お昼時
「次の人どうぞ」
やっと順番が回ってきて俺は検問している兵士の前に出る。
するとコンの方を見て兵士さんは驚いている。
おそらく霊獣が珍しいのだろう。
商人さんは全く驚かなかったけどな。
ポーカーフェイスって俺も欲しいわ。
それでも一応プロ?というわけか気になりつつも、それに触れずに話しかけてきた。
「身分証明書を提示してくれ」
「実は山奥から冒険者になろうと出て来たので、そういうものは持ってないのですが」
「そうなのか、どこの村の出なんだ?」
そういうことはよくあるのだろう。
俺の事を別に怪しいとも思わず質問を返してくる。
「ユニス村です」
俺は平気で嘘を付くことにした。
正直にアザレスの森の奥で暮らしていましたとか言うと絶対面倒事になるだろうからな。
もしも、俺を調べようとしてもユニス村なら多少の事は誤魔化してくれるだろうし。
「そうか、じゃあ通行許可証として銀貨1枚貰うぞ、冒険者ギルドに行って冒険者になればこの手の料金は掛からなくなるからな」
俺は腰に下げた袋から銀貨を1枚取り出して兵士に渡す。
代わりに通行許可証と書かれた木の札を渡された。
やっぱ紙は高いから木の札なのだろうか?
と思いつつ俺は木の札を受け取る。
「これで通っていいが、霊獣は狙われたりするから街の中と言っても気を付けろよ」
「分かりました。ありがとうございます」
良い人だなあ。
わざわざ注意してくれるなんて。
良い人も居るもんだなと思いつつ。
俺は街の中へと入っていく。
街に入ると人、人、人。
かなりの人が行きかっている。
久しぶりにこんな人ごみに来たと思いながら俺は雑踏の中に入っていく。
「なあ、コン」
「なんですか、大斗?」
「そういえば冒険者ギルドの場所聞いてなかったんだけど」
「馬鹿ですか大斗は、なぜさっきの兵士に聞いておかないのですか!」
「ええ~、だって忘れてたんだもん、仕方ないじゃん。それに今さら聞きに戻れないし」
「それならばそこらへんの人に聞けばいいでしょう」
「でもなあ」
俺はそう言って周りを見渡すが、好奇の視線が俺の肩に乗るコンに寄せられているのが嫌でも分かる。
この中で聞くのは難易度高いとは思わないか?
霊獣効果を舐めてたわ。
「はあ、なら適当なお店に入ってご飯を済ませつつ、そこで聞いてみましょう」
「だな!」
俺たちは適当に歩いて一番最初に目に付いた食べ物屋に入ることにした。
店に入ると外と同様で俺の肩に居るコンに好奇の視線を感じるがスルーする。
こういうのは気にしたら負けだからな。
取り敢えずカウンター席に座ってメニュー表を眺めるが。
「どれがどういう料理なのか分からん」
さすが異世界!
料理名が全部元の世界と違うのでさっぱりだ。
異世界共通語が有るとは言っても、こういう名前系には効果を発揮しないからな。
分からない物は仕方ないので店員さんに聞いてみるとしよう。
俺は近くに居るウェイトレスさんに声を掛ける。
「はい、なんでしょうか?」
ウェイトレスさんは中学生くらいの少女だった。
よくあるウェイトレスの恰好ではなく、居酒屋とかによくあるユニフォームなのだろう。
普通の服にエプロンらしきものを掛けていて、頭に三角布をしている。
露出度は御察しだが、なかなか可愛いと判断してもいいだろう。
俺は獣以外は2次元専門だがその中でも多少好みはある。
俺は2次元についてはロリ専門の狩人として恐れられていたほどの者であった。
俺は18歳以上はBBAだろ!と言って憚らなかったからな。
よく叩かれて通報されていたのは良い思い出だ。
だから例え3次であってもBBA(18歳越え)よりも、中学生くらいの女の子に給仕して貰う方が嬉しい。
とにかくこれだけは言わせてほしい。
そこに獣耳と尻尾があれば至高だっただろうに!!!
さてと少女を待たせるのは俺の魂に反するので、妄想はこの辺で止めよう。
その時にはコンのじと目が俺にささがれていたが華麗にスルーすることにした。
「どれが美味しいか分からないのでこの店のオススメを頼めないかい?」
「オススメはその時期にあったものを出す、日替わりランチです」
「ならそれをお願いしようかな」
「分かりました。霊獣様の方はどういたしますか?」
「ああ、こいつは魔力を食べるから特に食事は要らないんだよ。コンは何か食べるかい?」
「いえ、別に要りません」
少女は霊獣がしゃべったことに驚いていたが、すぐに営業スマイルに戻る。
「分かりました。では少々お待ちください」
そう言って少女は氷が入った水を持って来てくれた。
へぇ、この世界は文明的に中世くらいだと思ったが魔法があるせいか、変なところで発展してそうだな。
俺は少女が持って来てくれた水を一口飲んでみる。
うん、冷たくて美味しいね。
後はご飯が美味しければ言うことはないだろう。
というか前の世界でも冷たくない水を出す店とかあったよな。
そういうのが大体冷水機頼りの店なんだよな。
ああいうのはほんと止めて欲しいわ。
水が冷たくないとか俺にとっては拷問でしかないわ。
小さい店とかでは水差しに氷が入れてあって、それをセルフで入れるみたいになっているけど、ああいうのが良いな。
それか冷水機にプラスして製氷機を置くべきだと思う。
何が言いたいかと言うと吉○家にはもう行かない、す○屋にしか行かないってことです。
そうじゃなくて、この氷おそらくは魔道具で作っていると思うのだがけっこう高かったんじゃないかと少女に質問したかったのだ。
「この氷って魔道具で作ってるの?」
「はい、けっこう高かったのですが、製氷機を買ってからお客さんも増えましたし、評判も良いですね」
「どれくらいしたんだ、製氷機?」
「そうですね、大体金貨1枚くらいでしたね」
「高いなあ」
日本円で言うと大体100万円か、業務用だって2、30万だってのにぼったくり過ぎじゃねえか?
魔法技術が拙い可能性もあるが、ぼったくりなだけの気もする。
まあ、そんなこと決して言わないが。
「ですから冷たい水が飲みたいときはぜひ当店にお越しください」
少女は笑顔でセールストークで決めると厨房に下がって行った。
最後をそれで決めるとはさすがだな。
俺は水を飲みつつ、食事ができるまでゆっくりと待つことにした。
「お待たせいたしました。日替わりランチになります」
10分程で少女が日替わりランチを持ってきた。
ご飯の内容は何かの肉の揚げ物にサラダに何かのスープにパンだった。
まあ、日本人としてはご飯が欲しいところだが、ここの文化圏では米というのはないかもしれないからな、そこは我慢するしかないだろう。
早速肉の揚げ物から一口食べてみる。
味はあまりクセがなく、食感からもおそらく鶏肉なのだろう。
濃い味が好きな俺だがけっこう薄味の気がするが、なぜか美味しいと感じる。
お腹がすいていた俺はすぐに他のものも食べ始める。
パンは食べてみた感じ硬く感じる。
暇だから周りを見ていた時は客はスープに付けて食べていたのを思いだし、同じようにパンをスープに漬けて食べてみる。
ふむ、これならなんとかいけるな。
俺は一気にがっつきご飯を食べる。
食べてみた結果だがユニス村と同じく薄味に感じているというのに、なぜかこの店では美味しく感じている。
俺が不思議そうにしていると。
「どうでしたか? うちのお店のお味は」
少女がにこにこしながら近づいてくる。
俺ががっついて食べているのを見ていたのだろう。
「思っていた以上に美味しかったよ、しかし、俺はもっと濃い味が好きなんだが薄味でも美味しく感じられたよ。前に同じくらい薄味の料理を食べた時はそこまで美味しく感じられなかったのに」
俺がそういうと少女は『ふふふ』と笑い。
「それはですね、料理を作っているお父さんがなんと料理スキルLv5だからなんです!」
なるほどスキルによる補正効果というわけか。
この世界らしいと言えばらしい理由だったな。
しかし、Lv5って高いのか?
少女の口ぶりでは高い様に聞こえるからそうなのであろうが。
ユニス村で色々聞いたとはいえやはり分からないことがポンポン出てくるものだな。
「そうか、通りで美味しかったわけだ。ありがとう、勘定を払いたいのだが」
「はい、代金は鉄貨7枚になります」
ユニス村ではご飯1食分は大体鉄貨5枚と聞いたのだが少し高い。
おそらくは製氷機の分の値段なのだろう。
美味しいものにお金を払うことに俺は躊躇いはないので鉄貨を7枚少女に渡す。
「ありがとうございました」
食べるものも食べたので俺は店の外に出ようとした所で肩に乗っていたコンに頭を小突かれた。
「大斗、冒険者ギルドまでの道を聞くのを忘れてますよ」
そういえばそうだったな。
美味しいご飯を食べてお腹いっぱいになったんですっかり忘れてたわ。
「済まないが冒険者ギルドまでの道を教えてくれないかい?」
「冒険者ギルドまでの道のりですね。この店を出て真っ直ぐ道なりに行くと大通りに出ます、それをまた道なりに進んでいくと右手に大きい建物が見えてきます。それが冒険者ギルドです」
「そうか、ありがとう助かったよ。それじゃ」
俺は少女に道を聞き終わると店を出ることにした。
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