銀世界の黒い影
恵は銀世界の中を歩いていた。家は峠道の先にある。いつもだったら、電車で帰る。だが、今日はあまりの大雪で電車が運休した。だけど、子供たちが心配しているから、帰らないと。恵はつらいけれど、峠道を歩かざるを得なかった。恵はこの峠道を通った事がなかった。昔から、この峠道には言い伝えがあり、大雪の日に行くと、生きて帰ってこれないと言われている。それほど、危険な峠だと言われている。だけど進まなければ。
「はぁ・・・」
恵は白い息を吐いた。とても寒い。だけど家に帰るためには進まなければ。家では子供たちが待っている。そう考えると、進む勇気が出てくる。恵は目の前を見た。その先には峠道がある。あの峠道は、大雪の日に通ってはいけないと言われている。だけど、越えなければ家に帰れない。
「寒い・・・」
恵は凍えていた。お腹と足元にカイロを付けても寒い。それほど寒いのだ。早く家に帰って、暖房で暖まりたい。あったかいスープが飲みたい。でも、それはいつになるんだろう。
「早く帰らんと・・・」
恵は峠道に差し掛かった。いよいよここからが本番だ。この峠は決して険しくはない。ただ、大雪の日に行ったら生きて帰ってこれないと言っているぐらいだ。恵は自信気だ。この峠のどこが、生きて帰ってこれないのか? 恵はそんな事を信じなかった。絶対に越えられるさ。そして、家に帰れるさ。
「あの峠を越えてっと・・・」
恵は登り始めた。すごい吹雪だ。前があまり見えない。とても厳しいな。噂に聞いていたけど、こんなに厳しいとは。だから、生きて帰ってこれないんだろうか? でも、こんな吹雪は序の口だ。もっともっと大変な時もある。そんな日を何度も経験している。私には全く問題ないだろう。
「すごい吹雪・・・」
恵は歩くたびに雪の冷たさが身に染みた。何度も経験しているとはいえ、これは凍える。カイロでも何とかできないぐらいだ。
「寒いな・・・」
恵は暖かい我が家の事を考えた。家に帰れば、子供たちが待っている。部屋では暖房がついている。そんな中でくつろぎたいな。
「早く帰って温まりたい・・・」
恵はあきれていた。どうしてこんな時に雪で運休なんだよ。しっかりと除雪してほしいよ。家に帰るのがこんなんじゃないか。通年安心して走れるように管理してほしいよ。
「なんでこんな時に運休なんだよ・・・」
ふと、恵は思った。この峠は大雪の日に越えようとすると、行方不明になる人が多い。そんなに高くないのに、どうしてだろう。あまりにもおかしい。だけど、進まなければ。
「この峠、行方不明が多いんだよな・・・」
歩くたびに、恵は不安になってきた。それは本当なんだろうか? どう見ても険しくないのに。天気が変わりやすいんだろうか? いや、そんな事はないだろう。
「心配だな・・・」
と、恵は何かの気配を感じた。後ろから何かがやって来ているようだ。
「えっ!?」
恵は振り向いた。だが、そこには誰もいない。おかしいな。誰かがいたような気がするんだけど。それとも、気のせいだろうか?
「誰もいないか・・・」
恵は再び歩き出した。だが、恵はどこか落ち着きがない。後ろに誰かがいるような気がしてしょうがないのだ。峠に入ってから、そんな感じだ。これはいったい、どういう事だろうか? 恵は首をかしげた。
「怖いな・・・」
再び恵は何かの気配を感じた。恵はまた振り向いた。だが、やっぱりそこには誰もいない。おかしいな。誰かがずっと後ろを歩いているような気がしてしょうがないんだが。
「あれっ!?」
恵は首をかしげた。気のせいだろうか? 疲れているから、いなくても何かの気配を感じるんだろう。
「やっぱりいないな・・・。早く帰ろう・・・」
恵は前を向いた。峠の頂上まではあと少しだ。頑張ろう。あの峠の頂上まではもう程近くだ。ようやく中間地点を過ぎた所だ。気合を入れて後半に向かおう。
「ん?」
恵は振り向いた。そこには黒い巨人がいる。どうして峠にこんなのがいるんだろうか? 巨人はこん棒を持って、恵に襲い掛かって来た。恵は呆然とその様子を見ていた。
「ギャーーーーーーーーー!」
恵はこん棒で叩かれた。恵は痛がった。だが、巨人は叩くのをやめない。
「痛い痛い!」
そして、恵は黒い巨人にボコボコにされ、息絶えた。
その後、恵が行方不明になった事は、会社だけではなく、出身校でも話題になったという。
誰かのうわさによると、この峠を大雪の日に越えようとすると、黒い巨人に襲われるという。




