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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
一章 アザレスの森編
2/68

転移魔法

「な、なんだったんだ」


 光が収まり、ようやく目を開けるとそこにはさっきまのでカタログが宙にふわふわと浮いていた。

 俺は状況が飲み込めず口を開けてカタログを見つめているとカタログが突然開かれポンッという音とともに

 ふわふわの新素材の尻尾、つぶらな瞳、キュートなお口の

 どこからどう見ても手乗りサイズの小さなキツネの人形が出てきた

 キツネさんはおめめをぱちくりさせた後、お顔をくしくしと手で洗って、てへっと可愛くポーズを決めたあと、そのお口を開いた


「こんちこんち~、初めまして私はこのカタログの守護者&管理者を務めさせていただいているコングナノス・ティレコルド・ネルバセリンと申します。私のことはお気軽にコングナノス・ティレコルド・ネルバセリンとお呼びください」


「…………」


 あまりのことに俺は口を動かすことも出来なかった。

 そりゃいきなり本が光って浮かんだり、キツネが本から出てきたりとかしたりしたら思考が止まるのは無理はないだろう。

 てかこのキツネ言葉遣いがめちゃくちゃだし、名前が長すぎだよ、しかもお気軽にとか言いつつフルネームなんですけどとか思いつつこのキツネの動向を見守ることにした。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………ポッ」


 なぜかキツネさんと見つめ合っているとキツネが顔を赤く染めてうつむいた。


「そんな、いくら私が可愛いからと言っても種族間の壁は大きい……」


 このキツネは何が言いたいんだ?


「それに私は一応オスなので男女の壁まで越えてまでなんて……」


「…………」


「やだなあ、そんなにじと目で見ないで下さいよ、ウィットに富んだジャークじゃないですか、さてここからは真面目に紹介させていただきます。私はこのカタログの守護者兼管理者のコンです。カタログの扱い方等質問がありましたら随時尋ねてください」


 あれだこの際本からなんでキツネの人形が出てきてしゃべっているとかは置いておこう。噛んだか知らないが『ジャーク』言っているのもおいておこう、まずは俺の現在の状況について聞くのが良いだろう、まあ、知っているか微妙なところだが。


「えっとカタログのことじゃないが質問良いか?」


「はい、いいですよ、私に答えられることなら」


「ここはどこなんだ? さっきまで考えまいとしていたけどこの森は明らかに植生が日本でないし、見たこともない昆虫がうようよいる」


「少しお待ちください、今から検索を掛けます…………はい、現在位置の特定ができました。ここはエレニア王国北東部ラザレスの森です」


 エレニア王国?

 ここは海外ということなのか?

 だが王国なんてものがまだ存在していたか?

 俺は疑問を解消するべくコンに質問をする。


「なあ、そのエレニア王国は世界地図でいうどの辺なんだ? アメリカの近く? それともアフリカか?」


 俺がそう質問するとなぜか俺の事をいぶかしげに見つめ、何を言っているんだとばかりの口調で


「ここはあなたが前にいた地球ではありません。あなたたちの言葉で言えば分かると思いますがここは異世界です」


 俺は開いた口を閉じることが出来なかった。

 異世界って……マジなのかよ




 どうやら俺は異世界に来てしまったらしい。

 コンのここは異世界だという発言の後色々聞いたがここは地球の時代的に言えば中世ぐらいであり、有り体に言えば剣と魔法の世界

 剣と魔法の世界なんです!

 大事な事なので2回言いました。

 そして、異世界の定番と言っていい、ネコミミ、イヌミミを持つ獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、天使などの人種がいるようです。

 もちらん人間もいるというかここの世界では人間の数が最も多いそうです。


「コン、この世界の概要については大体分かったが、俺は魔法を使えるのか? 異世界に来たら魔法を使わないといけないといけないだろ! あと俺チートスキルとか持っているのか?」


 「そんなにやつぎ早に質問しないでください、今からあなたのスターテスを見るので……うーん、これは」


「そんなにすごいのか!」


「このステータスは終わってますね、これですのでどうぞ」


 そう言われた瞬間俺の頭の中にステータスが浮かび上がる。



名前:犂宮すきみや 大斗だいと

年齢:18

レベル:1

<固有スキル> なし

<スキル>   なし 



「おい、この終わっているステータスは何なんだ、レベルも1でスキルも固有スキルもないじゃねえか」


「そうですね、普通固有スキルはなくとも、ただのスキルなら2,3個表示されるはずなんですが」


「そう言えばこの世界魔物とかも出るんだろ……この世界で生きていける自信がねえ」


 がっくりと膝を付き、己の不幸を悔やんでいると優しくキツネが肩を叩いた。


「大丈夫です、あなたにはなんとこのカタログ神魔商会目録、神界、魔界、他次元世界共通版とこのコンが付いていますから!」


 このカタログとキツネが役に立つとは思えないんだが

 まあ、現在の状況を教えてくれたのはこのキツネだし一応話だけでも聞いてみるか。


「むむ、なんですかその胡乱うろんな目は! 私の事を信じてませんね、よろしいならば見よ、このカタログの力を」


 キツネはそう言うとカタログにこっちに来いと手を振る。

 するとカタログはふわふわとこっちに近づいて来てバサッと開いた。


「さあご覧ください、このカタログが誇る商品達を!」


 カタログの方を見ると勝手にページがめくれ商品が次々と記載されていく。

 俺はその商品を読んでみる。

 なになに

 緊縛プレイ大好きな方にオススメあなたの彼女を縛る鎖グレイプニル

 値段 7千万ポイント

 狙ったものは逃がさないあなたのハートを打ちぬく槍ゲイボルグ

 値段 3千万ポイント

 なりきり変身セットゴー○イジャー

 値段 5百万ポイント

 etc

 そこにはどこかで聞いたことがあるような武器などがたくさんあった。

 値段が書いてあるってことはこれらの商品を買えるってことか?

 伝説の武器やアイテムを……

 もしかしてこのカタログって超使えるんじゃないか

 俺はこのカタログの評価を180度変えることにした。


「むふふふ、どうやらあなたもこのカタログの素晴らしさに気付いたようですね」


「ああ、確かにこれは凄いな、ところでこの値段の所にあるポイントって単位は何なんだ、円とかドルとかと違うのか?」


「それはですね、このポイントというのは全世界共通の単位なんです。無論異世界や神界、魔界でに使える優れたものです」


「そうなのか……ってかそんな単位のお金を持ってないぞ俺、やっぱこのカタログ使えないじゃん」


 やっぱこのカタログは使えない

 焼き捨ててやろうかとカタログを睨みつけているとキツネが慌てた声で


「ま、まあ慌てることはないですよ、このポイントは魔物など魔力を持つ生物を殺したと気に貰えるものなんだ、または何らかの偉業を果たした時に神様や悪魔から貰えることもあります。それと物納でも可能です。例えば生贄用の生きている人間を物納してポイントを貰うなど出来ます。ちなみに人間は死体よりも生きて物納するほうがポイントは多く貰えますので生きている方を物納することをお勧めします」


「てか魔物とか殺したことないから俺1ポイントも持っていないような、結局このカタログ使えないじゃん」


 もう一度俺がカタログをじと目で見ているとキツネが必死にフォローを始める。


「そ、そんなことないですよ、一応どんな生物でも少しは魔力を持っていますから、虫とかを殺してもポイントは入るはずですから、と、とにかく今からポイントを照会しますね……はい、完了しました。これはなかなかあなたの現在のポイントは100万と飛んで56ポイントです」


「マジで?」


「マジです」


「ほんとのほんとにか?」


「ほんとのほんとにです、今詳細を見てみたら昆虫を物凄い数殺されてますね」


「虫……あー、そう言えばかなりの数殺しているな」


 実は俺は最近珍しい昆虫少年だったのだ。

 学校から帰るとランドセルを置いて近くのアリの巣を水攻めしてアリが慌てて出てきたところを踏みつぶしたり、バルサンを意味もなくたいてみたり、バナナトラップをしかけて集まった所を殺虫スプレーで乱射したりとワイルドな子供だったからな。

 おそらくそのせいで100万ポイントもあるのだろう


「ポイントもあることですし何か買いますか? 百万ポイントくらいで買える少し強い装備とか、それとも生活必需品セットとかスキルとかもありますよ」


「あれ? スキルとかも買えるのか?」


「買えますよ~、ただし固有スキル以外をですが、さてとオススメはこれですよ異世界共通言語(読み書きも可)1000ポイント これがあればどんな人とでも会話と読み書きも可能になります。というか大体これはみなさん買われるというか異世界では必須のスキルですからお安くな」


 急にキツネはしゃべるのを止めて後方を振り向いた。

 俺も連られるようにその方向を向くと

 3メートルほどの巨大なクマが居た。




 …………




 ヤバイ、ヤバイヤバイって最初の魔物とのエンカウントがあんなのって

 勝ってこないって

 普通最初にエンカウントするのは弱いゴブリンとかスライムだろ!

 いきなり自分の身長の2倍はありそうなクマとか有り得ないって

 つか俺まだスキルとか武器とかも買ってすらないのにこれの相手とか無理だって

 キツネに言って何か武器を買うか?

 いやいやいや

 レベル1だとこんなやつに勝てる気がしない

 何らかのスキルを買った方が良いか

 俺は気が動転していながらも対策を立てていると突如クマが咆哮を上げた。


 グォオオオオオオオオオオオ!


 無理無理無理無理無理無理


 こんなのと戦うのとか無理

 一般人の俺にそんな気力はない

 逃げることにしよう

 そうだ

 転移だ

 転移系のスキルを買って逃げよう

 俺はその考えをすぐさま実行した。


「コン! 速攻で転移系のスキル買ってここから逃げよう」


「分かりました、距離によって値段が変わりますが」


 クマが勢いよく地面を蹴って俺に向かって走り出した。

 

 ちょっ

 まだスキル買ってないのに動き出すとか

 俺はコンにとにかく急いでスキルを買うように発破をかける。


「早く! 早くして! クマ来ちゃう! とりあえず高くてもなんでもいいから俺を安全な場所に転移してくれ!」


「分かりました。……はい、購入が完了しました。転移すると心の中で念じつつ『ホーム』と唱えれば安全な場所に転移できます」


 コンが購入完了を告げた時はすでにクマと俺との間合いは3メートルを切っていた。

 その場から逃げながら購入すれば少しは時間が稼げたかもしれないが気が動転しすぎて逃げるという選択肢さえ浮かんでこなかった。

 俺は恥も外聞もなく大声で叫ぶ。


「ホーム! ホーム! ホォオオオオム!」


 突如俺は光に包まれ森の中からコンと共に姿を消す。

 そして、そこには獲物の姿を失ったクマだけが残された。




 俺はおそるおそる目を開けるとそこは白い空間だった。

 周りを見回しクマが居ないことを確認すると俺はドサッと座り込んだ。


「あー、なんとか間に合ったみたいだな、もうこんな目には二度と会いたくないわ」


 俺は未だ恐怖に震える体を抱き、なんとか落ち着こうとする。

 あれは今までの人生の中でも一番ヤバかった出来事だろう

 俺がそうやって座り込んでいると後ろからコンがふわふわと浮かんできた。


「いやあ、間一髪でしたね。かなりギリギリでしたし、もしかしたら間に合わないかと思いましたよ」


 コンはさっきまでの状況などなかったように呑気な事を言う。

 くそう、こいつ人事だと思いやがって

 俺は本当に殺されるかと思ってかなり焦ったというのに

 つか俺が襲われた後はお前だったかもしれなかっただろうに

 それともこいつはかなり強くてあの程度の魔物では脅威にも感じないというのだろうか?

 案外有り得そうな話だ

 カタログの守護者兼管理者と名乗っていたから強い可能性は十分ある。

 それならコンにあのクマを倒してもらえば良かったのかもしれないな

 冷静になってみればそこまで焦る状況ではなかったのかもしれないと俺は思い始めた。

 まあ、もう一度あの状況に戻れば必ずまともな行動が採れないであろうことは想像に難くないが

 さてととりあえずそこらへんも含めて転移スキルの習得に何ポイント使ったとかコンに聞いてみるか。


「なあ、コン」


「なんですか、大斗?」


「コンはもしかして戦えてあのクマとか余裕で倒せただったりする?」


「? 質問の意図が見えませんが、私は残念ながら決まり上戦えませんし、強くもありませんよ」


「決まり上?」


「ええ、私は一応カタログの守護者兼管理者と名乗っていますが戦う力は持ち合わせていませんし、何かと闘うということは禁止されています。まあ、ポイントを使えば私が戦闘に参加できるようにできますし、私を強化して強くすることも可能ですが」


「つまりあの場で冷静だったのは」


「はい、ただ達観していただけですね」


「そうなのかよ、それなら俺の取った行動は正しかったんだな」


 俺がそう言うとなぜかコンは何か憐れむような目で俺を見てくる。


「そうだといいですが」


「何か含むような言い方だな、それはいいとしてさっきの転移の魔法は何ポイントくらいしたんだ? 転移とかちょっと高そうだけど100万ポイントもあるからまだ余裕があると思うけど」


 なぜか俺を憐れむような目で見てコンはこう答えた。


「100万ポイントです」


「はっ?」


 何か今有り得ないことを聞いたような

 気のせいだよな

 うん


「なんて言った?」


「100万ポイントです」


 何か幻聴が聞こえるんだが

 あれか異世界にトリップした影響が今頃出てきたというの言うのか

 体調管理は気をつけないとな

 さてそれで転移魔法に何ポイント使ったのかな


「それで転移魔法には何ポイント使ったんだ?」


「ですから100万ポイント使いました。現実逃避していないで現実をみてください。あなたの残りポイントはたった56ポイントです」


「ふふふふふ、はははっはははっはは、冗談だよね?」


「マジです」


 こうして俺TUEEEEEEE物語は始まらず俺の貧乏生活が始まった。


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