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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第17話 少年、真後ろに迫られる

 村の片隅で甲高い音が響く。


「たぁー!」


「はぁー!」


 二本の木刀がぶつかり合っては下がり、またぶつかり合う。

 一本は俺の、もう一本はアリアナの木刀だ。


「はっ!」


 アリアナがフェイントを混ぜて切りかかって来るのを俺はギリギリで避ける。


『いいぞ、相手の剣の間合いをよく感じ取って回避するのだ。大きく避ければそれだけ相手の隙を突くチャンスが減る』


 父上の言う通り俺はアリアナと模擬戦がてら、敵の攻撃をギリギリで避ける訓練をしていた。


 そして焦れて攻撃が雑になった瞬間、俺はアリアナの懐に飛び込み首元に剣を当てる。


「そこまで!」


 ガリン爺さんの声に俺達は剣を下ろし互いに礼をする。


「全然当たらないよー」


「ほっほっほっ、まだまだキオの方が腕が上じゃからな。しかしアリアナも随分と上達したぞ。驚くべき速度じゃ」


 そう、ガリン爺さんの言う通りだった。

 ほんの数週間でアリアナの剣の腕はビックリする程上がっていたのだ。

 それこそ俺と打ち合えるくらいに。


 ◆


『あの娘の天賦の才は本物だな。実戦経験こそないが、それに劣らぬ覚悟のようなものがある。ただの村娘とは思えぬほどのものだ』


 何それぇ、才能もあって覚悟も本物とかマジで俺に勝てる要素ないじゃん。

 今でさえかなり追いつかれてるのに、このままだと俺、アリアナに完全にお射貫かれちゃうじゃん。


「そしたら騎士の座もアリアナに持ってかれるんじゃねーの!?」


『俺が鍛えているのだ。鍛錬を怠らなければお前も騎士に成れるだろう。だが、確実に話題は持っていかれるだろうな』


「うう、モブキャラ決定って事ですかー!」


『ん、神に鍛えられておきながらその他大勢になるのは逆に凄い事だと思う』


「余計なお世話だよ! ……って今のは」


『ん、久しぶり。魔法を教えに来た』


「魔法の神様!」


『のー、私の事はお姉ちゃんかお姉さまと言うように』


「お、お姉ちゃん?」


『ん』


 凄く満足そうな声が聞こえてくる。


『それにしても前に顔を出してから随分と時間がかかったな』


 それは確かに。


『ん、私が教える場合は魔力のやり取りもあるから色々ルールに抵触する危険がある。だから他の神々と打ち合わせが必要だった』


「なんか苦労賭けたみたいですいません」


『ん、可愛い弟の為だから気にしない。お姉ちゃんの甲斐性』


 すっかり弟認定されてるのホント何なんだろうな。


『ん、という訳で弟よ。貴方には最初に言わねばならない事があります』


「は、はい!」


 何だろう、魔法の修行は凄く厳しいぞとか、舐めたら死ぬぞみたいなやつか?


『弟には魔法の才能が殆ど無い』


「ほとんどない……」


『正しくは魔法を使う為の魔力が少なすぎる』


 凄く、世知辛い事を言われた。


『ん、これは仕方がない。基本的に魔法を使える人間は少ない。だから爪の先ほど魔法が使える可能性があるだけでもマシ』


「つまり少しは才能があると?」


『のー、一般人にミジンコ一匹分レベル』


「ミ、ミジンコ一匹分……!?」


『生まれ持った才能はどうにもならない。才能がなくても鍛えれば強くなるという考えは人間のよくやる間違い。才能が10だとすると鍛えてない人間は1/10しか発揮してない。これを鍛える事で10/10になり最大まで才能を発揮する事が出来る。才能があると言われる人間はこれが最初から5/10とかになる』


 成る程、天才は生まれつき自分の才能を活かせているってことか。


「問題は才能の最大値はそれ以上にはならないということ。特に魔力を消費して魔法を使う魔法使いにとっては死活問題』


「結局俺には魔法は使えないって事ですか?」


『半分いえす、半分のー、だから魔力を拡張する』


「拡張?」


『ああ成る程、それで他の神々との交渉が必要だったのか』


「え? どういうことですか?」


 才能はどうにもならないと地の底まで落とされた俺だったが、何か裏技的なものがあるっぽい。


『ん、弟に無理やり魔力を流し込んで才能の鋳型を拡張する』


「む、無理やり!?」


 何かヤバそうだけど大丈夫なのソレ!?


『ん、普通は死ぬ。万全の準備を整えても確実に死ぬ。過去幾多の魔法使い、魔法の才能が無い者が限界を越えようとして破滅してきた。現実は非常』


「じゃあ駄目じゃん!!」


『のー、私は神。神に出来ない事はない。ルール違反しない範囲でなら』


 お、おお、これは期待が持てるんじゃないか!?


『ん、まぁその為には地獄の苦しみを味わうけど』


「え?」


 地獄の苦しみ?


『ん、本来の限界を超えてそれ以上を得ようとするなら、当然代償を支払わないといけない。袋に入る限界以上の量を入れれば袋は破れる。それを強引に破れないように補強する事は、別の何かになるのと同じ。小さな袋を大きくしたらそれはリュックになる。変わる事で別のものになる事は生まれ変わる事と同義。本来の転生手順を踏まずに生まれ変わるのなら、当然致命的な矛盾が発生する。それを無理やり抑え込んで存在を作り替える。いこーる凄く大変』


「最後めっちゃ雑なんだけどー!?」


 な、なんか滅茶苦茶ヤバそうにな話になって来たぞ。大丈夫なのかコレ……


「これ大丈夫なんですか父上!?」


『……』


「何で無言!?」


 こういう時こそアドバイスしてくださいよ!


『あー、専門外だから詳しい事は言えんが、コイツが出来ると言っているなら技術的には可能だ。魔法の専門家、というか魔法を産み出した存在だからな。他の神々の協力を取り付けている事から成功もするだろう。ただ……』


「ただ?」


『コイツの苦しむという言葉がどれだけのものかは俺にも予測がつかん』


 嫌な予感しかしないっっっ!!

 ど、どどどうするよ、魔法が使えるのは凄く魅力的だけど、ヤバい予感がヒシヒシとしてくるんだけど!?


『ん、そう言う時は事実だけを羅列して考えるといい』


 俺が尻込みしていると、魔法の神様、いや姉ちゃん、姉さん? が提案してくる。


『ん、魔法を使える事でこれからの人生で得られるメリットとデメリット、使えない事で得られるメリットとデメリットを考えれば良い。そうすればおのずとどちらを選びたいかが見えてくる』


 それは、まぁそうか。


「魔法を使えるメリットと使えないメリット……」


 そんなの考えるまでもない。魔法を使えた方が圧倒的に便利だ。

 攻撃魔法が使えれば遠くから攻撃できるし、防御魔法があればどんな攻撃でもダメージを減らせる。回復魔法が使えれば怪我を直せるし、他にも瞬間移動の魔法とかあれば移動も楽々だ。

 流石に全部の魔法が使えるとは思わないが、使えた方が圧倒的に便利なのは間違いない。


 逆に使えないメリットは特にないな。精々が魔法を覚える際の苦しみがないくらいだ。

 デメリットに関しても同様。

 寧ろ魔法が使えないままなのは何の得にもならない。


「確認なんですけど、その拡張の苦しみってずっと続くんですか?」


『のー、一度越えれば苦しみはない』


「苦しみは長期間続くんですか?」


『ん、個人差はあるけど大体一週間以内だと思う』


「魔法を覚える度に苦しむとかあります?」


『のー、必要なのは魔力の拡張。魔法を覚えるのは普通の魔法使いの修行と同じ』


 成程、苦しいのはゲームでいうMPの最大値を上げる時だけって事か。

 それに一週間くらいなら、なんとか耐えられるだろう。

 よし、決めた!


「分かりました! 魔力の拡張やります!」


『ん、それじゃあさっそくやる。横になって』


 言われた通り俺は横になる。


『ん、それじゃあこれから魔力拡張の為に私の魔力を注ぎ込む。ちょっと苦しいけど頑張る』


「はい!」


 よし、覚悟はできた。どんとこい!


『神気送精』


 ドンッ!!!! と体が爆ぜた。


「っっっっ!?」


いや違う、爆ぜてない。でも体が爆発してる。

 全身が破裂し続けている。

 指先が爆散した。

 太ももが吹き飛んだ。

 頭が破裂した。

 体中が爆散している。


「!? !? !?」


何だこれ何だこれ何だこれっっっ!?


『ん、今魔力を流し込んだ。後は落ち着くまで耐えるだけ』


「おっ!? がっ!? おがっ!?」


 耐える!? これを!? 無理無理無理っっっっ!!

 全身が破裂して引きちぎれて吹き飛んでるんだぞ!?

 予想の数百倍痛いんですけどぉぉぉぉぉぉっ!?

 全身が破裂する爆音で周囲の音が何も聞こえない。

『落ち着け。実際に体が吹き飛んでいる訳ではない』


 そんな中、父上の声だけは何故かハッキリと聞こえた。

でも痛くて全然落ち着けねぇぇぇぇぇぇ!


『いいか、今は魂に結び付いた魔力の流れが魔法の神の流した魔力で無理やり拡張されている状態だ。その際神の魔力という劇物に拒絶反応を起こして苦しみを感じているのだ。物理的な肉体に損傷は発生していない故肉体が死ぬことはない』


 死ぬことはないって言っても信じれられないくらい苦いんですけどぉぉぉぉぉぉ!


『んー、でも魂が痛みに屈服すると魂が損傷する可能性があるから気を付けて』


「はぁっ!? 聞いてないんですけど!?」


『ん、大丈夫。他の神達の協力を取り付けてあるから魂は保護出来る。ルールがあるから最低限の保護だけどこれなら魂が死ぬこともないから安心』


 ぜんっぜん! 安心できねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!


 その後、俺は実に丸一週間にわたって地獄の苦しみを味わう事になるのだった。

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― 新着の感想 ―
>>魂が痛みに屈服 痛みがやがて快感になるわけですね(その先の話はノクターン行きです)
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