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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第25話 貴族社会の勉強は物理になりそうな予感がします

「昨日の今日でもう授業かぁ」


 騎士学校は入学した翌日から授業が始まるから前世の感覚があると驚きの速さだ。

 まあ前世じゃ義務教育だったけど、この世界だと私立や予備校みたいな感じだからさっさと覚える事を覚えて卒業しろってなるのもしゃーない。


「ん?」


 教室に入った俺だったが、ピリッとした空気を感じる。

 なんだ? 森の中みたいな空気なんだけど……


「「「……」」」


 奥に行こうとすると、あからさまに何人かの生徒達が談笑しながらも遮るように前に出てくる。

 うん、ちらりとこちらを見た視線から明らかに敵意を感じる。

 成程、森の中を思い出す訳だ。魔物や獣の気配みたいなもんだ。


 けど俺何かしたっけ? ……いやあったな事件が。

 まぁいいやと迂回して奥に行こうとした俺だったが、驚いたことにそいつ等は迂回しようとした俺に合わせるように道を塞いできた。

 凄いなコイツ等、全然隠す気ないじゃん。


『お前を苛立たせて先に手を出させようという腹だな。こういった場所は先に手を出す方が未熟とされる』


『んー、それに貴族の縁者、従者だから下手に手を出すと一方的に悪者扱いされるかな』


 父上達も相手にするなというけど、どうしたもんか。これで教室の端まで迂回してもついてきたらそれはそれで面白いんだけど……やるか。


「……」


 俺が更に横に迂回するべく移動すると連中は俺に合わせて談笑する振りを続けながら立ちふさがって来る。

 端まで移動してもそいつ等はついて来たので、今度は元来た方向に戻る形で迂回しようとするとそいつ等も同じように戻る。


「ふっ!」


「「「っ!?」」」


 ここでフェイント! 即座に反対側に動くとそいつ等も慌てて道を塞いでくる。

 更に反復横跳び!


「「「!?」」」


 なんとか俺の反復横跳びについてくる生徒達。

 傍から見ると突然集団で反復横跳びを始めた不審者の集まりだ。はい、タダのバカです。


「はぁっ!」


 そこから突然の横方向への全力疾走。


「「「なっ!?」」」


 慌てて俺を追いかけてくる生徒達。もはや雑談のフリをする余裕もない。


「とぅっ!」


 しまいには教室の壁にジャンプして三角跳びを披露すると、連中も思わず俺に追従する形で三角跳びを披露する。

 正直かなり楽しくなってきた。


 しかし俺の耳はこの遊びの終わりが近づいて来たことを察すると、そのまま反対方向に全力疾走を行う。

 当然生徒達も俺を追って全力疾走で追いかけて来たので、聞こえてくる足音にタイミングを合わせて俺は魔法を発動する。


「スカイシューズ!」


跳躍力を増す魔法でピョーンと高らかにジャンプするとそのまま教室の奥の席に着地。


「「「っ!」」」


 俺に跳びこされた生徒達が慌ててブレーキをかけてこちらに向かって来ようとしたその時だった。


「何をしている!」


 教室入って来た先生の叱責が響き渡った。


「神聖な学び舎の中でバタバタと騒ぎを起こしおって! 真剣に学ぶ気があるのか!」


「っ!? い、いえ、俺達じゃ……なくて、アイツが……はぁ、はぁ……」


 道を塞いでいた生徒達は俺を指差して騒いでいたのは俺だと濡れ衣を着せてくる。

 まぁ騒いだのは事実だけど。


「ほう、だが彼はまったく息が乱れていないぞ」


「はぁ、はぁ……え?」


 実際、俺は全然息が乱れていないのに対し、彼等は肩で息をしている。

 正直言うと全力疾走を繰り返して俺も多種息切れしてるが、それでも遠目には分からない程度に隠す事は出来ていた。


「騒いでいた生徒が息切れしていないというのに、何もしていない君達がそうも息切れしているとはおかしな事だ」


「そ、それは……」


 生徒達がちらりと教室の中に助けを求める視線を向ける。

 その先に居たのは……確かレダックといったか。入学試験の際に俺が不正をしたんじゃないかって文句を言ってきた奴だな。

 成程、アイツが黒幕だったのか。


「……」


 しかしレダックは何も言わないどころか彼等に視線を合わせようともしない。

 役立たずを助ける義務なんて無いってことか。なんとも世知辛いね。


「やれやれ、何もしていないのにそれ程疲れ果てているなど騎士に成る以前の問題だ。君達は授業を受ける前に体力をつけるように。今から学校の周囲を10周してきたまえ。授業を受けるのはそれからだ」


「そ、そんな!?」


「ち、違うんです! アイツが!」


「言い訳は結構。人前で満足に取り繕う事も出来ぬような未熟者が騎士になろうなど片腹痛い! さっさと行ってこい!」


「「「は、はいぃぃぃぃ!!」」」


 追い出されるように生徒達が教室から飛び出してゆくと、先生がチラリとこちらを見て笑みを浮かべる。


『これは気付かれているな』


『ん、その上で見逃された感じ。多分貴族相手に騒ぎを起こすならもっと上手くやれって忠告してる』


 それってつまり、これからもこんな事があるって事では?


『問題ない。魔法の神から無駄に魔法を覚えさせられただろう。アレと俺の教えを活用すれば大抵の問題は力ずくでなんとかなる』


『ん! 最後に物を言うのは武力!!』


 神様達の解決案が脳筋過ぎる……


「全員席に就け! 授業を始める!」


 といってもさっきの騒ぎの隙に生徒達は既に席に就いている。

 中々に皆強かだ。


「くくく、面白かったぜ」


 と、横から聞こえて来た声に視線を向ければ、ちゃっかり同室のポリタが座っていた。


「居たなら助けてくれても良かっただろ」


「馬鹿言え、貴族とトラブルになるなんて御免だってーの。お前だって俺の立場なら同じ事してただろ」


「仰る通りで」


「私語は慎め! お前達も走りに行きたいのか!?」


「「やべっ」」


 慌てて背筋を伸ばして口を閉じる俺達。


「では授業を開始する。最初に教えるのか騎士としての振舞いだ。これが出来ないものはどれだけ強くなっても騎士にはなれん。しっかり覚えるように!」


 こうして、俺の騎士学校生活は騒動と共に始まったのだった。

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