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第3話 新たな家族と闘いの師匠

『俺は戦神、お前の……父親だ』


 ゴブリンとの死闘の最中に話しかけてきた声の主は、なんと自分を俺の父親だと言ってきた。


「って何で!?」


 俺の父親はちゃんと人間だよ!? まぁ死んでるけど。


『何でってそりゃあお前アレだよ』


 アレってなんだよ。


『だからさぁ、察しろよ』


「いやいや、何を察白って言うんですか。突然頭の中に話しかけてこられて父親とか言われても訳わかんないですって。何で俺の父親を名乗るんです!?」


『いやだからな、アレだよアレ。お前の母親が女神だからだよ!』


「え?」


 女神って俺が転生する時にうっかり母さん呼ばわりしたせいで俺を息子扱いしたあの女神様?


『そう! その彼女!』


「はぁ」


『お前が彼女の息子なら、それはつまり俺の息子も同然、いや俺の息子って事だ!』


「はぁ」


 ……なんか、分かって来たぞ。

 つまりアレだ。この自称父親は女神様の事が好きだから、好きな人の子供は自分にとっても子供だって言いたいんだな。その行動がすっげぇ言葉にするのが躊躇われるアレだけど。


『アレとか言うなよ! ちゃんと俺からも『寵愛』を与えてやったんだぞ!』


「寵愛?」


 って確か、女神様が転生前の俺に与えたアレの事か。


『そうだ。神が人に与える最高位の加護だ』


 へー、なんか凄いんだな。


「あのー、その寵愛ってどういうものなんですか?」


『それなら先ほどの戦いでお前は体験した筈だ』


「さっきの戦いで?」


 一体いつのことだ?


『お前がゴブリンに止めを刺されそうになった時だ』


 ゴブリンに殺されそうになった時……というと、武器を奪われ地面に転がってなすすべなく殺されそうになったあの時か。

 たしかあの時は死にたくない思いで必死で立ち上がってゴブリンにタックルをかまして……


『そうだ。その時に女神の寵愛が発動し、お前は力を振り絞る事が出来たんだ』


 言われてみればあの時、急に額が熱くなって、体の痛みとかが消えて動くようになったんだよな。


「あれってどんな力だったんですか?」


 もしかしてアレを意図的に使えるようになれば俺はもっと強くなるんだろうか?


『女神の寵愛は……』


「女神様の加護は?」


『『生存』の寵愛だな。最後まで諦めず力を振り絞り、限界ギリギリ踏ん張った時に最後の一押しを与えてくれる加護だ』


「……え?」


 何それ、なんかすっごく地味じゃない?


『馬鹿を言え! 無から有を生み出す加護だぞ! 体力が完全に尽きた時、魔力を完全に使い切った時、そんな時に無い筈の力が湧き出る事がどれだけありがたいと思っている! 現にお前はそのおかげで生き残ったんだぞ』


「あ、はい、すんません」


 どうやら女神様の寵愛は俺が思っている以上にありがたい力っぽかった。


『ふっ、理解したようだな』


 うん、あの時に沸き上がった力のお陰で助かったのなら、感謝の言葉しかないもんな。


『ところで父……神様の寵愛ってのはどういうものなんですか?』


 女神様の力が限界まで諦めない事で力を与えてくれるものなら、この神様の与えてくれる力もありがたいものかもしれない。


『うむ、俺の寵愛は……』


「寵愛は?」


『『戦闘』だ!』


 おお! すっごく戦いに役立ちそう!


『具体的には戦いにおいて敵に怯むことなく挑むことが出来るものだ』


「……え? なんか凄く普通じゃないですか?」


 これのどこが特別な加護なんだ?


『何を言う! ろくに戦った事のない素人が敵を前にして冷静に戦えるか? 緊張してヘマをしないでいられるか? 俺の加護は特に新兵の生存率を大幅に上げるありがたい加護なんだぞ! 戦闘訓練を受けた事のないお前がゴブリンの攻撃を回避できたり、人型をしたゴブリンに躊躇いなく攻撃出来たのも俺の加護のおかげなんだぞ』


「な、成程ぉ」


 確かにそう言われると肌の色や細かい部分以外は人間と似通っているゴブリン相手に躊躇いなく攻撃出来たかと言われると怪しいところだ。


「あ、でも俺最初の攻撃の時慌てて弓を撃とうとして失敗しちゃったんですけど、あれは寵愛の力で何とかならなかったんですか?」


『……俺の寵愛も万能じゃない。あの時はお前が躊躇いなく迎撃をする選択が出来た事が寵愛の効果だ。経験不足による選択ミスまでは対応しきれん。まぁお前が心身ともに鍛え、神を敬う信仰心を深くし、我々神々ともっと深いつながりが出来たら寵愛の効果も少しは増すかもしれんがな』


 へぇ、寵愛って効果が高くなるんだ。


『だが、加護の類はあくまでささやかな祝福にすぎん。お前達人間一人一人が鍛え学び成長する事こそが大事なのだ』


「は、はい!」


 確かに、神様から与えられたチートパワーで強くなってもそれを使いこなせなきゃ借り物の力でイキったあげく死にかねないな。


『そこでだ、お前に良い話をしてやろう』


「良い話?」


 一転して楽し気な口調になる神様。


『まず俺の事は父上と呼べ』


「えー」


『えーじゃない。俺の寵愛を受けたお前は間違いなく俺の息子と呼んで差し支えない存在なんだからな』


 いや、知らないうちに押し付けられたんですけど。


『そのおかげで助かったんだろうが」


「あ、はい。ありがとうございますええと、父上?」


『うむ!』


 まったくもってその通りなので、ここは下手に出ておく。

 父上呼ばわりされた神様はご満悦な声で頷く。


『という訳でだ、我が息子にはこの世界で生きる為に必要な力を授けてやろう』


「力を授ける……ですか?」


 でもさっき神が与える加護はささやかなものって……


『そう、俺がお前に寵愛を与えた本当の理由がそれだ。寵愛を与える事でお前に神託という形で言葉を使えるようにしたのだ!』


 なるほど、こうして神様……


『父上だ』


 父上と会話できるのも最上級の加護である寵愛の力って訳だ。


『そうだ! そしてこの繋がりを使って俺がお前に戦い方を教えてやろう!』


「戦い方を!?」


『そうだ! 戦いの神である俺が手ずからお前を鍛えてやるのだ!』


「お、おお……!?」


 そ、それって凄い事なんじゃないの!? だって戦いの神だよ。つまりは世界一の戦いの専門家が先生になってくれるって事じゃん。

 単純に最高レベルの教育を受けれるってことだろ!?


『はっはっはっ、その通りだ。さぁ俺の提案を受け入れるか?』


「はい! お願いします!」


 考えるまでもなかった。だって神様に直接学べるんだぜ。絶対この世界の誰に教わるよりも強くなれるのは間違いない。

 なにせ、ついさっき死にかけたくらいだしな。

 この世界で生きていくためには、強くなるに越したことはない。


「よろしくお願いします師匠!」


『違う! 父上だ!』


「よろしくお願いします父上!」


『うむ! 任せるがよい息子よ!』


 こうして、俺は戦いの神様から直々に戦い方を学ぶことになったのだった。

 ただ、この時の俺はまだ気づいていなかった。

 この選択が、俺を地獄のごとき環境に引きずり込むとんでもない選択だったことに。

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