第22話 合同練習【6月】
今日は音大同級生3人を集めて初めての練習。
すぐに返信をくれた3人以外は集まらなかった。
昨日部員たちにはレッスンの話はしてあるが、どんな人が来るのかとみんな緊張していた。
かくいう俺も、3人とはほぼ話したことがないから初対面のようなものだ。
「おはよー!」
「亘!久しぶりだなー」
「本当に吹部の顧問なんだ!」
俺が校門の前で待っていると、やっぱり知らない顔。
向こうはなぜそんなに親しげに話しかけてくるのか。
音大時代、俺は結構周りと距離を置いていたし、心当たりがない。
「今日は来てくれてありがとう。よろしく頼む」
「全然いいよ!高校生と一緒にできる機会なんてそうそうないもんね!」
「おう。俺は会社の楽団に入ってるけど、活動が微妙だったから逆に楽しみ!」
「私は楽団のオーディション落ちちゃって普通の会社員だから、また一緒に音楽できるの嬉しくて!」
みんなそれぞれ事情があるんだな。
やりたい、と名乗り出てくれて俺は素直に嬉しかった。
こいつらとは仲良くなれそうだ。
とりあえず部室まで3人を案内した。
部員たちはもう待ち構えている。
「じゃあミーティング始めるぞ」
「はい!よろしくお願いします!」
俺が3人を連れて部室に入ると、空気が一気に変わった。
憧れの存在を見るような眼差しを向けられている。
そりゃそうか、音大卒業生って彼女たちからするとそういうものだよな。
「今日は前から話していた通り、俺の音大の同級生たちに来てもらった。左から順に紹介する。フルート担当の金子、金管担当の結城、クラとサックス担当の小野里だ」
「よろしくお願いします!!」
部員たちはざわざわしながらも、深く一礼した。
指導者がいるということが本当にありがたいんだろうな。
俺は教わるのが嫌いだったけど、彼女たちの実力の底上げには専門の指導者が必要だと思った。
「午前中はパートごとに分かれてレッスンをつけてもらって、午後は『全体合奏』の仕上がりを確認する予定だ。聞きたいことはちゃんと聞いて、技術を盗むつもりで練習するように!」
「はい!!」
俺は俺で吉川にレッスンしないといけない。
でも今は指導者が俺一人ではないから本当に頼もしい。
ミーティングが終わるとみんな一目散に練習へ向かった。




