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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第19話 入学試験

「ほい町に到着だ」


「「ありがとうございました」」


 町に到着した俺達は、行商のおじさんにお礼を言うとさっそく騎士学校への入学受付に向かう事にした。


「騎士学校はこの道を真っすぐだ。頑張れって騎士になれよー」


「「はーい」」


 行商のおじさんに教えて貰った道を真っすぐ進むと大きな建物が見えてくる。


「キオ、あれじゃない?」


「おお、スゲェ!」


 前世の俺の記憶からすればそこまで大きな建物という訳じゃない。

 敷地の広さ的に中学校や高校くらいの大きさか、しかし西洋建築でこの規模は前世でも見たことがない。

この世界に転生してから見た中でも最大級の大きさだ。

 まるで海外の観光地に来たみたいでテンションが上がる。


 騎士学校の傍までやって来ると、そこに人だかりが出来ているのが見える。


「騎士学校への入学を希望する者はここに並べ!」


 おっ、あそこに行けばいいのか。

 俺達は行列の最後尾に並び、自分達の番を待つ。


「次、文字が書けないものは口頭で述べよ」


「あっ、書けます」


「私も書けます」


 俺とアリアナは申込用紙に自分と村の名前を書く。

 ガリン爺さんから騎士たるもの読み書きが出来ないといけないって言われて冬の間に頑張って覚えたんだよな。


「キオとアリアナ……お前達の事は聞いている。試験代は免除だ」


「試験代?」


 なんだそりゃ? 騎士様からは聞いてないぞ?


「騎士学校に入学するには試験を受ける必要がある。その際に変なのがやってこんように試験代と試験をするのだ。お前たち二人はメルフェール家から推薦があり、試験代も支払い済みだ」


 メルフェール家、あの騎士様の家かな?


「メルフェール家? アイツ等一体何者だ?」


 と、俺達の話を聞いていた周囲からざわめきがおきる。

もしかして騎士様って有名な貴族だったりする?


「騒ぐな! 受付を済ませた者は係の者に従って訓練場に行け!」


「「はい!」」


 訓練場にやってくると、既に何人もの人の姿があった。

 明らかに貴族と分かる高そうな服を着た人間、ちょっとボロいけど平民の服に比べたら明らかにモノが違うと分かった服を着た人間、そして俺達と大差ない格好の平民の3パターン。


「貴族と平民は分かるけど、あのボロい服の人たちは……?」


 貴族っぽい見た目だけどなんか貴族っぽくない人達なんだよなぁ。


「アイツ等は下級貴族だ」


 突然後ろから声をかけられて振り返ると、そこにはいかにも貴族と言った服装の少年の姿があった。


「新しい服を買い替える余裕のない貴族家はああして先祖代々受け継いできた服を手直して暮らすのだ。みじめなものよ」


 ああ成る程、貴族にも格差があるんだな。


「ふん、お前がメルフェール家に推薦されたという平民か」


「え? 知ってるんですな?」


「貴族が目をかけた平民を推薦することは珍しい事ではない。だがパッとしない奴だな。何故シェイラ嬢はお前のような者を推薦したのやら」


 シェイラ嬢ってのはもしかして騎士様の名前かな? そう言えば騎士様の名前聞いてなかったなぁ。


「ふん、貴族に推薦されたからといって調子に乗るなよ。ここに来るのは騎士になるべくしてやってきた者と騎士になる為に厳しい鍛錬を積んだ者だけだ。半端な気持ちで参加すれば大恥をかくぞ。そしてそれは推薦した貴族の顔に泥を塗る事でもある。精々気を付けるのだな」


 そう一方的に言い捨てると、貴族の少年は去って行った。


「何だったんだろ今の」


 もしかして因縁つけられた?

 それはそれとしてファンタジーのお約束なのでちょっとワクワクしないでもない。


「私あの人嫌い」


 こらこら、貴族相手にそんな事言ったらヤバいでしょ。

 慌てて誰かに聞かれなかったかと周囲を見回しつつ、俺はアリアナに言葉に気を付けないといけないと窘める。


「貴族に目を付けらたら厄介なんだからさ」


「……分かった」


まぁ俺はもう目を付けられたっぽいけど。



「これより試験を開始する! 試験は木剣、長棒を使っての1対1の試合。相手に致命打を与えるか、3回有効打を与えたものの勝ちとする。敗北した者は即会場を去るように」


 敗者復活戦とかは無しかぁ。

 上位何人までが入学ラインって感じかな?


「それでははじめ!」


 漫画の武闘大会みたいな試合舞台は無く、地面に刻まれた5×5メートルくらいの四角い枠が俺達の試合会場だった。


「やぁぁぁぁぁ!」


 向かってきたのは俺よりも年上の少年だ。

 彼は剣を大きく振りかぶって俺に切りかかって来る。

 しかし俺から見れば隙だらけだ。

 余裕をもって回避すると、攻撃を外してよろつく少年の脇を切りつける。


「あぐっ!」


 痛みに耐えて少年が剣を横に振って俺を威嚇する。

俺はその攻撃に当たらないように回避しながら円を描くように背後に回り込む。


「っ!」


 少年は背後を取られないように慌てて振り向くが、その前に俺は姿勢を低くして少年の懐に入り込んでいる。


「あ、あれ?」


 一瞬俺の顔を見失った少年が戸惑って動きを止めると共に、喉元に木剣を突きつける。


「そこまで! 勝者キオ!」


 どうやら首を狙った攻撃が致命打と判断されたらしくあっさり俺の勝利となった。


『当然だ。お前は俺が鍛えたんだからな。師のいない素人剣法に負ける道理が無い』


「騎士を目指すのに剣を学ばないんですか?」


『真っ当な剣術を教えてくれる者はそういない。それなりに腕の立つ傭兵などもいるが、大抵は生まれ持った体格の良さに依存したフィジカル前提の戦い方で教える内容もせいぜい素振りか模擬戦くらいだ。正当な剣を学ぶには大きな町の道場に入門する必要がある。稀に真っ当な剣を学んだ腕利きの傭兵が居るが、そういった者達から学ぶには道場以上の金がかかる。だから大半の平民は我流だ』


 どうやら俺が思った以上に父上に剣を学んでいた事は大きな利点だったらしい。


「おい」


 そんな風に感慨にふけっていたら、さっきの貴族の少年が声をかけて来た。

 まさかまた因縁をつけに来たのか? 暇すぎないこの子?


「平民にしては悪くない戦いだったな」


「どうも」


 もしかして俺の試合を見ていたのかコイツ?


「だが俺には及ばんな! 特別に俺の戦いを見せてやる! 貴族の部に身に来るがいい!」


「貴族の部? あれ、もしかして分かれてるんですか?」


「当然だ。我等貴族は正当な剣術を学んでいる。碌に剣を学べない平民と戦っては勝負になるまい」


 成程、正規の訓練を受けた人間と素人じゃそりゃ戦いにならないよね。


『まぁ本音を言えば出来の悪い貴族の息子が平民に負けたら大恥だからな』


 そしてあっさりバラされる真相。


 ともあれ誘われたのでちょっと見に行くことに。


「始めっ!」


 審判の号令と共に貴族の息子達が動く。

 その動きはさっきの少年とは比べ物にならない程洗練されている。


「おお!」


 二人は何度も木剣をお互いの急所目掛けて打ち込む。

 お互い回るように相手の死角を狙い、決して動きを止める事もしない。


 このまま長期戦になるかと思ったその時、俺に話しかけて来た貴族の少年がバランスを崩す。


「そこだ!」


「甘い」


 しかしソレはフェイントで攻撃はあっさり回避され逆にキツい一撃を叩き込まれる対戦相手。


「そこまで!」


 致命打という感じではなかったが、相手選手があからさまに痛がってうずくまった事で審判が試合終了を告げた。


「ふん、あの程度で動けなくなるなど鍛錬が足りていない証だ。周りに煽てられた典型だな」


「いや凄い見ごたえのある戦いでしたよ」


「あの程度戦ったうちには入らん。やはり混合戦でないとな」


 混合戦ってなんだ?


「次、キオ、居ないのか!?」


「あっ、やべ! はーい! 居ます居ます!」


 審判に呼ばれたので慌てて平民の部に駆け戻る。

 そうして俺達は順調に試合を進めてゆく。


「キオ、おめでとう」


「ありがとう、アリアナも勝ち進んでるみたいだな」


 俺もアリアナも危なげなく勝利を続け、参加者の数は目に見えて減っていた。


「参加者の数が定数に達した。これより先は貴族平民を問わない混合戦とする!」


 と、だいぶ人数が減った所で審判が告げる。

 なるほど、さっき言っていた混合戦ってこのことだったか。


「ここからの組み合わせは公正を期すためにくじ引きとする」


 そう言って審判は小さな箱に手を突っ込み、中から出した紙を見て試合表を作る。


「俺達が引くんじゃないんだ」


 試合表に書かれた受験者の数は50人。

 そして俺の名前の横に書かれた名前は……


「バレン=ロードロック?」


 苗字があるし、相手は貴族か?


「キオ選手、ロードレック選手、前に!」


 審判に呼ばれて試合場にやって来た俺を待っていたのはなんと……


「ほう、お前が俺の相手か」


 さっきから俺にちょっかいをかけて来た貴族の少年だった。


「初戦で俺に当たるとは運の悪い奴だ。貴族と平民の程をその身に思い知らせてやろう!」


 これ、勝っても負けても変な因縁が出来そうなんだけど……

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