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おとぎばなしのはみ出しもの

どうやってだまそうか

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/18

国王の私室に入ると、王冠をかぶった全裸の太鼓腹が立っていた。


「ふむ、そなた達が余の新たな服を仕立てるという者達か。

 この場では直答を許す。生地を見せてみるがよい」


ああ、生地を当てたいから全裸待機してたのか。詐欺師二人は安堵した。

この二人組、様々な国で数々の詐欺をはたらき荒稼ぎしている。

その都度職業を偽り、手口も変えて、髪の色も染め直す念の入れよう。

各地で手配されていながら逃げおおせているツワモノである。


今回は「賢い者だけが見ることができる布地」で礼服を仕立てます、

という売り込みを、大胆にも国の頂点に対して行うつもりだ。


貴族は基本、見栄で出来ている生物だ。他者に侮られるのを何より嫌う。

自分が愚かな存在であるとは決して認めない。王族ならなおの事。

誇りから、何も見えなくとも「どこにあるのだ」とは言うまい。


詐欺師の一人が、かけていた鞄から大事そうに生地を出すふりをする。

この日のためにパントマイムの腕を磨いてきたのだ。バレまいて。


「ははっ、今拡げておりますこちらが、

『賢い者だけが見ることができる生地』でございます」


「どこにあるのじゃ?」


…あれ?

てっきり困惑した挙句、ふむ、これは見事なものじゃのう、とか言って、

こちらの芝居に騙されると思ったんだが…。


「どうした、どこにあるのじゃ、と聞いておる。答えい」


内心滝のような汗をかく。この場合どう答えるのが正解なのか。

相棒の詐欺師も、こちらを見てどう対応しようか悩んでいるようだ。


「あー…陛下のお目には見えておられませなんだか。

 申し訳ございませぬ。私どもが間違えて持ってきたようでございます。

 どうやらこちらは『愚かな者だけが見ることができる生地』で」


ここは下手に出て、国王を持ちあげておこう。

機嫌を取っておけば、この後も切り抜けやすくなる。


少し首を傾げた太鼓腹、間をおいて口を開く。


「おや、そうかそうか。だからそなた達にはそれが見えておるのだな。

 まあよい。一度は許そう。次はないが」


いきなり命の危機に直面した詐欺師たち。しかも軽く馬鹿にされている。

ここは出直して、件の生地を持ってまいります、と逃げてしまおうか。

しかし。


「はて、そうなると疑問があるな。答えい」


なんだ?何かしくじったか?


「なんでございましょうか」


「『賢い者だけが見ることができる布地』を、

 どうやって愚かなそなた達が見つけてきたのじゃ?」


…答えられない。件の生地も見えると言えば前提が根本から崩れる。

手で触れますので、などと誤魔化しても、見えなければ探せないだろう、

と返される。無言の時間がしばし続く。


「答えられぬのか。ああ、逃げられるとは思わぬことだ。

 扉の向こうには衛兵が待機しておる。

 ここに入ってきた時点でそなた達は終わっていたのだ」


太鼓腹はにんまりと笑った。売り込んだ最初から疑われていたのだ。

詐欺師達は崩れ落ちた。


縄を打たれ刃を当てられ、連行される二人組に太鼓腹が声をかける。


「ひとつ、教えておいてやろうか。余と言ったが、わしは陛下ではない。

 弟の王弟じゃ。万が一のためにな。王冠は陛下に模造品をお借りした。

 どうやって詐欺師をだましてやろうか、と策を考えて、な。

 他愛もなかったが」


詐欺師の一人は、うなだれていた頭を上げた。


「もうひとつお答えください。なぜ入室を許された時、

 王弟殿下は裸でおられたのですか?あれも策のひとつで?」


王弟は自慢げに答えた。


「あれは趣味じゃ」

趣味なら仕方ない。

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