最終話 少年、地方公務騎士になる
「遂にこの日が来たかぁ」
騎士学校に入学して3年、遂に俺達は卒業の日を迎えた。
「騎士試験も無事に合格したし、土産を買ったら村に戻るかぁ」
王都で開催された騎士試験は大変だった。
試験を受けるだけの筈が道中で大事件に巻き込まれ、やっと王都に到着したと思ったら王都でも事件に巻き込まれて試験どころではなかったからだ。
それでもなんとか諦めずに試験を受けて無事合格をつかみ取ったのである。
『あの戦いは見事だったぞ。女神の最期まで諦めない時に最後の一欠けらの力を授ける加護が見事に輝いたな』
「まぁ、そうですね」
お陰で事件も試験もどちらも切り抜けたのだから、女神様には感謝しかない。
「でもこれで漸く村に帰る事が出来ますよ」
試験に受かった俺は無事に故郷の村の駐在騎士に任命された。
村の周囲は大したことない魔物ばかりで、入学する前の俺ならいざ知らず、騎士学校で教師と父上達の二重の特訓を受けた今の俺なら敵じゃない。
この三年で体の方もすっかり成長したしな。
「弱い魔物しかいない土地でゆったり公務員ライフ。唯一の問題は王都の娯楽を知ってしまったことぐらいだけど、まぁそこはたまに町に出て本でも買えばいいか」
娯楽が溢れた前世の記憶がある俺だが、この世界はやらなきゃいけない事が沢山あるからそこまで暇を持て余す事はない。
寧ろ森での狩りが生活と娯楽が一つになったようなもんだ。
「魔法で楽も出来るし、昔は狩りが貴族の娯楽だったのも納得だわ」
ついでに言うと狩りは肉が手に入るだけでなく金になるしな。
「それにしても在学中は本当に厄介事が起きまくったなぁ」
騎士学校時代の事を思い出せば、様々な厄介事が脳裏に浮かび上がる。
俺を完全に敵認定したレダックが事あるごとに何かしてきたり、俺をライバル視しているバレンからは何度も挑戦を受けたりした。
更に騎士学校とは関係ない所でも様々な事件に巻き込まれ、俺達の学年は歴代でも類を見ないほど騒動を起こしていると先生が頭を抱えていたっけ。
いや俺達が悪いわけじゃないよ。事件の方からやって来たんだから。
「そのおかげでちょっとやそっとじゃ動じない耐性が出来たのは皮肉というかなんというか」
「キオーッ」
と、卒業の感慨にふけっていたらアリアナがやって来た。
「友達との別れは良いのか?」
なんだかんだ言ってアリアナも三年間の学校生活で女生徒達と仲良くなっていたようで、向こうを見れば女生徒達があつまっている。
「うん、済ませて来た。さ、村に帰ろう」
「速い速い。せっかく故郷に帰るんだから色々土産を買わないとだろ。アリアナは村大好きっ子だなぁ」
「村はどうでもいいけどキオと一緒にいるのが大事」
いやどうでもよくないだろ、俺達の故郷だぞ。
変わったと言えばアリアナの変化が一番大事件だったんだよなぁ。というのも……
「お前が騎士になるのを止めるって言い出した時はびっくりしたよなぁ」
そう、アリアナは騎士にならなかった。
というのも騎士は基本的に村に一人しか配属できないからだ。
予算の問題もあってそういうルールがある事が王都での試験の時に発覚し、それを知った瞬間アリアナは騎士になるのを止めると言い出した。
あれは本当に驚いた。理由を聞いたら、
「キオは村の騎士になるから一緒にいる為に辞める」
ときたもんだ。
まぁ実際俺は平和な生活の為に村に配属される事を望んでいたから、そうなるとアリアナが騎士になったら配属先の取り合いかどっちかが別の配属先に行くしかない。
アリアナはそれが嫌だと言って騎士を止めて従者になるって言い出したんだよな。
「あれに一番ショックを受けてたのは先生達だったなぁ。わが校始まって以来の優秀な女生徒が土壇場で騎士になるのを止めるとか言い出したもんだから、考え直せってめちゃくちゃ必死になって説得していたくらいだ。
学校としても優秀な生徒を輩出したという実績が出来る所だったのに、それがパーになったんだから。
しかも腕の立つ女性騎士は高位の貴族女性の護衛としてどこも喉から手が出るほど欲しがる人材だから先生達は必死だった。
結局アリアナは先生達の説得を聞き入れず試験を途中自体しちゃったけど。
あの時の先生達は本当に落ち込んでたなぁ。
「キオと一緒にいれないのなら騎士になる意味なんてないから」
ホントにコイツは俺にべったりだなぁ。
まぁ幾ら強いとはいえ、女の子が危険もある外の世界で知り合いもおらず一人働くというのは不安にもなるか。
「さて、それじゃあ土産を買って村に帰るか!」
「うん!」
こうして俺の異世界で野学生生活は終わりを迎えた。
けれど俺の騎士生活はこれからの方が長い。
「さーて、次の目標は寿命を全うするまで健康に生き抜いて大往生することかな!」
これにてキオの物語は完結となります。
皆さま最後までお付き合いいただきありがとうございました。




