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女神の愛息は地方公務騎士を目指す  作者: 十一屋 翠


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第14話 人生の選択

新連載「異世界ボウケン配神! ~視聴者は全員神様!?~」もよろしくお願いします。

「少年、騎士にならないか」


そう言われた俺は、呆然と真っ暗な天井を見つめていた。

騎士の言葉は衝撃的過ぎて、冬の床の冷たさも気にならない程に。


「俺が騎士……」


 正直実感が湧かない。


「おれ、平民なのに」


 親無し、隙間風が吹き込むあばら家で日々の生活もおじさん一家の世話になりまくりな俺が?


『別に悩む事も無かろう』


『ん、立身出世のチャンス』


「それはそうだけど」


 俺が悩んでいると、父上達が悩む必要なんてあるのかと言ってくる。


「というか、そういえばあなた誰なんです?」


  そこで俺は気付く。父上以外の声の主に。


『ん、前に行った。姉上と呼べって』


 姉上って、そう言う事を言うって事は……


「やっぱ神様なんですか?」


『ん、その通り。私は魔法の神』


 今度は魔法の神様か。


『ちゃんと寵愛も与えてある』


「それってどんな加護なんですか?」


 何か神様も三人目になると慣れて来るなぁ。


『ん、魔法』


 魔法? 魔法関係の加護って事?


『あー、コイツの寵愛は魔法が使えるようになるってものだ。おい、もっと分かりやすく説明してやれ』


「んー。面倒。よろしく」


 もしかして頭の『ん』で感情の機微を表現してらっしゃる?


『なんで俺が。ったく、コイツから加護を授かった人間は才能や鍛錬を経ずとも魔法が使えるようになるってもんだ。寵愛はその度合いの深さが変わる感じだな』


「おおっ! つまり俺は魔法使いに慣れるって事!?」


『ただし使えるようになるだけで、魔法そのものの威力や精密性は本人の努力に起因する事には変わりない。お前の前世風に言えば木をこすって原始的に火を起こすか、機械でスイッチ一つで火を付けれるかの違いだ』


それめちゃくちゃ違わない?


『間違えるな、火をつける際の手間が違うだけで火を使って何かをする際は本人の実力に左右される。火加減が分からない人間が繊細な温度調節が必要な料理を出来ないのと同じだ。あくまで発動が容易になるだけだ』


 成程、使えるだけで使いこなせるわけじゃないって事か。


『ん、だからやる気があるなら魔法を教えてあげる』


「是非お願いします!」


『ん、むふー、なら私は今日からお師匠様。親愛を込めてお姉様と呼ぶように』


 何でそうなるん?

 ともあれ、異世界に転生して数年、俺は魔法を覚えるチャンスを手に入れた!

 おおう、ワクワクしてきたぞ!


『それはいいが、肝心の事を忘れてないか?』


「『何を?』」


『騎士になるかって話だ!』


「『あっ』」


 いっけね、魔法の事に興奮し過ぎて忘れてたわ。

 そういえばそんな話してたわ。


『それでどうするんだ?』


「どうと言われても、騎士なんて言われても実感が湧かなくて」


『なら騎士になったらどうなるか考えてみたらどうだ?』


「騎士になったら……」


 俺が騎士になったら、か。

 ガリン爺さんから聞いた話だと騎士学校っていう騎士を育成する機関に通う事になるんだよな。

 そんでそこで騎士として必要な力と知識を学び卒業する時の成績で進路が決まるって話だった。


「基本的には生まれ故郷の領主様の騎士団に所属されるか、生まれた村の駐在騎士になるんだっけ」


 この辺りはコネが重要らしいから好成績をとっても重要なポストに就くのは難しいらしい。


『お前の場合は高確率でこの村の騎士になるだろうな』


「俺がこの村の騎士に?」


『ん、そうなると思う。あの老騎士はもう戦えないから丁度いい』


「でも騎士様がガリン爺さんの代わりの騎士を国に申請するって言ってたけど」


『それでもこんな僻地に来たがる者はいないだろう。大した魔物もいない。手柄を立てて出世する事も出来ないからここに送られるという事は間違いなく島流しだ』


 人の故郷を島流しして欲しくないんですけど。


『その点お前ならこの村の住人という事もあって騎士になるならうってつけの人材だ』


 つまり最初から島流しが決定してる騎士って事ぉ!?


『勿論騎士学校での成績次第だ。お前が優秀な成績を残せば逸材を辺境で腐らせる訳にはいかないと要所に漬けられるだろう。そうなれば出世のチャンスだ』


 出世かぁ。確かに立身出世は夢があるけど、主と戦った時の事を思い出すと騎士としてキツイ戦いをする部署はちょっと遠慮願いたい。


『ん、だったらこの村の騎士になれば良い。ここなら例外が無い限り魔物も弱いし、給料は安いけどこの村で暮らすには十分な額が貰える。スローライフ』


「スローライフかぁ」


 それ良いなぁ。騎士としてまったり狩りや畑の世話をして、魔物が出たら騎士として華々しく戦う。


「って、まさに今日規格外の主に襲われたんですけど?」


『あれは例外だな。この辺りの魔物の強さであのクラスの主が出るのは他の土地でドラゴンが出る様なものだ。この辺りの魔物は最弱のゴブリンが平均だぞ』


 そ、そうだったんだ。って事は俺は初手例外の敵と遭遇したんか。

 となると問題はゴブリンだけど……


「ガリン爺さんもゴブリンは大した敵じゃないって言ってたしな」


 初めて遭った時は死にかけたけど、あれは小さい頃の話だ。

俺が騎士として鍛錬を積めば、ゴブリン達に後れを取る事もないだろう。

 それに今は俺が森の主な訳でゴブリン達もよっぽどのことがない限り逆らったりはしないだろう。


「うん、そう考えると村の騎士になるの良いかも」


 うん、騎士生活いいな。スローライフな田舎騎士。

 騒動らしい騒動もない平凡な生活。

 けど村の中ではひとかどの人物という立ち位置。

 割とありなのでは?


『決まったようだな』


「はい! 俺騎士になります!」


 こうして、打算だらけの決断を俺は下した。

 けれど俺は知らなかった。

これから訪れるのは、想定していた予想を遥かに超える計算外の事態に満ちた波乱万丈の人生になる事を。

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