第15話 家族と進路相談
「っていう訳で俺騎士になる事にしたから」
翌朝、騎士になる事を決意した俺は、おじさん達にその事を告げた。
一応家を出て独立したけど、おじさんが俺の後見人みたいなもんだしな。
ちゃんと伝えておく必要はあるだろう。
「そ、それは凄いな……」
流石のおじさんも俺が騎士に推薦されたと聞いて驚きを隠せないようだった。
「キオが騎士になるなんて凄いわねぇ。お城で働くの?」
「いや、多分この村か近くの町の領主様の所で働くことになると思う」
おばさんは騎士=城で働くと思ったらしい。まぁ知らない人からしたらそんなもんだよな。
「そうか、驚いたがお前が決めたらのなら好きにするといい。お前の人生だからな」
幸い、おじさんはあっさりと認めてくれた。
よしよし、家族の同意も得る事が出来たし、これで俺の実質不労所得騎士士ライフは約束されたも同然だな。
「となるとキオは騎士になる為に村を出るのか?」
「うん、騎士試験とかもあるしそうなると思う」
ガリン爺さんも言ってたしな。騎士になる為に騎士学校に行く必要もある。
「いやっ!」
そんな中、これまでずっと静かだったアリアナが急に大きな声を上げたんだ。
「アリアナ?」
「キオ行っちゃヤダ!」
そう言ってギュウっと俺の腕に抱き着いてくるアリアナ。
「わがまま言っちゃ駄目よアリアナ」
「やっ!」
おばさんが窘めるも、アリアナは珍しくそれに逆らう。
「アリアナ、キオの人生だ。邪魔するもんじゃない」
「やだ! キオと一緒にいる!」
何か俺、思った以上に幼馴染に懐かれてる?
「そうは言ってもキオは騎士になるんだ。お前が一緒に行くことは出来んぞ」
「なら私も騎士になる!!」
「「「はぁっ!?」」」
まさかの発言に思わず声を上げてしまう俺達。
「おいおい、流石に騎士になるは無理だろ」
「なるもん!」
「アリアナ、騎士になるのは大変な事なんだぞ」
「ガリンお爺ちゃんが慣れるんだから私にもなれる!」
「それはガリンさんに失礼よ」
まぁ今のガリン爺さんを見たらそう思うのも無理ないかもだけど、昔のガリン爺さんはちゃんと騎士してたはずだしなぁ。
「なる! 私も騎士になってキオと一緒にいる!!」
結局、アリアナは頑として騎士なると言って譲らず、ついでの俺の腕から離れなかった。
◆
「という事で騎士になる話をお受けする為に来たんですがこの有り様です」
「……そうか」
「……」
今もギューッと俺の腕にしがみ付くアリアナの姿に、流石の騎士も困惑を隠せないようだった。
「なんとまぁ、こんな若い少年が……」
騎士は肩を竦めると優しい口調でアリアナに話しかける。
「騎士になる事はとても大変な事だ。なろうと思って慣れるものではない。寧ろ君のような子は少年が帰って来る為の場所として村を守るべきではないか?」
「……」
騎士に諭されるも、アリアナは無言で目を逸らす。
「アリアナ、流石にそれは失礼だぞ」
俺が叱ると漸くアリアナがこちらを見る。
「だって、この人も女の子なのにそんな事言うんだもん」
「え?」
「なっ!?」
何言ってんだコイツとビックリした俺だったが、それ以上に騎士の方が驚きの声を上げる。
「って、え? どうしたんですか?」
アリアナが見当違いのにも程がある事を言ったから呆れたのか? 声だってどう聞いても男の声だぞ?
「何故わかったんだ?」
「へ?」
ここで初めて騎士が兜を外す。
すると中から綺麗な髪がふわりと流れ落ち、更にどう見ても女の人にしか見えない美人なお顔が現れた。
「え、ええ!?」
「何故私が女だと分かった?」
しかも声が女になってるー!!
「な、何で!?」
眼鏡をはずしたら美人は漫画でよく見たけど、何で声まで変わってるのさ!
「それはこの兜のお陰だ。この兜には声を変える効果が付いているのだ」
ボイスチェンジャー付き兜って事!?
「でも何でそんな機能が!?」
「女の騎士と知られると侮られて意見を聞き入れて貰えなくなる事が多いからな。それに女と見ると下卑た視線を向けてくるものも多い。それが味方でもな」
だから女騎士の中にはこうして顔と声を隠して男の振りをする人が居るのだとか。
ほえー、ファンタジーな異世界ならではのリアルバレ防止って訳か。
騎士の世界も世知辛いなぁ。
「でもなら何でアリアナには分かったんだ?」
「? すぐわかったよ」
マジかよ。俺の幼馴染は探偵か何かか?
「ふむ、どうやらアリアナには魔法の素質があるようですな」
と、これまで沈黙を保って話を聞いていたガリン爺さんが会話に加わる。
「騎士様、アリアナにも何かしらの資質があるようです。ここは一つ騎士学校の試験で試してみてはいかがですかな?」
「そうだな……」
と、ガリン爺さんの提案を受けて、騎士は考え込む。
「確かにこの少女が持つ資質は気になる。良いだろう。少年と共に騎士学校の試験へ推薦しよう。ただし、試験に落ちたら諦める事。この程度で落ちる用なら少年の足手まといに死かならないからな」
「決まりじゃな。では騎士学校の入学試験のある春まで儂がお主等をみっちり鍛え上げる。しっかりついてくるんじゃぞ!」
「はいっ!」
こうして、アリアナも俺と一緒に騎士を目指す事になったのだった。
「……ところで俺の存在、忘れられてません?」
『気を強く持て、息子よ』
しょんぼり……




