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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第21話 入学試験決勝戦

「それでは入学試験最後の試合を始める」


 訓練場は異様な雰囲気に包まれていた。


 試合場に立つのは二人。一人は俺と……もう一人はアリアナだ。


「最後まで残ったのがどちらも平民だなんて、アイツ等何者なんだ」


「二人共異様に強い。どこかの貴族の家臣の生まれか?」


 すいません、ただのド田舎村の人間です。


「どちらが勝っても荒れそうだな……」


 止めて本当に荒れそうだから。


「一体どちらが勝つんだ……」


 それは確実の俺が負ける。だってアリアナの方が強いんだもん。

 でも正直自分がここまで勝ち進めたのにはびっくりした。幼い頃から付きっ切りで高度な教育を受けて来た貴族には勝てないと思ったんだけど、意外とそうでもなかった。


『貴族が全員優秀とは限らないからな。寧ろ高度な教育のお陰で人並み程度の使い手になっている場合も多い。酷いと周囲が次期当主だからと甘やかして勘違いしたまま大人になる事も少なくない』


『ん、だから大貴族は万が一そんな馬鹿が跡継ぎにならないように教育はしっかりする。それでも我が子だけは特別とやらかす貴族は後を絶たない。お家騒動でマトモな次男あたりが継げればいいけど、そうならない事も多い』


 そんな絵に描いたようなろくでもない跡継ぎあるあるホントにあるんだ……


『大抵は家臣が裏で苦労して何とかするんだが、家臣の後継者も酷いと地獄だな』


『意外と現実の方が創作物よりも酷い事は稀によくある』


 稀なのかよくあるのかどっちなの?


「双方構え!」


 っといけない。今は試合に集中しないと。

 俺とアリアナは剣を構えて真剣なまなざしで互いを見つめる。


「っ」


 ん? 何かアリアナが急に顔を赤くして視線を逸らしたんだが調子でも悪いのか?


『んー、悪いのは弟の察しの悪さ』


 え? どういう事?


「始め!」


「「っ!?」」


 やべ! 気が逸れてた!

 慌てて剣を構えながら後ろに跳ぶと、幸いにもアリアナも同じ行動で距離をとる。

 良かった、いきなり突っ込んで来られたらやられてたところだった。

 ともあれ気持ちを切り替えていくぞ!


 俺はフェイントを織り交ぜてアリアナの懐に飛び込む。


「っ!」


 対してアリアナは俺の剣を受け流すと返す刀で反撃をしてくる。


「っ!」


 速い! 力はそこまでじゃないけどこの速さが厄介だ。

 更に剣の軌道が滑らかでスピードを落とすことなく攻撃が続く。


『相変わらず運動エネルギーを利用するのが上手い』


 いやマジで速いんだよアリアナの剣は。

 父上の話だと、アリアナはブレーキを一切踏まずにカーブを曲がる車みたいな戦い方をするらしい。


 普通なら攻撃を空振りしたら途中で止めて構えなおさないといけないからスピードが落ちる。

 けれどアリアナは避けられた攻撃を体全体を動かす事で速度を維持したまま態勢を立て直し次の攻撃に切り替える。

 だがそんな事をすれば普通は動きが大きくなったり勢いに振り回されて大きな隙が出来てしまう。

 しかしアリアナは最小限の動きで軌道修正をしている為そのロスが驚くほど少ないのだという。

 その姿はまるで踊っているようでもあり、つまり天才の所業って奴だね!!


『まだまだ未熟だが壁を越えた使い手特有の戦い方だな。壁を越えていないものには理解できない理合いだ』


 つまり未熟者には高度過ぎて訳分からんという事らしい。


「くっ」


 こうなるともう負け確パターンだ。

 アリアナの剣はとっくの昔に俺を越えているから、何か父上から新しい技を学ばないと勝ち目はない。

 そして入学試験直前の数日はこれまでの鍛錬の再確認の為の訓練をしていたから新しい技も無い。

 なので敗北は確定だ。


「こうなったら、せめて周りに恥ずかしくない負け方をするしか!」


 守り続けて負けるよりは、最後まで勝利を目指して全力で戦って負ける!

 俺は一か八か守りを捨てて剣を振り下ろしながらアリアナの懐に飛び込む!

 こちらが攻撃を受ける方が先だろうが、攻撃無くして勝利は無い!


 だがここで予想外の事が起きた。

 攻撃を回避しようとしたアリアナの動きが急に鈍ったのだ。


「きゃっ!?」


 そして驚いたことに俺の攻撃がアリアナに命中した。


「え?」


「そこまで! 勝者キオ!」


 審判の宣言と同時にアリアナが木剣を落として頭を抱えてうずくまる。


「え?」


 俺が勝った? アリアナに攻撃を当てて?


「マジで?」


 どう考えても負け確だったと思ったんだけど……

 というかなんか急にアリアナの動きが遅くなったような気がしたんだが……


「異議あり!!」


 その時だった。

 俺の困惑を読み取ったかのように、誰かが戦いの結末に意義を唱えたのだった。

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