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第2章 その② ~新世界~

心地よい温かさが体を包み込み、時折感じる柔らかな風が目覚めを促す。

そして力強い滝の音が、意識を呼び覚ます。


「!?……!……どこだ…ここ…!」


意識を取り戻したタケルは、ディスプレイに頭がめり込んだ辺りで途切れた記憶からの、この急な情景変化に戸惑いながらすぐに周囲を見渡す。


そこは、生い茂る木々に囲まれた自然美あふれる森の中。


木々の間から漏れる温かな陽の光が体を照らし、時折柔らかな風が吹いてはタケルを煽ぐ。

そして、近くで聞こえる力強い滝の音で何とも言えない清々しさを感じる。


「……森!?これ……冥界じゃないよな、どう見ても。どこなんだろう?…っていうか…想像してたとこじゃなくて………良かったーーーーーーー!!」


先程の絶望的な恐怖から解放されたとてつもない安堵の気持ちに、心地よい森林という状況があいまってか、タケルは大きな背伸びと共に大声で叫んだ。

その解放感もつかの間、上げた自分の左腕に違和感を覚え、手をおろして腕を見てみる。


「うお!なんだこれ!………バングル?」


違和感の正体は、左手首にまとわりつくようにはめられていた5cmほどのバングル。それは金属製のようだったが、手首にフィットするような不思議な装着感のある素材で出来ており、色は白色。

手側と体側の両端少し手前にはシルバーの細いラインが腕を一周する様に走っており、表側と脈側の中心の2か所には、暗いエメラルド色をした1mm程の幅の細い溝が、直径5mmほどの円を描くように装飾されている。


「これ……色とか形が少し違うけど…もしかしてファイナルウェポンの……あのバングル?」


そう呟きながら、ゆっくりとそのバングルを触った直後だった。

脈側のエメラルドの円が光り初め、その溝からは1本のエメラルド色の線が何もない空間に照射されたかと思うと、まるで絵を描くような動きをし始め、瞬く間に30cm四方の半透明なディスプレイをそこに作り出した。


「すげー!!立体ディスプレイだ!!やっぱそうだ!これ、ファイナルウェポンの……ってことはここ、ファイナルウェポンの中!?なんだよこの映画みたいな展開!!」


描かれたディスプレイをキラキラの目で見つめながらはしゃぐタケル。

ファンタジー映画を見ては密かに憧れていた、突然不思議な世界に放り込まれるという状況に、自分が置かれているという事を確信して興奮しているようだった。しかしそれも長くは続かなかった。矢継ぎ早に頭に浮かびあがる疑問が興奮を冷静へと引きもどしていく。


「っていうかこの画面……なんで全部英語なんだよ…さっぱりだっての。ファイナルウェポンのメニュー画面とまったく違うし。それにこの雰囲気、ゲームっていうよりはまるで現実と同じだっての……。」


タケルはそう言いながら、左手の甲をつねったり、地面の土や落ち葉を握ってみたり木を触ったりしてみた。


「うん。ちゃんと痛いし、土も木も普通な感じ……なんなんだってのここ……。でもまぁ、良かった。きっとユウトもこの世界に居るはず。冥界じゃないなら、生きてもいるよな。」


その時だった。


森の奥の方から木の枝がいくつも折れる音と、木々が揺れて葉っぱがこすれ合う音が聞こえてくる。その音は徐々に近づいてきているようで、タケルは驚いてその方向に目をやった。


その先には、大きな動く影が見え隠れしている。


「…え?……マジ…ですか…?」


その影のシルエットを見ていち早く直感したタケルがそう呟くと、木漏れ日が一瞬だけその影を照らし、姿をさらけ出した。


見えたのは、牛の頭をした巨大な人型の怪物。


「う、うそだろ……やっぱここ……、ファイナルウェポンかよ!!!!」


姿を目撃したことによる恐怖と驚きで思わず語尾を張り上げてしまい、それに反応したかのように突然、巨体は歩く速度を増して木々をなぎ倒しながら近づいてくる。


「なんで、ミノタウルスがいるんだよ…………逃げなきゃ……逃げなきゃっ!!!」


恐怖ですくむ体に鞭を打つかのような大声でそう叫ぶと同時に、タケルは全速力で森林の道に沿って走りだした。


それに気づいたミノタウルスは歩くのをやめ、獲物を追いつめるかのような勢いで走り始める。


「うわぁぁぁぁあ--------------!」


大きな地響きをさせながら徐々に距離を縮めてくる音にさらなる恐怖を覚え、タケルは大声で叫んだが、もう真後ろまで来ているのではないかと思わせるくらいの振動が伝わってきたその時、ふと、一緒についてきている立体ディスプレイに目をやった。


その先には、剣のような形をしたアイコンが。


それをとっさに右手で触ると、リストのような画面が開かれ、そこには一つだけ“Short Sword”と表示されている。


意識はすでに逃げる事で精いっぱいのはずだったが、幼いころからゲームで遊んでいたタケルは、条件反射だったのか、無意識でそれを選択した。


その瞬間、右手が光り始める。


その光の中からは剣の握りが現れ、とっさにそれを握りしめると、続けてつばと刀身が現れる。


その現象にやっと意識が追いついたのか、タケルが右手の剣を見つめて呟く。


「ショート……ソード!?戦えってのか!?」


ミノタウルスはその間も徐々に迫ってきており、右手にお約束の巨大な斧を構えて、タケルを両断しようと間合いを詰めてきていた。


「いやいやいや無理っしょ!!あれはゲームでこれはリアルだっての!!!!」


全速力で森の道を駆け抜けるタケルだったが、歩幅の差でついには追いつかれ、ミノタウルスはタケルを間合いに捉えると、斧を振りかぶり、タケルを殺めんと渾身の力で振り下ろす。


その刹那、背後からせまる斧は完全に死角となっていたにも関わらず、なぜか斧の動きを肌で感じ取っていたタケルは、とっさに急ブレーキをかけると同時に後ろを振り向き、今までの速力を踏ん張る足に溜め込み、力の反動を利用してミノタウルスの左脇へと飛びこむ。


そしてすれ違いざまに右手のショートソードを、森林が震えるほどの絶叫を上げながら思い切り振りぬく。


「うぅわぁぁぁぁぁぁぁあ---ーーーーーーーー-----------!」


振りぬかれたショートソードは、少しの抵抗があったもののミノタウルスの胴体を通り過ぎ、その直後、ミノタウルスの巨体は腹から二分され、走ってきた勢いとともに少し先の地面へと激突する。


その振動が小さくなるとともに、辺りはまた最初のころのように静まり返った。


「ハァ…ハァ……やった……のか……。これは、ミノタウルス…。間違いない…ここは、ファイナルウェポンだ!」


――


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