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【第21話】クラリーヌの授業

「ふう……。なんとか無事に準備体操が終わりましたね──」


新任の先生とはいえ、まさか準備体操でつまずくとは思っていなかった。

前途多難だ。


「──では、いよいよ今日の課題に取りかかりましょう。攻撃の基本については、すでに習っているとうかがっていますので、今日からは守備の基本を学んでいきましょう」


そのとき、生徒の1人が手を挙げた。


「先生! もうすぐ1学期も終わりです。今から新しいことを習っても、夏休みの間に全部忘れてしまうと思いますが!」


「……はい。いい意見ですね。そこで、みなさんには、今日お教えする技を夏休み中にしっかり復習して、完全にマスターしてきていただきます。2学期の最初に小テストを行いますので、そのつもりで」


「えーっ」

「宿題かよ!」

「テストいや~」


ブーイングの嵐。

クラリーヌ先生は泣きそうである。


そこで助け舟を出したのは、やはりクラスリーダーのエルミーだった。


「ねェ、みんな静かに! 先生が困ってるじゃないの! 今日の授業中にマスターしちゃえば問題ないでしょ! みんな授業に集中して!」


クラリーヌ先生は目尻の涙をふいた。


「ありがとう……えっと……」


「エルミーです」


「はい、エルミーさん。では気を取り直しまして、まずは、みなさんの習熟度合いを確認しますね。では……ヤニックさん」


「えっ、お、おお、俺!?」


いきなり指名されたので、思わずキョドってしまった。

というか、クラスリーダーの名前も知らない先生が、なぜ俺の名を知っているのだ。


「あなたがヤニックさんですか。ふうーん……へえ……」


「なんでしょう?」


「マ……いえ、校長先生から、あなたは大変優秀な生徒さんだと聞いています。10メートル先から、あのマトを狙うことはできますか?」


そういって、クラリーヌ先生は体育館の壁に貼られている半径1メートルほどの円形のマトを指さした。


「たぶんできると思うけど」


「じゃあ、やってください。……よいしょっと」


「よいしょ?」


クラリーヌ先生はなぜか必死の形相で砲弾を俺に手渡した。


ズシッ。

……重っ!

なんだこの砲弾!?


どうやら実弾の中でも最重量級のもののようだ。

こんなもの、勇者として未熟な高1の生徒がいきなり使ったら、腕をやられちまう。


いったい何を考えてるんだ、このエロリ……いや、クラリーヌ先生は!


「どうかしましたか? 早く打ってください。早く、早く」


なぜかワクワクしている様子の先生。


「はあ」


俺は小声でラケットにささやいた。


「コトネ、なんだかすげー重い砲弾なんだけど、打っても大丈夫か?」


「問題ない」


「じゃあ先生、打ちますよ!」


ラケットを振りかぶり、軽く砲弾を打った。


バシッ。


もっと腕に衝撃がくるかと思ったが、いつもと同じだった。

おそらくコトネの魔力によって衝撃が吸収されているのだろう。


ゴン!


まっすぐ壁に向かって飛んだ砲弾は、マトの真ん中にある「100点」と書かれた部分に命中した。


「おお-っ」

「すごーい」

「ああーん、もうカッコ良すぎ!」


とクラスメイトから歓声がもれる。

どうやらみんなは、今のが実弾だとは気づいていないようだ。


「ぐっ……なかなかやりますわね」


なぜ先生が悔しがる。

とりあえず、俺はみんながいる場所に引っ込んだ。


「では次に、カーブをかけて相手の虚を突く技も、前任の先生から教わっていると思います。どなたかに見せていただきましょう。えっと……ヤニックさん」


「えっ、また俺!?」


「はい、お願いします」


「はあ」


仕方なく、俺は再びみんなの前に出た。

すると、またクラリーヌ先生は俺に砲弾を手渡した。


軽い。

どうやらプラクティス砲弾のようだが、今度のは逆に、妙に軽すぎる気がする。


「では、やってください」


「やるって、どこを狙えば?」


「あたくしを狙ってください」


「いや、危ないよ先生。プラクティス砲弾だって、当たると痛いよ」


「うふふ。あたくしは先生ですよ。1年生の砲弾に当たるわけがないでしょう。ほら、しっかりとカーブをかけて狙ってください。まだ1年生なので、回転をかけることができれば、それでいいですから」


「はあ」


俺がラケットを振りかぶろうとすると、コトネがいった。


「待ってヤニック。その砲弾はあやしい」


「あやしいって?」


「通常のプラクティス砲弾はゴム芯に牛革を巻きつけてある。しかしそれは牛革ではなく、どうも紙のようだ」


「紙?」


「カーブをかけるには、砲弾の外側を薄くカットするようにラケットを当てなければならない。だが、紙だとしたら、破けてしまう」


「破けたら、中のゴム芯が見えるだけだろ」


「もしも中身がゴム芯でなかったら?」


「中身によるだろうな。……わかったよ。で、俺はどうすればいい?」


「ヤニックはカーブなどかけず、ふつうに軽く打てばいい。あとは私がやる」


「わかった」


俺はラケットを振りかぶり、先生の足元を狙って砲弾を打った。

インパクトの瞬間、外側の紙が破けないように気をつかいながら。


「ちょっとヤニックさん。なんですか、そのへなちょこサーブは。先生はカーブをかけなさいって……はうっ!?」


コトネの魔力の宿った砲弾はバウンドしたあと、急に進路を変えた。


「曲がった!? なんで!?」


必死に砲弾をよける先生。


先生の横をすりぬけるように飛んだ砲弾は、そのまま体育館の壁に当たった。


驚いたのは次の瞬間だった。


ドッゴーーーーン!


爆発音とともに、体育館の壁には半径2メートルほどの巨大な穴があいてしまった。

砲弾の中身は爆発物だったのだ。


「きゃーっ」

「なんだ!?」

「砲弾が爆発した!」


クラスメイトたちはパニック状態。

体育館は騒然となった。


「みなさーん、お静かに。壁は先生が弁償しますから、ご心配なく──」


いや、壁のことは誰も心配していない。

問題はなぜ砲弾が爆発したかってことだ。


だが、俺がツッコミを入れようとするのを封じるかのように、クラリーヌ先生は言葉を継いだ。


「──はいっ。では、次はいよいよ、今日のメインディッシュ! 守備の練習です」


いったいどうなるんだ、この授業は!?

『勇者をねらえ!』をお読みいただき、ありがとうございます!

ぜひ、下の☆☆☆☆☆から、作品の評価をお願いいたします。

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