PROLOGUE
平凡な日常を生きていたローランド。
そんな彼の前に突如として非日常が現れる。
私の名前はローランド・パーマー。民間企業ガーランドの一社員であり、極々普通な男だ。
...あの日までは。
あれは何時頃の事だったか。私は良くオフィスで過ごす事が多く、あの日もまたオフィスで時間を潰していた。
良く仕事で使うボールを壁に投げていた時、ほんの一瞬、地面が揺れた様な感覚に陥った。かなり小さい揺れだった為、最初はただの小さな地震だと思っていたが、次第にその揺れは大きく成り始め、何分か経った頃には社内全体がまるでジェットコースターに乗っている様に揺れていた。
私は直ぐ様逃げようと足を動かした。
見た所殆どの社員は逃げ出し、後何人かの人が私と共に非常階段を降りていった。
私がいた階は六階。
その為すんなりと下に降りる事ができた。
しかし下に降りても尚揺れは収まらず、それどころかさっきよりも更に激しさが増すような気がした。
そんな事を考えていると、何も無いと思われた大きな草原の一部から、何か黒い液体の様なモノが噴き出している事に気付いた。
一瞬目の錯覚か何かと疑ったが、その黒い液体はどんどんと溢れていき、草原全体を真っ黒に染めていった。
そして揺れは最高潮に達し、それと同時に黒く染まった草原はまるで陥没したかの様に地面へと飲まれていき、揺れが収まる頃には野球場ぐらいはある大きな穴ができていた。
私は何度も目を擦り、これが疲れた脳が見せている幻なのでは無いかと疑った。
しかしどれだけ目を擦っても、どれだけ顔を叩いても、その光景が紛れもない現実であった事に気付いてしまった。
他の逃げ延びた同僚や上司もその穴に気づき、私と似たような反応を示した。
それから数時間が経過した。
私と他の人は駆けつけた救急隊と警察によって保護された。無論救急隊員や警察官達もその穴に気付いており、明らかなに異常なそれに呆気を取られながらも、何とか職務を全うしてくれた様だ。
それから私は自宅に帰る事を許可された。久々に全力で動いた私は、疲れた身体をベットまで動かし、そのまま眠る事にした。
私は目覚めた。
昨日おきた事は現実か。それを確かめる為私はテレビをつけた。いくつかのニュースチャンネルは、昨日突然に生まれたのあの大きな穴について話していた。しかし、あの黒い液体や真っ黒に染まった草原については触れず、全てのニュースには『地盤が崩れかけていた為におこった不幸な事故』として語られていた。
私は疑問に思いつつも、昨日おきた事は現実だったという事に、安堵か恐怖か、何にせよある種の安心感を感じたのだった。
「あのもしもし?」
私は会社に電話した。
「...なるほど、分かりました...ではまた」
いくつか話をされたが、要約すれば『三ヶ月は休め、それまでは何処かで休暇でも過ごしたらどうか』と言われた。
まぁ当然かといえば当然だが、今一番気になるのはあの穴についてだ。
何故かは分からないが、あの時あの穴から溢れでてきた黒い液体に、私は妙に惹かれていた。
あれは何だったのか。あの光景は一体...
そんな事を考えていると、玄関のドアを小気味よく叩く音が聞こえた。
「どうぞ」
開けられたドアの前には、上司のクレメンスが立っていた。
「やぁ...少し話をしたいんだが...今良いかな?」
続くかどうかは正直分かりません。
好評なら続けていきたいと思います。