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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第20話 貴族との試合

「初戦で俺に当たるとは運の悪い奴だ。貴族と平民の差をその身に思い知らせてやろう!」


貴族と戦う混合戦で当たったのは、さっきから妙に因縁をつけてきた貴族の少年だった。


「試合開始!」


 審判の合図と共にバレンと呼ばれた貴族の少年が向かってくる。


 どうする? 貴族相手に変に目立つと後々因縁が出来て……ってもう出来てるわ!

 寧ろ因縁の方から声かけて来たわ!


「はぁ!」


 ともあれ最初の一手の突きを俺は余裕をもって躱す。

 この場合は楽勝って意味じゃなく十分な間合いを保ってという意味だ。


「うぉっ」


だが体を捻っての一撃は思った以上に射程が長く、余裕をもって回避してよかったと内心安堵する。


「ふっ!」


 更に攻撃を避けられたバレンは流れるように次の手に移って攻撃を続けてくる。

 こちらは最初の突きを警戒して回避に専念。


「やるな! この連撃を避ける事が出来た者はそういないぞ!」


「それはどうも!」


 ここでバレンが後ろに下がって仕切り直しになる。


「さぁ、こんどはお前が攻撃して来い!」


「え? いいんですか?」


 まさかの攻守交替宣言。


「くく、全力を尽くしても覆す事の出来ぬ貴族と平民の差を理解させてやろう!」


 うおお、なんか凄い自信だ。

 それだけ高度な訓練を受けて来たって事なのか?


『気圧されるな。お前達が思っているような差はない。あるとすれば心構えの差くらいだ』


 心構えの差か……確かに向こうは凄い自信だもんな。


『なによりお前には命懸けで戦ったという経験がある。死と隣り合わせの戦いを幾度も経験して生き残れたものがどれだけいるか。自信を持て』


「命懸けか、そりゃ確かに同年代に負ける気はしないな」


『それにこの試合では貴族との確執が出来るかなどと余計な事は考えんほうが良いぞ。寧ろ下手な忖度は逆効果になりかねん』


 マジかぁ。覚悟を決めないといけないのか。

 俺は大きく息を吸うと、細く息を吐く。


「それじゃあお言葉に甘えて!」


 まっすぐに突っ込む。

 回り込んで背後からとかは遮蔽物の無い試合場だと難しいし、ギャラリーに俺の技術を披露することになってしまう。

 なにより、命の危険がない試合で全力で貴族の剣と神様仕込みの剣を比べてみたいという気持ちが湧いて来たから!


「はぁ!」


 一撃目は相手がバレンがやってきたのと同じ突き!


「うぉっ!?」


 バレンの回避が遅れたものの剣で受け流される。

 流石に上手い!


「けど通じなわいわけじゃない!」


 俺もまた連撃に移る。

 それもバレンと全く同じ攻撃をだ。


「何!?」


 同じ攻撃。だが俺が攻撃を受けることなく回避したことに対し、バレンは回避しきれずやはり剣で受け流す。


「っ、やるな!」


 だがこれは俺の方が強いというよりは、戦いのスタンスの違いというべきだろう。

 俺は相手の強さを警戒して回避に重点を置いていたのに対し、バレンは即反撃を想定して俺よりもギリギリでの回避を狙った結果だ。


「悪くない。悪くないぞ。俺とここまで打ち合えるとは驚きだ!」


「それはどうも」


 俺達は互いに剣を振るい、相手の攻撃を受ける。

 別にバレンの騎士道精神? に感じ入ったわけじゃない。

 相手の次の攻撃を警戒せずに戦える分こっちの方が楽だからだ。


「アイツ、ロードレックの剣と互角に渡り合ってるぞ。一体何者だ?」


「本当に平民なのか?」


 バレンとの戦いが長引いたからか、試合をしていた生徒達が俺達の試合場に集まって来た。

 これは良くないな。次に戦うかもしれない相手に手の内を見られちまう。


「よそ見をするとは余裕だな!」


「うわっ!?」


 うっかり試合場の外に気を散らしてしまった事で回避が遅れる。


「こんのっ!」


 今まで攻撃に当たらずに回避していた俺だったが、遂にバレンの攻撃を避けられなくなり剣で受け止める。


「ぬぬぬっ」


「ぐぐぐっ」


 力勝負は大差ない感じでお互いに押し合うも押しきれない。

 俺達はどちらともなく後ろに下がって間合いを図る。


「ギャラリーが多くなってきましたし、そろそろケリを付けましょうか」


「ふっ、同感だ。お前に貴族の剣の神髄を見せてやろう!」


互いに思いっきり地面を蹴って敵の懐に飛び込む。

 バレンは先ほどと同じ突き。いや速度と勢いが先ほどの比じゃない。

 こちらを突き殺さんばかりの勢いだ。

 それに対してこちらが選んだ攻撃は同じく突き。ただしバレンの勢いとは比べるべくもない。


「そんな腑抜けた突きなど木剣ごと砕いてくれる!」


 実際に砕けるのだろう。そんな確信に満ちた言葉と共にバレンの木剣と俺の木剣がぶつかったその瞬間。


「よっと」


 バレンの木剣に自分の木剣を絡めてくるんと回すとそのまま外に払った。


「何っ!?」


 そして木剣の持ち手を逆手に替えると突っ込んできた首筋に木剣の刃を当てた。


「そこまで! 勝者キオ!」


「ふぅ、上手くいった」


 今の技は相手の力を活かし、剣同士が触れあった部分を支点としてテコの原理で吹っ飛ばす剣技版合気道とでもいう技だ。

 父上から習ってはいたんだけど、実戦で試す機会が無い技だったんだよな。

 ガリン爺さんは腰がアレだし、アリアナ相手だとそもそも効かないし。

 これが上手くバレンの攻撃にハマったわけだ。


「ロードレックが負けた!?」


「アイツ一体何者なんだ?」


 気が付けば周囲の人だかりは結構な人数になっていた。

 うーん、やっぱ悪目立ちしちゃったかも。

果たして俺の学生生活どうなっちゃうんだ……?


「おい! お前!」


 そんな事を心配していたら、バレンがすごい剣幕でやってきた。

 ヤバイ、これは逆恨みされるパターンなんじゃ!?


「今の剣は何だ!? どうやったんだ!?」


「え?」


「誰に習ったんだ? メルフェール家の、いや違うな。あの家の剣とは違う。だが悪くない! 悪くなかったぞ!」


 な、なんかめっちゃ褒められてる?


「なかなかやるではないか貴様! 見事な剣だったぞ! 真剣で魔法ありなら俺の方が強いが剣のみの戦いなら文句の言いようもない!」


「はぁ、ありがとうござい……ます?」


 嫌な奴かと思ったら意外といい奴なのか? 負けず嫌いっぽいけど。


「お前、名は?」


「キ、キオです」


「キオか。俺の名はバレン=ロードロック。ロードロック家の次男だ! お前には特別に名前で呼ぶことを許そう!」


「ど、どうも……」


「よーしキオ、俺についてこい! 他の試合を見るぞ!」


なんか、めっちゃグイグイ距離を詰めてくる。

 思ったよりも貴族って気さくなのかな?


『ん-、これはこの子が変わり者なだけ。多くの貴族は立場を重視している』


『そうだな。この子供は単純に我が息子の剣の腕を気にいったからだな。現代の貴族ではかなりマシな方だ』


 バレン君、思ったより父上達に評価されてる。

 もしかしてこの性格を気付いていたから本気でやれって言ったのかな?


「おお、次の試合が始まるぞ! 見に行くぞ!」


「あっ、はい」


 こうして俺は変な貴族に気に入られる事となったのだった。

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