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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
一章 アザレスの森編
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一休みして

「ん?」


 体が痛い。

 それも全身のあちこちが痛い。

 俺はゆっくりと起き上る。

 周りを見回して見るとコンが枕元に丸くなって寝ていて可愛い、じゃなくて。

 俺が寝ているのは木のベッドに木造の家、それにかまどとかもある。

 ここはなんだっけ、ユニス村なのかな?

 俺の最後の記憶にあるのはあのゴミムシを倒してどうにか物納したとこまでだ。

 まあ、ほぼカタログ頼りでギリギリだったと思うが。

 もっと強くならないと駄目だなあ。


 それにしても人と関わりを持とうとして、いきなりこんな目に遭うとか有り得ないよな。

 俺とコンだけだったら拠点に逃げ込んで、相手がどこかに行くのを待つという手が使えたというのに。

 ほんと人と関わると碌な目に遭わないな、1回目は襲われ、2回目は強い魔物に襲われるときた。


 俺の運は元々高い方でもなかったしな。

 よくネトゲーで物欲センサーが発動して欲しいドロップアイテムが出なかったよ。

 え?

 物欲センサーって何かだって?

 いやこれ常識じゃないか?

 ネトゲーユーザーにとって。

 そんな物知らないって?

 仕方ないな、一応説明しておくね


 物欲センサーとはネトゲーや家庭用ゲーム等において、プレイヤーが欲しいと思うドロップアイテムを正確に検知し、そのアイテムをとんでもなく出し辛くしてしまう恐怖のセンサーだ。

 また高性能なセンサーになるとプレイヤーが欲しがっているアイテムよりも『出にくい筈のいらないアイテム』を出現させるものもある。

 中でもCAPC○Mの開発した物欲センサーは、数あるセンサーの中でも最上級の品質を持っており、モンスターハ○ターシリーズのセンサーも極めて優秀とされている。

 なぜこのようなセンサーが付けられているかと言うとそのゲームにより長く熱中させるため、またプレイヤーを飽きさせないためには非常に重要なシステムだからである。目当てのアイテムが出なければプレイヤーをより 長くゲームをする必要があり、また別に欲しくなかったレアアイテムが入手できればプレイヤーは機嫌を良くするためにより長時間のプレイが期待できる。


 しかしながら、あまりの出なささに幾多の廃人達が発狂し、遂には怒りのあまりPFPを叩き割る者まで現れたため、ゲーム会社ではこのセンサーを付けるべきか日夜討論が続いている。


 えっと何の話してたんだっけ?

 そうそう、俺が運がないって話をしてたんだっけ。

 確かに運が悪いよね、しかも人と関わらなかったら起こらなかったっていうのが極め付けだよ。

 しかし、コンと二人でレベル上げだけして、暮らすっていうのはつまらないしね。

 まあ、本当にどうにもならい敵と戦うことになったら、拠点に逃げて敵が居なくなるのを静かに待つと決めている。

 自分より強い敵から逃げるというのも大切だからな。

 無論その後、人々を見殺しにするのだとしても。

 だって他人の沢山の命より自分の命の方が大事じゃん。


 さてととりあえずコンを起こして現在の状況を聞くか。

 もう窓から日が差し込んでいて朝の様だし。

 俺は容赦なくコンの尻尾をにぎにぎする。

 やっぱこれだよね~。

 獣と言ったら尻尾だよ!

 俺が尻尾を触ってもコンは目覚めないようだ、ということはさらに乱暴に扱ってもOKということだな!

 俺はコンの尻尾に頭を近づけクンカクンカする。

 コンの匂いが良いネ!

 ちなみにコンの口の匂いはどうなっているのだろうか。

 うちのネコの口の匂いは臭かったが、コンはその点、空気中の魔力を吸収して生きているので、食べ物を必要としないが、例外として油揚げを食べているくらいだ。油揚げの匂いがするのだろうかとコンの口を開けようとして。

コンと目が会った。




…………




「やあ、コン良い朝だね。今日の君もまた輝いているよ。ところでお医者さんごっこでもしないかい? はっはっはっ、怖がることなんてないのさ、ただお口をアーンすればいいだけさ、じゃあ行くよ。お口をアーン」


 コンは大きく口を開けた後、思いっきり俺の手に齧り付きました。


「痛い、いた、いたたたたたたったたたたたたたたった!」


「ごめん、許してって、悪気はなかったんだ。ただ性欲を持て余していただけなんだ!!!!」


 その言葉により更なる圧力が大斗の手に掛けられた。


 「マジ死ぬ、死ぬ、コンさんさっきより容赦が無くなって、死ぬううううううううう!」



 結局俺の声に驚いて村人がこの家に入って来るまでコンに齧り付かれました。

 いやね、ちょっとは反省しているんだよ。

 ちょっとは……。




「それでコン状況を説明してくれるか?」


 俺はまだ痛む手を押さえつつ、コンに説明を求める。


「簡単に言うと大斗はあの虫を倒した後、気絶して、ここに運ばれました。一応怪我とか確かめましたが擦り傷くらいでした。後、ついでに魔物の死体の処分もしておきましたが、ブラックベアーの肉とか毛皮とか爪とかは高く売れるそうなので別にとってあります」


「そうか」


 そういえば俺この世界のお金とか持ってないから換金用の素材とか集めておくべきだったな。

 そこはグッジョブと言うべきだろう。

 まあ、それは良いとして俺はコンとは別のさっきの騒ぎで慌てて入ってきた男性に目を向ける。

 すると男性は綺麗な礼をする。


「私たちの村を救っていただき誠にありがとうございます。なんとお礼をしたらいいか、残念ながら私たちの村にはあまり蓄えが無く、Aランクの冒険者様に払えるほどの報酬が用意できなく、これぐらいしかありませんが」


 そう言って男性は何かが入った袋を渡してきた。

 とりあえず開けてみると硬貨がたくさん入っていた。

 くれるのは嬉しんだけど、俺貨幣価値とか知らないんだよな。

 そこらへんも含めてこの人に聞いてみるか。


「まあ、報酬の件は置いておいて、色々聞きたいことがあるんだ、この世界について」


「どういうことですか?」


 まあ、いきなりこの世界について教えて欲しいとか、言われたら分からないよな。

 ここは事実を言うんじゃなくて適当に言っておこう。


「簡単に言うと俺はアザレスの森に住んでいたんだ」


「はっ?」


 いやあ、さすがに訳分からないって顔してるね。

 普通に魔物が跋扈している森に人が住んでいるなんて信じないよな。

 それでも異世界から来ましたよりはマシだ。


「とにかく俺はこのアザレスの森で生まれて育ったんだ。それで、つい最近育ての親が死んでな、それで外の世界に行こうと思ったわけだ、でも俺の親は外の世界については少しも教えてくれなくてな、そこで村を救ってあげたお礼にこの世界のことに聞こうというわけだ」


「そうなんですか」


 男性は少し信じられないという目でこちらを見ているようだ。

 俺も信じてもらわなくても別に良いと考えてるしな。


「それでこの世界について色々教えてくれないか?」


「はい、分かりました」


 男性は納得はしてないようだが説明してくれるようだ。


「ここはエレニア王国北東部のユニス村です。エレニア王国の特徴は特にないですね、歴史があるくらいで、ダンジョンの数もそこそこですし、魔法がそこまで発展しているわけでもないですし、ですが一応この大陸で大きな勢力を誇る4大国の1つですね。他の3つは今一番勢いがあるレイニー帝国、魔法がけっこう発展しているらしいです。そしてスルス教国、この大陸で一番信仰されているスルス教の発祥の国ですね。最後の一つはファンダール連合国、独特の文化を持つ国が複数集まった国です。他にもダンジョンが多い小国などもありますが小国はそこそこ数が多いので割愛させていただきます。ここまでで質問などは有りませんか?」


「特にはないが国同士の戦争なんかは起こっているのか?」


「戦争は今のところは起きてませんが、我が王国と新興国の帝国とは仲が悪いですね、戦争にならなければ良いのですが」


「そうか」


 せいぜい国に目を付けられない様に気を付けなくてはならないな。

 そういえば結局最初の冒険者らしき人に襲われたのはなぜだったのか聞いておこう。


「そういえば、ここに来る前にいきなり冒険者らしき奴らに襲われたのだが、何か心当たりがあったりしないか?」


「そ、それは恐らく」


 そう言って男性はコンの方に目をやる。


「恐らくは霊獣様を狙ったものと思います」


 霊獣様ってなに?

 不思議そうにコンの方を見る。

 俺がぽかんとしているとすぐに補足してくれた。


 なんでも霊獣ってのは特別な力を持つ生き物の総称で、他の普通の生き物と少し変わっており、中でも力を持つ者は人と会話も可能であるらしい。

 男性の話によれば霊獣の心臓とか素材が特別な薬として使えたりするらしく、表では取引が禁止され、霊獣に危害を加えてはいけないとされているが、裏では高値で売られているらしく、霊獣を襲うものが後を絶えないらしい。


 うん、これは最初に俺達が襲われたのはコンが原因だな。

 手乗りサイズのキツネとか有り得ないし、そもそもしゃべってるし。


 さて他にも色々聞いておくか。

 俺は男性に質問を繰り返していく。


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