで色々な種類の弁当は買えるのだが、全て味はそこそこ程度だ。

 真に美味しい料理はこのお店で食べられるのだが。

 残念ながらこのお店の料理には日本人のソウルフードである、お米を使った料理が存在してないのだ。

 ここのウェイトレスのカリーナちゃんに聞いたのだが、お米に似たような食物はこの辺では聞いたことがないらしい。

 ――というわけで俺は美味しいご飯ものが食べたいのだ!!!


 俺がそう説明するとコンは非常に気まずい顔をする。


「実はですね、非常に言いにくいことなんですけど」


「うん」


「美味しい料理は物凄く高いんです」


「へ?」


 美味しい料理は凄く高い?

 まあ、それは常識だから良いんだけど。

 どれぐらいするんだろうか?


「簡単に言うと料理人たちに頼んでそれをカタログを通じて送っているのですが、食欲というのは神や悪魔であっても強いもので、神や悪魔の食欲が半端じゃなくて一度需要が供給を上回って料理人が何人も倒れる事件がありまして……それから請け負う料理人の数も減り、仕方なく美味しい料理の値段を100倍に上げることになって――」


 美味しい料理の値段が100倍って……

 何やってくれたんの神様と悪魔様たち!!!

 料理人が倒れるほど食べんなよ!

 いや、美味しい料理をたくさん食べたいのは俺も日本人としてよく分かるが。

 請け負っている料理人って絶対かなりの数居たはずだろう。

 それなのにそんなことが起きるなんて……。

 アホだな神や悪魔。

 遠慮ってものをしろよ!


「美味しい料理の値段は最低値が1000ポイントになりますね」


「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい、高けえよ!!! 1000ポイントって何だよ! 高すぎるだろ! 人間の最低値が100ポイントだから約10人分の物納だぜ! 俺の残高速攻で無くなるわ!」


 俺がコンに向かって心の叫びを打ち明けていると。


「うるさいです! 他のお客さんの迷惑です!」


 カリーナちゃんが容赦なくお盆の隅で俺の頭を殴打した。


 カリーナちゃん……。

 隅はいかんでしょ……。

 隅は……。

 いや、マジで人が死ぬって。

 一回食らったことが有る人なら分かるけど、ほんと頭が割れるほど痛いんだぜ。

 ※現実でしかも鉄製のトレイなどでの殴打は控えましょう。


 俺だから痛いで済むけど普通の人ならヤバかったと思うぜ。

 恨みがましくカリーナちゃんの方を見ていると、『何か文句あるの?』とガンを付けて来た。

 異世界の女の子ってこんなのばっかなのね。

 絶対ギルドの少女に言ったら何を言われるか分からないので、そういうことは言わないが。


「しかもあんたち物騒な話とか止めてくれる、人間とかポイントとか物納とか聞く限りじゃ人攫いの話にしか聞こえないんだけど」


 あれ?

 俺そんなこと口走ってたっけ?

 コンの方にアイコンタクトすると『思いっきり話してました』と返ってきた。

 もしかして、これはけっこうヤバイ状況?

 俺の迂闊さにため息が出つつも、どうやってこの状況を乗り越えようか必死に俺が頭を働かせていると。


「まあ、さすがに霊獣様を連れているからそんなことはしてないと思うけど、今後そういう話はここではしないで頂戴ね」


 そういうとカリーナちゃんは用は済んだとばかり、他のテーブルに移っていった。


 どうにか助かったと言うべきだろうか。

 コンの方を見ると『この迂闊もの!』とこっちを責める目で見つめてきていた。

 ぜひ攻める方でお願いしたいが、そんなこと言える状況でないことは俺も分かっているので、代金を払うとさっさと店を出ることにした。




「しっかし、お金はともかくとしてさっぱりポイントが溜まらないよな」


 俺はギルドで『物品運搬』の仕事を受けつつ、肩に乗っているコンに話しかける。


「そうですね、ここら辺の魔物は弱いですし、経験値の足しにもなりませんし、良いことなんてまるでないですね。まあ、この期に力の扱いと気の扱いを上達させるしかないでしょう」


 この街の近くの魔物はほんとうに相手にならないものばかりだ。

 まあ、街や街道の近くに強い魔物が居るとか気が気でないだろうから、1年に1回ほど強い魔物は騎士たちが駆除するらしい。

 それで大体の強い魔物を駆除して街や街道の安全を図っているらしい。

 街の人は騎士さまさまだろうけど。

 俺にとっては余計な事をとしか思わない

 しかも騎士って言っても平均レベルは15程度なので本当に強い魔物が居る所は手出ししないらしいからね。


 取り敢えず現在の目標はポイントをいかに稼ぐかと、レベル上げのために強い魔物と戦うということをこの街を拠点にしながら目指そうと思っている。

 まあ、この街から別の街に移ってもいいんだけど残念ながら、強い魔物が居る近くには街は存在しない。

 そりゃいつ強い魔物が襲ってくるか分からないところに街は建てないだろうからね。

 ただポイントを得る方法として盗賊狩りをするのは街の近くの方がやりやすい。

 大体街から2,3日の所に居座っている盗賊が多いし、盗賊がどこに出るとかいう情報も街で得られるからな。

 

 ということで今の目標は便利な移動方法の確立、これは移動用の物をカタログで買おうと思う。それとコンに移動魔法を覚えさせるというものだ。

 移動用の物は大量生産品の飛ぶ箒を1万5千ポイントで買えるのでそれでいいが、移動用の魔法を覚えるのに五万ポイントも必要だった。

 これは箒で移動して盗賊を潰しまくって500人程物納すれば買える計算だ。

 人間によっては価値が高い者が居て1000ポイント分になったりとかもするらしいから、そこまで人数は要らないと思うけどな。


「ほんといつになってもポイントが溜まらないなあ」


「そうですね、欲しい物は延々と出てきますから、延々ポイントが足りない状態が続くでしょうね」


「欲望が止まらないかあ、確かにそうかもなあ」


 確かに欲しい物はたくさんあるけどポイントはまったく足りていない。

 一生神魔商会の奴隷みたいに貢ぎ続ける未来というのもありえそうだ。

 いつかポイントに余裕が出来たら元の世界に帰るなんてこともできるのかな。


 まあ、帰る気なんてもうないんだけどね。

 この世界気に入ってるし、元の世界に戻ったら堂々とコンといちゃいちゃできないし、俺まだネコ型の獣人もイヌ型の獣人も、もふもふしてないから帰るわけないしな!


 俺はコンの方をじっと見つめながら荷物を抱え直す。


「さてとっ、これが終わったらEランクに昇格だ。さっさと終わらせますかね」


 俺はその日やっとEランクに昇格した。

 それは俺がここに来てから7日目の事であり、霊獣を連れた冒険者の『薬草採集』失敗の噂ともう一つの噂が街全体に広がった日であった。


ご意見、ご感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ