好みが和菓子・金魚VS洋菓子・サメの私達。コスモスのような関係とはどう言うことですか?
「帽子が引っかかってる!」
桜は、帽子が引っかかっている木に登ろうとした。それを見た私は、危ないと慌てて桜を引き止める。それでも桜は木に登ろうとしていた。私は偶々側にあった長細い枝が落ちていたので、即座にそれを拾った。
「桜、木なんか登らないでこれで取りなよ」
「凄い良い枝! 秋、ありがとう」
桜は高身長も活かして軽々と帽子を取ったのであった。桜は安堵したようで、屈託のない笑顔を浮かべていた。
桜は見ての通り大変活発で明るく、名前のようにみんなから好かれている。一方で私は名前である秋のように、いつも冷淡で人と関わるのは得意ではない。
何故私達がこのように気さくに話し合えるのかと言うと、それは単なる腐れ縁であるからとしか言いようがない。桜とは近所で幼稚園児の時からの幼馴染みなのだ。
性格は勿論のこと、好みも対照的。例えば、私は和菓子派だが、桜は洋菓子派。また、私は金魚などの小さな魚の方が好きだが、桜はサメなどの大きな魚が好きである。
桜とは仲が良いわけでも悪いわけでもない。
ただ桜が猪突猛進なところがあり、危険なことも顧みないため、私はいつも桜のストッパーだった。
「あの……その帽子、私のなんです」
「あぁ〜森さんのなのね。良かったわ、持ち主が見つかって。はいどうぞ」
桜は、森さんに取った帽子を渡し、その帽子を森さんが笑顔で受け取りお礼を述べていた。
森さんは、私達と同じクラスの子で、本を読んでいるところを見かけることが多い。
「それにしても2人が折角楽しそうに会話していたのに、邪魔してすみません」
「「え? 楽しそうに会話しているように見えたの?」」
森さんは申し訳ないと頭を下げたが、私達2人は全く何のことを言っているか分からず、思わず同時にハモってしまった。
「え? だって2人は親友でしょう」
「「そんなことないない」」
今度は森さんが驚いているが、またしても私達2人してハモってしまう。
「私、いつも2人のことコスモスのような関係だなと思って見ていたのですが……」
「「コスモス?」」
ここでもまた2人してハモってしまう。その様子に森さんはクスッと笑っていた。
「2人は性格や好みも真逆ですが、調和されているので。コスモスの花言葉は調和で、2人の名前を合わせると秋桜ですし」
今までは意識したことが無かったが、言われたらその通りだとお互いに思った。
「「そうね、私達はコスモスのような関係なの」」
再びハモリ、2人は笑い合った。
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