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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第27話 証明のソロ討伐

「では実技試験一位の実力を見せてもらいましょうか」


 レダックの口車に乗せられた形で、俺は一人魔物の群れと戦う事になってしまった。


「まぁ、いいんだけどさ」


 向かってくるのは大型の……牛の魔物だな。


『ランバッファローだな。大型の体躯を利用した突進で攻撃してくる魔物だ』


「うん、あれなら森の主より全然マシだわ」


 猛烈な勢いで突進してくる魔物に対し、俺も武器を構えてゆっくり進んでゆく。


「ブモォォォォォォォ!!」


 そして接敵まで残り5メートルといったところで俺は駆け出す。


 ゆっくり近づいて来た俺が突然スピードを上げて迫って来た事でランバッファロー達は一瞬だけ戸惑いを見せるが、人間などこの巨体で吹き飛ばしてくれると速度を落とさず突っ込んで来る。


「ちょっ、正気!?」


 後ろからミレディの悲鳴が上がる。

当然真正面からぶつかり合えば俺はあっさり吹き飛ばされてしまうだろう。

だがそんな馬鹿な事はしない。俺はランバッファローの角に気を付けつつ、真横に滑り込んで通り過ぎる。


「「「っ!?」」」


既にトップスピードに乗っているランバッファローは軌道を変えれず、俺の横を猛スピードで通り過ぎる。


「それ!」


そして慌てて切り返そうとスピードを緩めたランバッファローの後ろ足を切りつける。


「ブモォォォォッ!」


「これで実質あと二匹」


 俺は怪我をしたランバッファローを盾にして残り二体と相対する。


「「ブルル……」」


 すると二体は左右から挟み撃ちしようと盾にしたランバッファローを迂回して俺の左右に位置取ると突っ込んできた。


「意外に頭を使ってるけどそれじゃ意味ないだろ!」


 まず左から突っ込んでくるランバッファローにこちらも突っ込んでいく。


「ブモォ!」


 すると相手もさっきの二の舞にはならないぞと走ってる最中で前足を上げると、俺目掛けて蹄を振り下ろしてきた。


「おお!?」


 突進したら避けられるからって無理やり二本足になって腰を捻って攻撃範囲を広げて来た!?


「ちょっとしたミノタウロスだなこりゃ」


 むしろ以前戦った森の主よりも頭良くないか?


「でもそんな攻撃ミスったら隙が大きいだろ!」


「ブモォォォ!」


 そこに右側から突っ込んできたランバッファローが俺の背後を取る。


「連携!?」


 牛の魔物が時間差で連携攻撃って流石に頭良すぎない?


「でも普通に避ける」


 うん、普通の突進攻撃なら横に避けるだけだわ。そうなると……


「ブギャアアアア」


 当然反対側に居た仲間に当たる訳で、憐れ左のランバッファローは味方の誤爆で痛烈なダメージを負ってしまった。


「ブ、ブモ……」


 流石に味方に手痛い傷を負わせてしまった事でランバッファローが戸惑いの声を上げる。


「不意打ちで悪いな」


 ちょっとかわいそうだけど、後ろ脚を攻撃して移動を封じる。


「ブモォォ!?」


 こうなるともう三匹ともまともに動けなくなるので、あとは反撃を喰らわないように回避専念で攻撃して止めをさしたのだった。


『所詮は獣型の魔物だからな。知恵を凝らすにも限度がある』


「やっぱ動物まんまの魔物は頭が悪いんですか?」


『んー、そうともいえない。頭の良いのはいるし、割合として人型の方が頭が良い種類が多いってだけ』


 つまり油断は禁物って事か。


「凄いわね。完全に相手を翻弄していたじゃない」


 と、戦いが終わったのを確認してミレディ達が近づいてくる。


「コイツ等の頭が悪かっただけさ」


「そんな事ないと思う。ウシ型の魔物が挟み撃ちしたり時間差攻撃で不意打ちしてくるなんて思わなかった」


 とリスタも驚いた様子で話しかけてくる。

 それは俺もそう。思った以上にコイツ等頭が良かったわ。


「あの、疑ってごめんなさい」


 そして素直に謝ってきた。


「いいよ、俺もあの決着じゃ疑われても仕方ないって思ってたし。認めてくれたのならそれでいいさ」


「うん、貴方の実力は本物だった。寮の子達にも伝えます」


「私も誤解を解いておくわ」


「助かるよ」


 良かった、これで少なくとも女子生徒の誤解は解けそうだ。

 あとは……


「お、おい、引っ張らないでくれ!」


 と、そこにレダックの腕を引っ張ってアリアナがやって来た。

 アリアナは言葉こそ発しないものの明らかにご満悦な様子だ。


「キオに言う事は?」


「……まぁ、程度の低い魔物に後れを取らないだけの強さはあるみたいだね」


 コイツはまだまだ認めてくれそうにないなぁ。


「……じゃあ解体する」


「え?」


 アリアナの言葉に何でと疑問の声を上げるレダック。


「貴方の提案でキオは魔物と一人で戦う事になった。なら何もせずに楽をした人間が倒した魔物の解体ぐらいするのが道理」


「だ、だからってなんで私が魔物の解体なんか……こんなの埋めればだけの話だろう」


 おいおい、マジで言ってんのかコイツ。ああいや、そういやコイツ上位の貴族の息子だったわ。


「生徒の大半は生活の為に魔物を狩る。皮や骨は素材として、肉は食料に、内臓の一部は薬になる。だから、解体は必須」


 そう言って解体ナイフをレダックの前に突き出すアリアナ。


「やる。でないと先生に授業をサボってキオだけに戦わせたって報告する」


「い、いや次の魔物を私達だけで倒せば問題ないでしょう」


「それじゃあ弱い魔物を選んで倒せばいいだけになる。せめて同レベルの魔物を同じ数同時に戦うくらいでない……ううん、上位の貴族ならそれ以上の魔物を一人で相手にして楽勝出来るくらいの力を見せてくれないとつり合いが取れない。貴族だから、出来るんでしょう?」


「えっと、アリアナ? 流石にそれはちょっと言い過ぎじゃない?」


 幾ら気に入らないからって貴族相手に喧嘩を売るような真似はどうかと思うんだが……


「ううん、キオに濡れ衣を着せて悪評を流したんだから、その落とし前を付けるのは当然。寧ろそのくらいしないと貴族のメンツが保てない。貴族は簡単に謝っちゃいけないから、そのくらいして漸くつり合いがとれるって聞いた」


 一体誰に聞いたんだよそれ!?


「さぁ決めて。解体をするかキオが倒したまものよりも強い魔物を倍の数一人で一度に倒すかを」


「さらっと条件が上がってるー!?」


「さぁ、どうする?」


 ずずいと解体ナイフを手に迫るアリアナ。


「う、ぐぐ……」


 レダックも騎士としての訓練は受けているんだろうが、流石に一人でランバッファローより強い魔物六体と同時にやりあうのは無茶らしく、躊躇いの表情を見せる。

 しかしここで出来ないと言ってしまったら貴族として無能のそしりを受けてしまう事も察しているんだろう。

どうするのが最善の選択なのかと悩んでいるのが目に見える。


「……ふっ、残念ですがランバッファロー以上の魔物六体と同時に戦う事はこの町周辺では難しいでしょう。実力を見せれないのは残念ですが、魔物の解体を選ぶとしましょう!」


 そして選んだ選択は自分が戦うだけの価値のある魔物は居ないと言いながら解体を選ぶことだった。

 コイツ、意外といい性格してるな。


「じゃあ全部よろしく」


「え? 全部? 私が?」


「私達女子は三人で次の魔物を担当するから任せてほしい。代わりに貴方は解体をよろしく」


「え? え?」


「良いわね。私もそれで良いわ」


「私もそれで。一人で彼のように戦うのは無理だからその分弱い魔物を多めに倒すね」


「じゃあ貴方は解体をよろしく」


「え? え? え?」


 人を呪わば穴二つ。

 あわれレダックはたった一人で全ての魔物を解体する羽目になるのだった。

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レダックに同情する価値無い
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