同胞
時に人々は助け合わなければならない、同じ種族であればなおさらである。
ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー
・エルーラ G-8000 C/B/L
エルーラ社製の中型輸送船、性能としてはやはり無難もいい所であり、一応大気圏航行から星間航行まで一通り性能に偏りも無く可能である事が長所として上げられる。フルジア王国領内では国内外問わずバランスよく活躍しているが、ライバル機種は基本的に大気圏の出入りを頻繁に行う国内運用を前提とした設計をしている為、頻繁に大気圏を出入りする性能が他に劣りがちで他国ではあまり採用されない不人気機種となってしまっている。一応大型同様に鉱石輸送型や液体物輸送型のラインナップもあるが主力は貨物型のC型のみの為、登記上も省略される事が多い。現行型は8000番台
・ベルドナカンパニー ジャガー級中型輸送船
爬虫類族のベルドナカンパニー製の中型輸送船。作りとしては銀河一堅牢なシステムと船体設計を有しており、その堅牢さから同型クラスの船ではトップクラスの船体寿命を誇る。しかしながらベルドナカンパニー製品は全般的にエンジン出力が貨物容量に対して不足しがちな為、大概の船は巨人族系のエンジンか、比較的安価で無難な人間族系エンジンに換装し、推力不足を改善している。ちなみに通称名も非常に長く、規則性が無い事やマイナーチェンジも非常に多いのが特徴。
最新型はジャガーⅦハイパースペースシリーズ(7代目中・後期型)マドリニスゾリゾはジャガーⅥスターカーゴVS-C(6代目中期型の貨物室拡張モデル)を使用している。
エディー・リリックが操船免許を無事取得、G-8000がステージアコロニーに初入港した時の港の管理者の歓喜は凄まじかった。だが、中型貨物船1隻増えた程度で増える港の荷物は相殺出来る訳が無い・・・操船免許の取得の育成が間に合っていないのが現状なのである。
ルーガの工場はG-8000とかG-7000、ジャガーⅢやジャガーⅣを5隻くらい集めて一隻の船にしたりをして、型式不明の船を2隻建造、しかも武装はしていない純中型貨物船なので税金も安い。
しかし育成が間に合っていない・・・本当に間に合っていない。
ルーガの整備工場の廊下を歩きながらそう思う。そしてこの廊下を歩いてたどり着く目的地はオーエンスじゃない、おおよそオーエンスと同型艦のホーネットだ。
・・・使うしか・・・ないよなぁ?
正直諦めてのんびり運べる分だけ運ぶべきではある・・・だが、こうも毎日のように船をもっと寄こせと言われるのも耳が痛い。仕方がないのでオーエンスをリーサに任せ、ホーネットを商船登録して引っ張り出して2人育成に務める事でさらにもう一人の船長育成に務めると言う算段の元でルーガと合意して、今それを取りに行く所だ。
ホーネット艦橋にたどり着けばヤニ臭さ・・・は無いが、かなり埃っぽい空気、しかも本気で商用運用する気が無かったと言わんばかりの中途半端な修理加減、一部天井や内装パネルが無かったり、液晶に縦線が入っていたり・・・それは外装も同様、継ぎ接ぎ修理の跡が多く、一部では青いパネルだったり、黄色だったり、赤いパネルも多々使われていると言う、とりあえず動けるスペースデプリ加減。それでも機関系はちゃんと整備されており、航行上は問題なさそうだ。営業運転向けの整備は後日対応していくスケジュールを予定している。
海賊船の船団は足が早い。いつもの通り、ステージアコロニーで荷役、ヴァルカンを先頭にしてシーモア共和国のオデム=ササラ国営物流ステーション沖で一泊、その後に入港する。常時混雑しているのでステーション内に留め置き出来ないからだ。
「ファルマン、見ない間にまた君は船を増やしたのかね?」
「エルムスミエルか・・・マスビダ星系は深刻な物流業者不足だ、ステージアコロニーの港はもうコンテナの置き場が無いくらい物に溢れているからしょうがない」
「それは災難だな、だが我にも定期航路がある・・・助ける事は出来ないな・・・それはそうと、セルルド星系全域でまたいつものアレをしているぞ?エマンクリシット皇国は200艦隊用意していた、早くしないと巻き込まれる、気を付けたまえ」
「いつもありがとう、エルムスミエル、良い航海を」
「良い航海を」
巨人族のエルムスミエルはそう言いながら他の船長にも荷役を迅速に済ませ、ステーションを旅立つよう忠告して回る。彼はグリッドロッド星系のトライアド民主共和国からハルマイン星系などのエマンクリシット皇国領を経由し、ロックベルト星系のシーモア共和国と交易をする定期航路商人である。巨人族系はどの国も総じて上から目線の口調が特徴的、特に皇国人はかなりキツイ、リーサはこの人に会うといつもムスッとするが、元々巨人族はこういう人種、爬虫類属のシーモア共和国の人や昆虫属のズァパリ人民国、獣人族のラクトパレト王国他多数の人達は気にしない。気にするのはオヴェルツィッヒ帝国の人だけである。
・・・エルムスミエルの忠告はありがたいんだが・・・。
3隻は過積載、積み下ろしに膨大な時間を要する・・・そして今しがた小型機ドッキングベイにコンテナを外付けするな!何度目だ!と港の管理センターに呼び出しされてこっぴどく怒られたばかり、分かっているんです・・・でもステージアコロニーはそこまでするほど酷い状態なんです。
そろそろステージアコロニーの謝罪文を持参しないと本当に入港禁止になりかねない気がしてならない状況ではあるのだが、向こうが切迫しているのだからこっちも同じである。医療品の入ったコンテナ、過積載までは詰め込まれるもシーモア共和国の人達はドッキングベイにまで積もうとしない所は流石にしっかりしている。
「急いで戻ろう、もうヤバいぞ?」
「いけ好かない三つ目のオッサンのいう通りね」
「だからリーサ、巨人族の人は元々そういう物なんだ!慣れてくれ!」
「直ぐに飛べる準備します!」
「また物流ステーションの沖で合流しよう」
リーサとマイラはそれぞれの船に走る、自分もホーネットまで走った。マイラはそこまで気の強い女の子でも無いのでたぶん異星人付き合いに直ぐに慣れるだろう。宇宙で商人をする上ではどうしても避けられない事でもある。
艦橋にたどり着く頃には周りの他の外国籍の船は出払っている。管制は空いていて直ぐにアンドッキング許可が出た。そのまま物流ステーションの沖で合流、そしてセルルド星系へ飛んだその時、ギャラクシーネットワークの星系図に表示されている民間商船などのトランスポンダーは信号待ちでもしているかのように一か所に集中している様子が目に見えて分かる。ホーネット自身のレーダーも本来搭載出来ない違法改造の警察レーダーなので軍用艦のトランスポンダーは筒抜け、正体不明の多数の軍用艦を捕らえている。相変わらず酷い有様である事を物語っていた。
「丁度・・・お盛んなタイミングだな」
もう全員で腕を組むしか出来ない状況が目の前にある。
「SD-87惑星の小惑星帯ならそこまで居ないはず」
最終的にリーサがそう提案してきた。
「・・・それに賭けるか」
「了解です」
マイラもやれやれという表情で作戦に承諾した。
「そういう訳だから、SD-87惑星経由で戻る、頼んだ」
「了解しました」
訓練生にそう伝えてガス惑星のSD-87惑星に進路を向けるよう指示した・・・しかし、ハズレだった。
「まずい!小惑星に隠れてレーダーの電源をオフにするんだ!明らかに貨物船じゃない限りは民間問わず撃って来る!しかもコイツは海賊船だ!本来貨物船とは呼べた船じゃない!」
「こんな所まで!」
「了解」
エマンクリシット皇国の艦隊が小惑星帯から離れていくのがギリギリ映る。
・・・間に合ってくれ。
たぶんあちらからは見えていない・・・何故なら警察レーダーベースの通称海賊レーダーは違法な代物だからだ。なんで搭載出来ているかについては搭載している事がバレないように偽装機能が備えられているからである。おかげでよく見える。
「どれくらいでアイツらは抜けそうだ?」
「皇国艦の足の速さなら20分あればもうこっちのレーダー範囲外よ?」
リーサが無線だけでそう伝えてくる。一般的な映像通信に比べて音声無線通信は有効範囲が調整出来るので、こういったコソコソ話に向いていると言う、船乗りなら誰もが知っている共通の常識、勿論最大出力は船に搭載された通信機の性能にもよるが大概は星系全体まで飛ばせる・・・用途は故障した時の非常通信だ。
「それまでは休憩だな・・・仕方がない」
よく見れば他の輸送船もちらほら隠れている・・・小型がほとんどなのでほぼフルジア王国籍だろう。ホーネット同様、これらも元偵察機、軍用機と間違えられて攻撃される可能性がある船である。あともう少しでジャンプゲートなのにお預けを食らっているようだ。皆してレーダーを切らないと撃墜される。ひとまずコーヒーを入れに行こう。
ホーネットの艦橋を出て食堂へ行く、ほかの乗員も付いてくる。海賊船らしく、なんか小汚い食堂のキッチンにあるのは質より量の安インスタントコーヒー、給湯器はオーエンスのと変わらない量産ベストセラーモデル、エルーラ社製の船には大体搭載されている物だ、それで入れたアツアツのコーヒー・・・あー不味い。
他の乗員と世間話でもしながら時間を潰し、そしてようやく動けるようになれば業務再開、うちが動き出すのを見計らったように他の商船達が動き出す。
「・・・うわぁ、凄い数」
「大体星間輸送業者だけでも今現在は約500社はあると言われている・・・対して他の国は5~6億社が平均だ、少ない方だがフルジア王国としては確かに多いな?」
レーダ画面に表示された小型機の数に訓練生達は驚きの声を上げている・・・どうやら50隻近く隠れていたようだ。正直たいした数とは言えないのだが、フルジア王国籍に限って言えばかなりの数になってしまう。ほとんどがシーモア共和国行きのようだがエマンクリシット皇国の艦隊が居たと言う事は戦いがあったと言う事だ。皇国艦隊側は巨人族の大型貨物船団が目指している、捜索自体はフルジア王国籍の小型機が全力でしているが、戦局的に帝国が負けたように見える戦場だ。
「トライアド民国籍の輸送船と暇そうにしてるそこの海賊船!負傷者回収を求む!」
「こちらWER-675ホーネット他2隻、直ぐに向かう」
「こちらSED-645含むベーベル級大型輸送艦6隻、了承した、フルジア王国籍の海賊船、人情があるのなら帝国軍人の回収に専念したまえ、皇国の同胞は我らズーデンド通商で引き受ける」
「了解です、皇国軍人はズーデンド通商にお任せします」
「ほう?あっさりと人命救助に加担するとは・・・明らかに海賊では無さそうだな?だが今はそれどころでは無い!少しでも多くの命を助けよ!」
「ネドリー運輸と申します、我々は正規の物流会社ですので」
「なんだ、最近海賊船を堂々とオデム=ササラに乗りつけていると言う噂の人間族の会社だったか、これは失礼した」
・・・まぁ、船が船だしな?
海賊船なら本物の海賊扱いされても仕方がない・・・出来れば普通の貨物船を早く揃えて行きたい所だが、今はどうでも良い・・・やるべき事がある。
「・・・と、言う訳だ、リーサは艦首方向から左、マイラは右を頼む」
目の前の比較的完全体に近い残骸を睨みながらそう言う。
「「了解」」
「俺らは真ん中だ、要請に従い効率よく回ってくれ、操舵とレーダー員以外は受け入れに当たれ、俺も出る」
「了解」
ひとまず手前から奥へかけて回収に回る、だが数が多い。
「船長!船員区画もいっぱいです!もう受け入れ出来ません!」
「艦橋にも入れろ!」
「了解」
・・・まずい、完全にキャパが足りない。
「船長!オーエンス、ヴァルカン共に限界を迎えました!」
「・・・フルジア王国籍の船に伝えろ!損傷軽微なフリーゲートが残ってないか探せ!」
「フリーゲート・・・?あぁ、そう言う事ですね、わかりました、直ぐ捜索します!」
マイラがまず理解してくれたようだ、そう、後は引っ張る他無い・・・うちの専門分野だ、それで困惑していたホーネットの乗員も次第に何をするかを理解し始める。
「近くにエンジン大破が1隻あります!ジェネレーターが死んでいるのが2隻だそうです!」
「ジェネレーター死んでる奴に付けてくれ!ホーネットの電源を繋ぐ!ホーネット、ヴァルカンにもそうしろと伝えろ!」
「了解!」
無線で指示した後、捜索をしていた他の小型機のパイロット達を見る。
「わかったよ、残りは私らが往復してその船まで運ぶ」
パイロット達は肩を叩きながらさらに奥へと進んでいった。
「頼みます、ひとまず全員引き上げだ!」
捜索に当たっていた他の船員達を呼び寄せてホーネットのエアロックにしがみ付く、そして最寄りのフリーゲートへ近づいた。
「ドッキングして多少は移してくれ、うちも酸素生成のキャパが設計限界なはずだ!」
急いでジャンプケーブルをフリーゲートに接続する、そしてフリーゲートの電源が復旧、エアロックから中に入って艦橋へ、中では死を覚悟してた帝国軍人だらけ。
「おら、海賊だ、船寄こしな」
「貴様!帝国軍の船を略奪しようとは!」
「死にたいか?だったら今すぐジャンプケーブルを抜いて置いていくが?」
「くっ・・・好きにしろ」
「物分かりが早くて結構、ホーネット、今ドッキングシステムを作動させる、そっちも繋げて少しこっちに帝国兵を寄こしてくれ、他の小型船、順にドッキングベイに並んでくれ、一機ずつ格納して生存者を回収する」
「了解」
「頼むぜ」
「待っている」
通信を終えると近くの帝国兵の足を蹴る。
「ヒマだろ?ちょっと民間人の残業を手伝ってもらおうか?」
「わかった、なんでもしよう」
「格納庫であんたらのお友達を回収してきてくれ、それくらい帝国軍人なら出来るよな?」
「やるさ!そうさせてもらう!パルサー大尉、ヤシマ中尉!格納庫へ急ぐぞ!」
・・・やれやれ。
所詮徴兵された者達だ、しかしフリーゲートをもってしても収容限界である。
・・・なんとなく察しはついていたがやっぱりか。
問題はエンジンが死んでるだけの船だ、それなりに居る。エンジンが死んでるだけの船の救援要請は後回しにした、むしろ救助者を押し付けてパンパンにしている。その乗員をなぜ救助しなかったか・・・今に分かる。
「艦長、これら全てを牽引しつつ航行となると、ジャンプゲートを通れるだけの出力が足りません」
凄く当然の意見が帰って来る。当たり前だがジャンプゲートの本質は加速装置、最低速力を下回ってしまえばジャンプゲートによる超空間航行の加速補助が受けられない・・・今時そんな鈍足の船なんて存在しないが、たかだか中型クラスのエンジンじゃフリーゲートを一隻引っ張るだけでもその出力の下限値を下回ってしまう事も十分あり得るのである・・・2隻目となればもう確実だ。
「まぁ、そうだよな?考えがある、ホーネットをオートに変えてくれ、この船に追従をするようにだ」
「了解」
一番近い駄々をこねている艦長の船に艦首を向ける。
「ランコック中佐だったな?牽引の準備とジャンプケーブルの準備をしろ」
「・・・何をする気だ?」
「決まってる、ニコイチにする・・・うちの船に収まりきらない奴は自力で本国まで帰ってくれ」
「断る!こんな無意味な戦争付き合ってられるかっ!」
「・・・そうは言われてもだな?たかだか海賊船ごときがこれ全部引っ張れると思うか?それにフルジア王国では3年は船の上で生活しなければならない、コロニーの一部区画に出入りこそ出来るが、こんな足の踏み場の無い人数が3年もこの船の上で暮らせる訳無いだろ?総計で5千人近く居るんだ」
「そんな・・・」
「悪いな、自力で最寄りの基地に帰ってくれ、うちは元海賊船なんだ、あんたらの基地まで引っ張る事も出来ない」
「だが、貴船が無ければ他も牽引は不能だ」
「・・・この宙域内だったら一日かければ2隻くらい引っ張れるだろ?」
「エンジンが足りない・・・フリーゲートも分類上は中型艦クラスである・・・貴様の船でも無理があるのなら我々の船でも無理だ」
「確かにそうは言ったが・・・そんなに亡命したいか・・・そうか・・・」
・・・なら仕方ない。
エンジン破損の船を3隻かき集めジェネレーターエネルギーをホーネットとフリーゲートに回す、それが他に2セット、普段は上から目線の巨人族からも尊敬されるイカレ具合、救助をしていたフルジア王国籍の小型機も随伴、拾ってしまった以上、マスビダ星系まで飛ばなければならない。
マスビダ星系まで飛べば、ランスロットと本来国内専門の同業他社の数少ない中型貨物船、そして星系警察の巡視船がジャンプゲート手前で救援に来てくれた。小型機が先行して呼んでくれたのだ。
「・・・なぁ?ファルマン・・・帝国軍の最新鋭フリーゲートを注文したっけか?」
「・・・たしか、ジュリエット級、何でも良いから適当に・・・だったはずだ」
「と・・・とりあえず、この軍人をどうするかは星系警察と話は付けてあるんだよな?」
「・・・我々では面倒見切れないから各ステーションの税関なりと受け入れ交渉をしてくれだそうだ・・・が、ほぼ受け入れ拒否、理由?貨物が足の踏み場も無いくらい一杯だからだ」
「なにぃ!?」
ルーガは急に増えた人をきょろきょろ見ながら現状確認をしてくる。普段は小型機程度では収容人数もたかが知れるので数十人規模だったりするのだが、今回はかなり多い・・・あまりの人数の為星系警察は身柄を引き取ってはくれないのだ。そもそもこれだけの人数、コロニーで対処する他無いからだ、ステージアコロニー他もパニック状態だと言う。帝国の基地まで牽引出来なかったのか?と問われるが、唯一の中型であるオーエンス、ヴァルカン、ホーネットの船体を見て星系警察や各ステーションの税関や入国審査官達は黙り込んでしまった。
・・・そう、引いていったら防衛システムに蜂の巣にされるからだ。
それくらい田舎のポンコツ警察でも流石に理解できる、そこまでのリスクを犯してまで配達するならおとなしく持ち帰った方が賢明とも言える・・・そもそもこれらの船、元々何だったかを理解していなければ警察失格でもある。
流石に今日は遅配ペナルティはチャラだが、今日の夜のトップニュースを飾る事となる。半数はコロニーに収容されるも3千人近くが宇宙を漂う状態、今回回収した帝国軍のZB8型フリーゲートは流石に軍艦なので王国軍に接収されるだろう・・・とでも思ったか?帝国軍兵の宿舎と化し、ルーガの整備工場のドッキングベイに数珠繋ぎとなったのだ!王国軍は飯と食料と医療品は送ってくれるが半年の期限付き、民間で就職先を探すとなっても、3年も港湾地区と宙域で暮らせる場所と言えばうちしかほぼ無い。さあ、対策会議だ、ルーガの工場の事務所でルーガ、リーサとにらめっこする。
「どーするよ・・・」
「しかしながら我が社は実質3百近い操船ライセンス所持者を得ました、コキ使う他無いかと」
リーサは腕を組ながら冷静にそう答える・・・そう言うリーサも操船免許に該当する軍用操船ライセンス保持者、主に艦橋勤務の搭乗員は必ず取得する必要があるらしいが機関周りの人間も持っている事が多い・・・理由なんてシルバーロッド整備工場の従業員達と大体同じ理由だろう。
「・・・それもそれで勿体ないんだよな?あとは船さえあれば物流問題も改善しそうではあるんだが・・・」
「船ならひとまず2隻用意出来てるぜ?交通局に確認したら12隻のフリーゲートはひとまずスクラップ扱いで税金免除にしてくれるらしい、使うならいくつか対空兵装を不動にしてPMC巡視船登録が必要とか言われたが、しばらくは使えないだろう」
「そもそもなんでうちの資産になってるんだ?帝国軍の資産だろ?」
「どう考えてもあいつら全部大破クラスの損傷だ、そんな物帝国軍は直して使うほどケチじゃない、なにより直す行為その物が造船会社の利益にならない、普通は捨てる・・・王国軍は欲しそうにしているだろうが、運用すれば国際問題だろう・・・使い道としてはニコイチにして警備船にするか、切り刻んで海賊船にするのがベストと言ったところか・・・」
「第一軍艦はここは直せるのか?」
「うちは民間の整備ドックだぞ?おまけに主要な船は大型クラスだ、中型のPC-800ですら入ってこない、手作業でやってやれない事も無いが部品調達は無理だろう・・・だがZB8型フリーゲートなんざ今や至る所に修理用の部品が浮いている・・・せっかくの最新鋭艦だし切り刻むのも勿体ない所だ・・・うちで数珠繋ぎにしている奴らは3~4カ月前に竣工したばかりの新造艦でもある、うーん勿体ない」
「分かった分かった・・・で、この後復活予定は?」
「海賊船なら割と短期に仕上げられるが、欲しいのは貨物船だよな?今1隻作ってる、来週には上がるぜ?」
「中古は買えないしなぁ・・・」
「いつも以上に全力で引っ張って来る必要があるな?帝国軍人にも整備士が結構居る、そいつらはうちの工場で引き受けようとは思う」
「そう言えば大型貨物船の引き上げの話は?」
「やるか?それなら明日、G-8000が帰って来るからタイミングはその時だ、ランスロットで準備する」
「だけれど大型貨物船、壊れてるんでしょ?」
「まぁな?だがこっちには無職の整備士も600人近く居る、全投入すれば来週には上げられるはずだ、それに大型貨物となれば運用も最低50人は必要、整備以外の無職をさばく格好のカモだぜ?」
「じゃあ明日引き上げよう」
「パーツは全部じゃないが集めてあるんだ、足りない分は拾ってくるなり裏にあるのを加工すればどうにかなる、準備しておこう」
ルーガは立ち上がる、それで会議は終了、ひとまずホーネットとオーエンスに少しでも人を割り振る。
「ランコック中佐だっけか?」
「はっ!何用で!」
ランコックは敬礼してくる・・・俺は民間人だが?
「DV-32A5・・・なんだっけ?そのー・・・あんたの船の元々の乗員を呼んできて欲しい、怪我の無い、手が空いている奴だけでいい」
「承知いたしました!」
ランコックは直ぐに走っていく・・・うん、俺民間人。
しばらく整備ドックが見られる休憩室で待っていれば60人近くやって来る。
「連れてまいりました!」
「よろしい、帝国軍での配置は?」
「艦長は私!操船関係は交代要員含めそれぞれ2名ずつ、衛生兵5、炊事兵3、整備、海兵など他45名であります!」
「ひとまず半数に分かれて海賊船に常務してもらいたい、ランコック中佐はホーネットの艦長をしてもらう、半分はオーエンスに乗ってもらう、指揮は俺が取っている、今日からわが社の物流業務をしてもらう、内訳はランコック中佐に任せる、書類関係は業務中に作ってもらおう。後で端末を回す」
「了解しました」
・・・さて、次はホーネットの乗員を降ろして貨物船に割り当てる。
そう思ってホーネットへ向かった。
「全員居るな?今日から本格的な貨物船運用に入って貰う。いずれは艦長は君に任せる事になるが操船免許を取得するまでは俺が指揮を取る。悪いが直ぐ移動してくれ、ステージアコロニーの港がはちきれそうなんだ」
艦橋へたどり着いてから継ぎ接ぎ貨物船への移動を言い渡す。艦橋があわただしくなる、その間にヴァルカンはルーガの指示でアンドッキングされ、かわりに継ぎ接ぎ貨物船がドッキングベイにやってきた。
「持ってきてくれたのか?」
「まぁな?使うだろ?いや・・・少しでも使え、登録なら既にしてある、もう一隻も持ってくるが、船について聞いとくか?」
「自慢したそうだな?聞こうか」
「そう言うと思ったぜ?貨物容量はそのままにジェネレーターは2個積み、エンジンも4基積みの高速中型貨物船だ、速度特化だから海賊船とほぼ同等の速力を誇る・・・ただ、旋回性能とブレーキは普通の1隻分だから高速域ほど凄く効きも悪くなる、注意してくれ」
「足の速さで海賊から逃げ切る仕様か?」
「ああ、巨人族の所のノースリッド社が得意とする作り方だな?ひとまずは海賊船に混ざって運用出来るように努力はした。ホーネットもアンドッキングさせといてくれ、そこに入れたい」
「ランコック中佐に言っておく」
「頼むわ」
宇宙服を着たままのルーガはそう言って廊下を走っていった。
「ネドリー様!割り振りが終わりました!」
「悪いがホーネットをアンドッキングさせておいてくれ、ヴァルカンの横でしばらく待機」
「承知しました」
ランコック中佐はホーネット方向の廊下を走っていく、他の船員も続いていく・・・騒がしい廊下だが、他にもやる事がある。さらに適当な中佐を捕まえて貨物船に適当に割り振った。
・・・当然、エルーラベースだよな?
そして継ぎ接ぎ貨物船、BBY-102の艦橋に行く、構成としてはほぼ海賊船と同じだが、ジャガー級の貨物容量を余す事なく使う為、海賊船に比べれば機動性と速力に劣る、速力はエンジンの数でどうにかしたらしい、海賊船と同じ構成であれば定番のエルーラ社製の艦橋がついてくると言うものだ。
ひとまずアンドッキング、オーエンス、ヴァルカン、ホーネット、FGA-563を引き連れてステージアコロニーへ、念願の中型貨物船が2隻もドッキングだ、港の職員にニッコニコで過積載にされる。
・・・だが全く減る様子は無い、中型交易ドックに関しては大型貨物船が50隻でようやくトントンなのだ、全然足りる訳が無い。
「また面白い機体を乗りつけてきたねぇ・・・管理センター叱責部屋の常連君?」
「王国のコロニーにはやめてくれとお願いしてるんですがね?」
「見た所G-8000とパルサーⅣがベースだが、エンジンが軍用エンジン、ジェネレーターも2個、これは速さが期待できそうだ」
「ゾリゾさんも手伝ってくださいよ」
「あーしも定期航路を飛ぶので精一杯なんだ、悪いねぇ・・・」
マドリニスゾリゾはケラケラ笑う。彼女は爬虫類属の国内線担当、頻繁にオデム=ササラ国営物流ステーションを往復している事もあり、会う機会も非常に多い商人仲間、エルムスミエルも彼女の紹介で仲良くなった。
「ゾリゾー!」
「あーらリーサちゃん!今日も元気そうねぇ!」
リーサとマドリニスゾリゾはハグしあう、爬虫類属の人達は基本的に面倒見が良い人ばかり、最初来た時も真っ先に声をかけてこのステーションについて色々教えてくれた人だ。リーサもマイラも、エディーも可愛がってくれる、本当に良い人である。そして爬虫類族の人達の凄い所、このステーションにくる商人の名前も全て覚える程に頭も良い、人間族より若干短命だがその分爬虫類族は頭が非常に良いのだ。
「今日は珍しく医療品以外も積んでるな?友よ」
大きなトラのような人影にファルマンは隠れる。振り返ればソル・セバネル、人間的にいえばホワイトタイガーにほど近い容姿の獣人族の商人友達、ドラゴン星系のラクトパレト王国の商人だ。遠いのでたまにしか会わないがロックウッド星系線に就航して間もない同期、ドラゴン銀河運輸の雇われ船長だ。
「ソルか、元気にしてたか?」
「会う事も少ないからな?見ない間にずいぶんと船を増やしたな?そんなに儲かるのか?」
「いや?生活必需品だからむしろ赤字に近い、そしてこの船は全部元スペースデプリさ」
「スペースデプリ?なにか海賊のような船の作り方をしているようだが・・・良い工場が居るみたいだな?是非とも紹介してほしい所だ」
「うん・・・まぁ、一部はマジモンの海賊船だったが・・・自分の船が欲しいって?君は入社したてだろう?もう少しくらいドラゴン銀河運輸で働かなきゃ!確か君の会社は自家用の船の使用は通勤以外禁止だろ?まだ小型シャトルとかで十分じゃないか?」
「うむ、そうだな・・・残念だ」
ソルは強固な体格に見合わないしょんぼりした顔を見せる。
「まあ、ゴミで良ければそのうち用意してやらなくもない、独立するタイミングでもあれば・・・だがな?」
「本当か!流石友!我は良い友を持った!」
ガシッと肩を掴まれ前後に揺さぶられる。獣人族に比べたら人間の腕力などほぼ無に等しいレベル、本気で殴られれば頭だけが20メートル先まで飛ばされ確実に死に至ると言われる。もちろん獣人の中でも種族によるが、彼らは基本的に強い筋力を持っている・・・止めるには言葉以外無い。
「気が早い!・・・それじゃ、俺らはここまでで、センター長の尻尾が外の状況を知った途端、取れちゃったんだ・・・良い航海を」
「おお!そりゃ大変だ!少しでも早く生えてくる事を祈ろう!良い航海を!」
5隻は貨物搭載を終えると直ぐに出発、後ろがつっかえているのだ。今日は多い、理由はセルルド星系のドンパチで足止めを食らった商人が多いのが理由、セルルド星系のど真ん中で20億人が死ぬ大戦争が発生していたらしい・・・ステージアコロニー2.5倍の人数である・・・本当に何処からそんなに兵力を集めているのか両軍共に気になる所だが、それだけの規模が撃ち合う戦場など民間船はとてもじゃないが通行出来ない、セルルド星系を突っ切る船はかなり遠回りを強いられた、それが自分達より後に大群のように押し寄せているのだ、そして管理センターから即解放された理由でもあった。
積み下ろしを終えたら速攻で出ていけと言われる始末、スラスター全開でも怒られやしない、5隻が抜けると同時に次が間髪入れずに侵入、中型だけでも3千隻近い貨物船が列をなしていた。
「うほぉ・・・こりゃすげぇ・・・」
そりゃセンター長の尻尾が取れる訳だ・・・爬虫類族は緊張や恐怖などと言った極度なストレスを受けると、逃走本能が働いて尻尾を切り離す体質がある・・・だが安心してほしい、一カ月くらいすれば元通りだ。ちなみに獣人族と巨人族はそれを食べるので切り離された尻尾は高級食材として出回る。ある種の人体売買のようだが、爬虫類族にとっては処分に困るゴミなので町の至る所に切れた尻尾を売る売却ステーションがある。ちょっとしたお小遣いにこそなるが、長ければ長いほど情緒が安定して居る人として信頼される為、余程の貧乏人で無い限り、自分で切って売る事もしないようだ。
途中でG-8000に追いつくと海賊の墓場へ、予定通りランスロットが牽引の為の準備をしていた。
「ER-3000Cじゃないか!現行型だろ?」
「良いだろ?開けられた穴も少ない、エンジンは・・・旧式にグレードダウンの他無いが、中さえ清掃すればうちの主力待ったなしだ、ちなみにサリマン運輸の元所有物、廃船処理も何年か前に俺がやった奴だ」
「と言う事は、あんたにとっちゃ顔見知りか?」
「・・・まぁな?聞いた時は残念でならなかったよ、サリマン運輸で初めて沈められた船だ、乗員は全員海賊に殺された・・・それで社長のサリマンはこの星系に見切りを付け始めたんだ・・・だが安心しろ、サリマン時代とは違って今は最低でもランスロットをこの星系で護衛に付ける事が出来る。ZB8型フリーゲートまで投入したら海賊なんて絶対寄り付かなくなるぜ?しかも乗員は徴兵食らった雑魚とはいえ訓練を受けた元帝国軍人だ、海賊ごときなんかひと捻りさ!」
「その帝国軍人を野放しにするフルジア王国軍も相当ヌルいんだけれども本当に良いのかしら?」
「そもそもフルジア王国はオヴィルツィッヒ帝国と戦争状態に無い!捕虜に出来ないんだ!だから帰る気が無ければ適当に仕事してもらって信用できるかを見定めてからビザ発行して移民として正式に受け入れられる事となる、その為の3年ルールがあるんだぜ?リーサちゃん」
「そうだけれども・・・ZB8型フリーゲートをそもそも民間で使って言い訳?田舎のポンコツフリーゲートの比にならない火力よ?」
「さっきも言った通り戦争状態に無いから王国軍は鹵獲艦として使えない、なんなら運用する人間自体がそもそも足らない・・・それと運用を始めた時点で真っ当な理由でも無い限り帝国とは必ず揉めるはずだ、そこで絶対に戦争に発展しかねない」
「対エマンクリシット皇国用の予備戦力と言い張れば別に良くないかしら?」
「たかだかフリーゲート揃えた所で銀河3大派閥の一つに田舎のポンコツ国家が叶う訳ねーだろ?そもそも部品も正規輸入は不可能となっちゃ、正規軍が保守できる船でもない、それを言えばうちもそうだが、買えない部品なんてその辺から拾ってくればいい話だ、それに民間警備会社は大体PC-800を使ってる、変わらねぇよ、全部復活させたきゃエンジンかジェネレーターを戦場からサルベージしてきな!帝国軍の整備士もやる気だぜ?仕事が無くて暇そうだしな?」
「そんな事して本当に良いのかしら?」
「法律通り登録して運用すれば何も言われんさ!さっさとアンカー垂らせ!引っ張るぞ!」
「・・・了解」
全ての船を配置に付ける。しかし、こんな船をサルベージしても星系警察はやはり来ない。事業の一環として認知でもされているのか、見て見ぬふりをしているだけなのかは分からないが、ER-3000Cが工場に到着すれば余程仕事が無いのか帝国軍の整備士が全出動で修理を始めてくれる。
それから一週間、海賊船は2隻増え、継ぎ接ぎ中型貨物船1隻と念願のER-3000Cがついに就航、久しぶりの大型貨物船にステージアコロニーの港は歓喜のあまり就航式典まで盛大にしてくれた。そしてステージアコロニーで大きなニュースとなったが、この船はこの物流混乱の元凶であるサリマン運輸の貨物船である。
「・・・海賊の襲撃を受けた船が戻って来た・・・か・・・船の経歴まで公開したのか?」
「当たり前だ、多少はサリマンに仕返ししたくてな?ついでにアイツもフルジア王国でトップニュースを飾った事がある難破船だ」
「・・・ま、流石にサリマン運輸の創立自体は戦後、古い事件のアーカイブもマスコミには残ってるか」
とりあえずLコンテナでミチミチの大型ドックでテープカット、港湾の偉い人のありがたいお話を聞き流している・・・マスコミは誰一人としてちゃんと聞いてい無さそう。
「・・・うちの連中も馴染み深かった船だが港湾の連中とも顔見知りだったんだぜ?」
「ま、港湾局長の話を効いてる限りじゃ確かに一部は複雑な気持ちを抱えていそうだ」
・・・だがER-3000C1隻程度で増える貨物量は相殺できる訳が無い、大型貨物は中型貨物の比にならない滞納率なのである。
もちろん港湾局長からも700隻ぐらい調達して来い!今すぐに!と言う内容のスピーチをちゃっかり混ぜ込まれた始末だ、整備工場の事務所に戻ってもルーガ達はマスビダ星系の星系マップを開いてもっと損傷が酷いER-2000Cを6隻くらい引っ張る計画を始めている・・・海賊船同様に部品取りから修繕するつもりだろう。
・・・だが、港湾から無茶無謀を言われるのだから、他からも勿論無茶無謀を言われてしまっている。
「お願いします!フルジア王国の為にもどうか!」
「貴社からはうちは大儲けしてるように見えるかも知れませんが、まだ中型貨物船を中古で購入できる資金もないんですよ」
目の前にはER-3000Cのカタログ、エルーラ社の営業が新品のER-3000C発注してくれとせがんで来るようになったのだ。
「そこをなんとか!お安くします!ローンでもいかがですか?ルーガさんからもお願いしますよ!」
「うーん、悪いが、前の顧客と違って今の顧客は同業他社とは違い、金も無いのに港からも無理やり船を増やすよう言われてる身なんだ。部品こそサリマンの時のように純正を買っても良いが、丸々は無理だ、そもそも今の状況じゃ新品の小型機のローン審査にすら通らない、今月の見積り利益が540万クレジット、先月の売上が15万クレジットだぞ?去年の利益なんか無い!ER-3000Cは中古でも3千億はする。おまけにうちの主要取り扱い品目は規制で単価に上限が掛かった優先度の高い生活必需品ばかりだ、まだあんたらの顧客になるにはほど遠い客だぜ?もう少し後にしてくれ」
「ですが!わが社もスペースデプリから再生されると!」
「だから港がそうしなきゃいけない状況に陥ってるからそうしてるだけだ!弱小が無理に帝国軍の兵士の雇用と港に溢れる貨物を裁かなければならない責務を勝手に負わされてるんだ!ER-2000Cの内装パネルとかエンジンとか買ってやるから今日は帰ってくれ!来年には中型新品クラスのローン審査に通るくらいにはなるからよ!つかフィルターとか消耗品の新品はあんたら通してるだろ!?うちの客の船の消耗品は昔から皆メーカー純製品だぞ?!サードパーティ製は使ってない!」
「中型じゃ困るんです!」
「中型ごときじゃ利益が全然出ないのも良く分かる!だが無理な物は無理だ!来年まで他の星系で売っててくれ!なんなら採算度返しで廃船再生を手伝ってくれても良いんだぞ?うちの工場は廃船再生はボランティア!うちの整備工場も出てきた金属スクラップで飯食ってるだけだ!」
「わが社は造船会社ですよ!?整備業など請け負っておりません!!」
「んなもん知っとるわ!!」
ルーガはエルーラ社の営業を事務所から追い出す、そして椅子に座って長い溜息。
「・・・悪いな、エルーラはサリマン運輸が大口顧客だったんだ、当然うちにもサプライ関係で太いパイプラインがある、勿論うちとは違って他星系でもシェアがあるからサリマンが何処かへ行っても、サリマンには売れるし他星系の業者にも売り込める、マスビダ星系にもB型L型はゴロゴロ居るんだがC型を現状国内で運用しているのは今うちだけなんだ、そうなってくると不人気機種と見られて特に帝国領内での売上も落ちる、昔から三流扱いのER-3000Cはモデル存続の危機にあるんだ、銀河目線でも悪くも無いが無難中の無難で長所も特に無いからな?」
「まだ買えないな・・・鉱石船と液体ガス船は精製工場をそう簡単に移転出来ないしなぁ・・・」
「当たり前だ、まずその手は資源枯渇が明確化して初めて移転計画が出始める、経済なんてほとんど絡まん・・・ま、エルーラの営業はしばらくはよく来るようになるぜ?サリマンの時もそうだった、1隻買ったら2隻目、3隻目の営業がポンポン来る・・・俺が追い払っとく」
「頼む」
「それと・・・来週、ランスロットでマスビダ星系警察本部にちょっと行ってきてくれ」
「なんでだ?」
「海賊狩りの表彰だ、うちのサルベージ船団がG-8000Cの護衛で飛んでるのは知ってるだろ?そして、やけに小綺麗な海賊船がうちのヤードに増えてるのも知ってるな?」
「確かに疑問に思ってたが・・・」
「今、サルベージ船団の正体は海賊の格好をした帝国軍だ、星系警察より訓練された火器管制、移乗攻撃兵、おまけにZB8型フリーゲートには軍用ライフルがある。本来は民間人が所持出来ない代物だが、何をトチ狂ったか、星系警察はうちだけ所持を黙認してやがる。引き渡す用意は出来ているんだが一向に引き取りに来やしない」
「王国軍は持って行かなかったのか?」
「勿論さ、だって当時は足の踏み場も無い、武装解除も港に放り込まれた奴らだけだった。一応国にお伺いを立てては見たんだが防衛省にそんな暇は無いって言われてそのままさ」
「そんなもん食料持ってくる補給艦で回収出来るだろ?ここに居る人間が全員牙を向いても知らないぞ?」
「まぁ、その心配も無いだろ?どうせ大半が強引に徴兵されただけだ。その証拠にランスロットを任せてるドーベック大佐は帝国軍でもそこそこのベテランでね、うちの在庫を気にしながらエンジンかジェネレーターどちらか片方だけぶっ壊して星系警察のステーションに引っ張りつつ降伏させる戦いが得意、悪を裁く事に生きがいを感じているくらいの人になっている。おかげで海賊の検挙件数は去年の10倍、極悪犯だって生け捕りだ、報酬として押収するはずの船を貰って来るって訳さ」
「こりゃ星系警察からヘッドハンティングも有望だな」
「まあ、3年は無理だろう・・・だが、船の維持費で赤字に転じている。取り締まりや警備を武装が強力なZB8型フリーゲートへ転換してサルベージ船団を減らさなければならない。今日はセルルド星系でエンジンだけでも拾ってきてくれ、持ってきてくれれば直ぐにでも交換すると帝国軍の整備の連中は言っている」
「いつからうちは民間警備事業を始めた?」
「中型以上の貨物船を運用し始めたらいずれ直面する問題だ。あいにくうちでは面倒見ていなかったが、サリマンも子会社で持ってたよ・・・勿論民間人だから実力もたかが知れてたがな?ひとまずZB8型フリーゲートのエンジンを頼む、もう居座っていた住人はうちの周りの修理待ちの廃船住居に移っている」
「・・・了解」
コーヒーを飲み干して事務所の椅子を立ち上がる。そしてオーエンスへ、操船免許育成は一応続けているが、持ってる人がかなり余っている。だが操縦したい子の希望は叶えてやるべきだ。今日もオーエンスには操縦士見習いが居る。ヴァルカンはBBY-102とペアでもう独り立ち、ホーネットも来週にはFGA-563と組ませて走らせる。営業ついでにゴミを拾ってくるのは継ぎ接ぎ貨物船OSA-324と海賊船SSZ-222 ドーファン、そしてオーエンスの役目になる。寄り道運転を4隻はしなくなるので多少稼ぎはプラスになるものの、海賊船をどんどん営業運転させないといずれ破産を迎えるので迅速に物事を決断しないといけない・・・船が増えすぎだ!
ー銀河の常識ー
・エマンクリシット皇国
居住可能惑星:母星のポルテニウムなど約300惑星以上
巨人族系国家の代表国家、宗教に対する強い信仰心と大国主義が特徴の国家、銀河経済と権力、工業力や軍事力どれに置いても中心と言える国で領有星系は約400星系、配下の国家は236国も存在する。
主なコロニー
メルガバ神殿要塞など数億コロニー




