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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第28話 野外訓練の結果

「よし、全員集まったな!」


 野外訓練の集合時間になった事で俺達は集合場所に戻ってくる。


「うわっ!?」


「何だアイツ、血まみれだぞ!?」


 他のチームの生徒達が驚くのも無理はない。俺達のチームのメンバーであるレダックが一人だけ血まみれだったからだ。


「くっ」


 好奇の視線を受け顔を屈辱に歪ませるレダック。


「一体どんな化け物と戦ったあんなに血まみれになるんだ?」


「とんでもない激戦を繰り広げて来たって事か。流石一番遠くの場所に行くように命じられた連中だけあるぜ……」


 あれ? なんか勘違いされてる?


「っ! そう、そうなのだよ! 私は恐るべき魔物を相手に激戦を「単に解体で血まみれになっただけ」


 周囲の反応を受けて好機と見たレダックが即座に自分の戦い振りを自慢しようとしたのだが、即座にアリアナのキャンセルを喰らう。


「私達だけが戦ってこの人は魔物の解体に専念してた。一人だけ戦わずに。あと血まみれなのは解体が下手くそ過ぎただけ」


 しかも死体蹴りまでされてる。


「なんだよアイツ、あれだけ偉そうなことを言っておきながら自分は戦わなかったのかよ」


 実際には戦えなかっただけなんだけどね。

 レダックが解体している間に新しい魔物が血の匂いに引き寄せられてやって来て、彼が倒す前に解体する魔物が増えてしまったのだ。

 その結果レダックは焦って解体が雑になり、更に血まみれになってしまったというね。


「しかも解体であそこまで血まみれになるとか下手過ぎだろ。あれじゃ解体した素材もボロボロになってんじゃねぇのか?」


 それも当たり。レダックの解体の腕はお世辞にも上手いとは言えず、本来の買取価格を大きく下回るであろう出来だった。


「騎士を目指す癖に自分じゃ戦わずに雑用をして成果のおこぼれを貰うとか。一体どっちが卑怯な真似をしてるんだか」


「あれでバルマイン伯爵家の長男なんだろ? あの家も落ち目なんじゃないか?」


「いや、現在の当主は有能らしいぞ。ただ息子には受け継がれなかったって話だろ」


「ああ、そういう」


 そしてレダックの評判は家の評判にも直結し、結果バルマイン伯爵家の評判まで下がってしまったのだった。


「ち、違うんだー!」


「あれなら勝てないとしても魔物に挑んだ方が恥は晒さずにすんだわね」


「そうね、最悪の場合でも陰から見張っていた筈の教官達が助けてくれたでしょうし」


 と、ミレディとリスタもレダックの醜態に呆れた顔を見せる。


「でも気を付けないとね。怪しい噂を真に受けて馬鹿な事をしたら、私達がああなっていたかもしれないんだもの」


 そして最後には反面教師としてああはなるまいとまで言われてしまうレダック。

 うーん、ここまで来るとちょっとだけ憐れになって来たな。まぁ助け舟は出さないけど。


 ◆


「では今回の授業の成績を貼り出す」


 学園に戻ってくると、先生がチームの数の紙を壁に張り出す。


「ええ? こんなのがあるなんて兄さんから聞いてませんよ!?」


 それを見た一部の生徒が初耳だと声を上げる。

 どうやら知り合いに卒業生が居た生徒達のようだ。


「今年から始める事にした試みだ。今回はお前達の初めての野外訓練だ。これを見て自分達がクラス全体でどのあたりの位置づけなのか確認すると良い」


 そんな風に言われると皆自分達がどのランクなのかと興味を持って自分のチームについて書かれた紙を探す。


「俺達は……あった。順位8、成績中、片寄り多し」


 あれ? なんか微妙。それに順位8って言うけど今回のチーム分けってたしか15、6だったよな? って事はクラス全体の真ん中って事? 流石に低すぎない?


「やった! 6位だ!」


「結構成績いいじゃん!」


 見れば俺達よりも魔物退治の位置が手前側だったチームが好成績を取っている。

 これ、どういう評価基準なんだ? 単純に魔物の討伐数とかじゃないってことか?


「先生! 何で私達が真ん中なんですか!?」 


 何故かと考えていたら、驚いたことにアリアナが先生に噛み付いていた。


「何故もなにもそれがお前達の順当な評価だからだ」


「納得いきません先生! 私が8位とはどういう事ですか!」


 そしてレダックも抗議に参加するが、流石にお前が文句を言うのはどうかと思うよ? まともに戦ってないし。


「……って、あ!」


「キオ生徒は気付いたようだな。言ってみろ」


「レダックが戦わなかったからですか?」


「50点だ。正確にはチームとして活動できていなかった、だ」


「ですが私達は三人で魔物と戦っていました」


 今度はミレディがしっかり役割分担をして戦っていたと反論する。


「知っている。だがその間男達は戦っていなかっただろう」


「それは、キオ君が一人で魔物を討伐したので次は私達がと……」


「それが無意味な行動だというのだ。どんな理由があったにしろ、チームで活動しながら一人で戦ったり、逆に意味もなく戦わない者を出すなど隊を組む意味が無くなる。しかもそのうちの一人は周囲の警戒も一切なしで解体だけに集中するなどもってのほかだ。お前達のチームは個人技は優れているかもしれんが、チームとしては機能しておらん。だからあの評価が妥当なのだ」


 こう言われては誰も文句を言えなくなり黙ってしまう。いやレダックだけは何か言いたそうだけど、その前に先生の言葉が遮る。


「いいかお前達。チームとは各々役割を持った者が効率と安全を確保するために動く集団を言うのだ。たとえメンバーの仲が最悪だとしても、チームとして割り当てられたからには個人の感情など心の奥に押し込んで任務に集中せねばならん。全員肝に銘じる様に!」


「「「「は、はい!!」」」」


『これは教員にやられたな。お前達が同じチームになったのも仲の悪い者同士を組ませたらどうなるかの教材として利用する為だったらしい』


 ええ、何それ、性格悪すぎない。


『ん、ついでに成績が良いからって生徒の鼻が高くなりすぎないように釘を刺された』


「先生達にとっちゃ、俺達の成績なんてどんぐりの背比べって訳か」


 もしくは目クソ鼻クソを笑うか?


「つまりレダックが挑発したのも、その挑発に乗ったのもチームとしては失格ってことね」


「それを止めなかった私達も失格だったんだね」


 つまり全員の行動がチームとして問題ありと判断されたわけだ。


「そうなると片寄り多しって評価は個人技が上手くてチーム戦はダメダメって事か。こりゃ厳しいな」


「はははははっ! 残念だったな!」


 と、落ち込む俺達の前に現れたのは他のチームに参加していたバレンだった。


「ちなみに俺達のチームは一位だ!」


 そして聞いていないのに順位を自慢してくる。


「入学試験の時は負けたが、今回は俺の勝ちだな! 個人技では不覚を取ったが、指揮官としては俺の方が上だったということだ! ハハハハハッ!」


 すっげぇ嬉しそうに笑うバレン。滅茶苦茶楽しそうだなぁ。


「だが悲しむ必要はないぞ。お前の剣技は見事なものだったからな。俺が卒業した暁にはお前を俺の部下としてスカウトしてやるぞ! はははははっ!」


「ええと、ありがとうございます?」


「はははははっ! ではな!」


 終始ご満悦なまま、バレンは去って行った。

 うーん、なんか毒気を抜かれた感じ。

 でもまぁ貴族との確執とか碌なもんじゃないし、バレンとはお互いの得意分野が違うみたいな住み分けが出来たのはよかったかもな。


「ぬぐぐ……悔しい」


 なんかアリアナの方が悔しそうにしてるんですけど。


「ギリギリギリ……この私があんな辱めを受けるなんて! おのれ平民、いやキオ! 次こそは!!」


 うん、後ろの方から聞こえてくるハンカチを引き裂くような恨み節は聞こえない事にしよう。

 あとこんな理由で名前を覚えられたくなかったなぁ。

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