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機能喪失

診察が終り、待合室には誰もいなくなった。


「こちらへどうぞ。」




「落ち着いて話ができるように、時間外になってしまいました。どうぞ、そちらに座ってください。」


「ありがとうございます。話は、この間の検査結果でしょうか?」


「そうです、コーヒーを飲みながらでも話をしましょうか。検査は、どうでしたか?」


「皆さん良くしてくださいました、感謝しています。検査協力だからと無料にしてくださったり、検査の後は、家まで送ってもらったんです。」


「それは良かったですね。検査協力・・それで、わたしには論文の下書きを送ってよこしたのか。」


「なにか不都合でも?」


「いや、あいつらしいかなと。検査結果を論文にして出すようです。」


「ええ、そう言われました。名前や個人情報が分からない条件で、承諾しましたが・・いけなかったでしょうか?」


「いえ、そうであれば問題はないのです。本来は、検査結果をまとめてよこすのですが、あいつは・・。」


「はぁ、・・それで、結果は?」


「すみません、愚痴になりましたか。結果ですが・・脳に問題は無いのですが、1項目だけ・・」


「1項目?」


「ええ、どう説明したらいいか・・一言で言ってしまえば『脳の制御不全』となるのですが。例を挙げて説明しましょう。車は、運転されますか?」


「はい、いつも軽自動車を使っています。」


「では、F1カーはご存知でしょうか。」


「カーレースのとても速い車ですか?」


「そうです。想像してもらいたいのですが、この検査結果から・・お子さんは、軽自動車にF1のエンジンを載せた状態で生まれてきます。」


「え?軽自動車がF1カーになるという事ですか?」


「実際は、エンジンだけなので見た目は軽自動車となります。実際は、ありえないので想像でお願いします。


うまく説明できればいいのですが。通常運転している状態では、普通の軽自動車となります。そこに興味のある事が始まると、どちらのエンジンも100%で働き始め結果を出そうとします。ただ、軽自動車のエンジンは、長時間や高速思考など無理出来ないようにできています。脳の制御装置リミッターが働き、普段は力をセーブしているためです。この検査結果ですが、この制御装置が無いようなのです。興味のままに、際限なく性能を出し始めます。軽自動車が、市内を時速200kmで走っている。そんな状態が起こるのです。」


「そんな事が可能なのでしょうか?」


「軽自動車が、時速200kmを出すのはエンジンの性能があり無理ですが、可能な状態でもリミッターがあり出来ないようになっています。しかし、リミッターのないF1エンジンなら、その能力の限りの速度を出す事ができます。ただ、幾つもの実害が出てくるでしょう。


まず、思考用の血液が通常より多く必要となります。その結果、胎盤の異常血流や頭部の活性化による温度上昇が発生したと思われます。」


「それで・・」


「移動を伴わない思考だけの状態なら、頭部の異常だけで済むかもしれませんが、作業を伴いかつ、脳に負担のかかる思考をしていたなら、その状態異常は全身に及ぶかもしれません。」


「・・・」


「論文に書いてありましたが、この脳の機能喪失によりリミッターは、働きません。

リミッターが効きにくいとかの脳障害は前例があり、初めてのケースでないのですが。今回のリミッターが全く無いという事例は、今まで数える程しかありませんでした。

いつ脳の暴走が始まるのか、始まったらどう止めるのか、止まった後の身体への処置など問題がいくつもあります。

暴走をしない様に、常の生活で注意できればいいのでが、興味を持ち始めると、そちらに思考が集中しはじめます。あとは、周囲の人が暴走を止める方法を知っていて対処する事が必要です。」


「その、リミッターがない人は、どうなったのでしょうか?」


「成長する事無く、幼児で死亡しているようです。」


「そうですか・・・」


「そこで提案なのですが、・・今、お子さんが二人いらっしゃいますし、ご主人と相談されてはいかがでしょうか?ただ、時間はあまり残っていませんので・・」


「・・・・・・・、いえ。主人は、海外出張で戻ってきません。こちらの事は、全て任せてもらっています。ですから、このまま・・せっかく、私の子になるのですから。」

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