常磐の香りに想いを馳せて
いらっしゃいませ。
カタンコトン…カタンコトン……………
比較的軽い通過音と共に窓の外の景色が後ろに飛び去ってゆく。
最近の通勤電車にしては珍しい、ボックス席の背もたれに身体を預けながらぼんやりと外を眺め、明るい青空を目に映す。
都内の人だかりを抜けて、運良く座れてから早くも30分が経とうとしているが、すでに郊外すらも出ようとしていた。
低い建物の上から覗いている青空と雲が、妙にくっきりと目に入ってくる。
ふっと列車が速度を落とし始める。
目の前の景色も徐々にゆっくりになっていって、すーっとホームに入線する。
人がいないのか、ホームの上は不気味なほどに綺麗だった。
無意識に顔を戻してふと車内を見ると、ほとんど人はいない。
ガチャッ、ピロン、ピロン……
ドアが開いて、涼やかな青い風が車内に流れ込んでくる。
かすかに蕎麦の香りと、草の香りとが混ざったような香りのする独特なその空気は、瞬間的に私を昔に引き戻した。
土のついたプラスチックケース片手に草むらを、畑を駆け回り、はたと気付いたように地面の何かに飛びつく。
その瞬間の草と、土と、水の香りが再現されたような気がした。
あの頃の幼心と童心はもう二度と帰ってこないだろう、と少し惜しく思いながらも、どこか戻ってきて欲しくないな、とも思っていた。
だって、意味もなくただ生きる、遊ぶことを強制されるのだから。
そんな長い想いに浸っていると、列車は気づけば発車していた。
青いラインを模った長編成の列車がゆっくりとホームを滑り出てゆく。
そして、そのまま常磐の海を臨むまで、走ってゆくのだった。
最近こういうの多いですがご勘弁ください
二つの方の続きも引き続き執筆しておりますので……
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