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エージェントシックスの最期

作者: 雉白書屋

 とある国の砂漠に隠された軍事秘密基地に潜入したエージェントシックス。祖国を狙う、極悪テロ集団との激しい交戦の後、彼はついに核ミサイルと、その発射装置まで辿り着いたのである。しかし……


「オフィサー、聴こえますか? オフィサー・エヌ」

 

『ああ、聴こえているぞ、エージェントシックス。どうした? 核ミサイル発射の解除コードはもうそちらに届いているはずだが』


「ええ、今から入力するところです」


『頼んだぞ、あまり時間がない』


「はい。……あの、最終試験の時のことを覚えてます? 僕が正式にエージェントに採用されるための」


『ん、もちろんだ。数週間前だったな。君には試験終了後すぐに現地に飛んでもらい、負担をかけたな。しかし、試験で最高記録を叩きだしただけあって、素晴らしい情報収集能力だ。見事、テロ組織のアジトを見つけ出し――』


「ええ、まあ。それはいいんですけど、敵組織に潜入し、記録媒体を奪ってこいというあの任務、あれって全部嘘だったじゃないですか。その敵組織も追っ手も全部、我々の組織のメンバーで」


『ああ、試験だからな。それがどうした?』


「なんかなぁ、信用できないんですよねぇ……」


『え、今!?』


「はい。今、というかずっと」


『いや君、世界の命運がかかっているというのに、何を言っているんだ……』


「うーん、それなんだよなぁ……。ねえ、また僕を騙してませんか?」


『いや、目の前にあるだろ! 核ミサイルが!』


「これってドッキリじゃ」


『ないよ! あああ、もう時間がないんだぞ!』


「そうやって急かすところも怪しいなぁ。コードを入力したらパーンッとクラッカーが鳴ったりして」


『そのためにそんな大掛かりな仕掛けを用意するわけがないだろうが! 早く解除しないと、とんでもないことになるぞ!』


「試験終了時、僕にクリーム砲を当てたときのようにですか」


『だからそんなのとは比べ物にならない、え、まさかまだ根に持っているのか?』


「必死な思いで追手を撒いて、ようやく集合場所に来たら、ドーンって」


『いや、だからあれはさ、お祝い的なものであってだね』


「油断したねぇなんて、あなたは鼻の穴を大きくして僕に言いましたね」


『根に持っているなぁ……。いや、その、すまなかった!』


「クリームが耳の奥まで入ってて、それとろうとしてシャワーを耳に当てたら、今度は水が中に溜まっちゃって中耳炎になって、今も、あーあ、痛い痛い痛い痛い!」


『いや、しつこいなぁ……戻ってきたら全部聞くから、さあ、早く解除してくれ』


「戻って来たらって本当にあるんですかぁ? 僕が基地に帰ったらもぬけの殻で、机の上にサプライズ! なんて文字があったり」


『ないないない!』


「ついでに落とし穴なんかあったり」


『だからないって! 何なんだ君は、逆にドッキリを仕掛けられたいのか!?』


「いえ、あなた方が散々僕にやってきたことじゃないですか。落とし穴とか、歩いてたら突然バケツの水をかけてきたり、寝ていたら叫びながら部屋に突撃してきたり」


『い、いやだから、それはスパイとして、いついかなる時でも何事にも対処できるようになるための訓練であって』


「年末にその僕が驚いている映像を編集し、上映会を行い、みんなで僕を笑い者にしましたよね」


『だからそれはちょっと、イジりというか、ほら、君はエリートエージェントなわけだから他の職員と打ち解けやすいように、と考えてだね』


「先ほど、実は死んだと思われたエージェントファイブが生きていて、その裏切りが発覚したわけですけど、それも本当なんですかねぇ」


『本当って君、実際に会って戦ったんだろう? 奴は自分の死を偽装し、テロ組織に入り、そして今回の恐ろしい計画に加担したんだ』


「だから、それも全部仕込みじゃないんですかねぇ、そちらさんの」


『そちらさんって、いやいや、しないよそんなことは』


「まあ、本当だったしても、彼はどうして裏切ったんでしょうかね。散々嫌がらせ受けたからじゃないですかねぇ! 他のエージェントたちも! エリートだなんだ持ち上げておきながら、あなた方サポート職員に笑い者にされ! 現場で体を張るのは我々だけ!」


『それはその、すまなかった、エージェンシックス! だから、あ、時間がもう、ああ……』


「……ふふっ。サプライズ」


『……え?』


「ミサイル発射の解除コードはとっくに入力済みでしたよ。今のは僕たちからあなた方へのちょっとしたサプライズです」


『そうか……ははは、やられたよ。さすがは最高のエージェントだ。ん? 僕たち?』


「そう、こちらの映像を送りますね」


『一体、何を、え、エージェントファイブ!? それにエージェントフォーも! スリーにツーまで! 君たち、エージェントファイブに暗殺されたんじゃ』


「エージェントファイブは密かに僕らに接触してたんですよ。この任務のついでに、オフィサーたちに一泡吹かせてやろうってね」


『裏切ってなかったのか、そうか、はははっ、これはしてやられたな……そうか……』


「ま、これに懲りたら我々現場勢にもう少し敬意を払ってください。これからも共にいい仕事したいですし……あれ? オフィサー? 聴こえていますか? あれ、この音、え、空の、あれはミサイルじゃ、あ、あ」


『サプライーズ』

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