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2nd stage ─新染レンは普通の生活に憧れる─ その3

一足先に教室を飛び出たシンヤは、目の前にいた学生に驚き急ブレーキをかけた。


「うおっ!?危ねぇ!」


しかしシンヤは勢い余ってその男子生徒に突っ込んでしまう。


が、その男子生徒は軽やかな足取りでひらりとシンヤを躱し、尚且つ転びそうになったシンヤの胸元に手を伸ばし腰を下ろして、寸前のところでシンヤを支えた。


「あ、ありがとう…」


抱き抱えられるような体制で、驚きながらその生徒をまじまじと見るシンヤ。


透き通るような白い肌。

艶のある綺麗な黒髪と、涼しげな目元。


吸い込まれそうなほど深く黒いその瞳もまた、シンヤの姿を映していた。


「いや…怪我はないか?」


そう言いながら、男子生徒はシンヤの上体を引き上げる。


シンヤと同じ身長、体躯に見えるが、鍛え抜かれた身体をしているのだろうということが所作の一つ一つから垣間見える。


シンヤは服を直しながら、男子生徒の首元のローマ数字でⅠと描かれた赤色のピンを見た。


「大丈夫だ!それより1年生か?俺はシンヤ、魚沼シンヤだ!よろしくな‼︎」


「…俺は牧野(まきの)。よろしく……」


物静かな生徒だ。

しかしどこかソワソワしているような。


「待ってよシンヤ君〜!」


自己紹介を終えると、『アイドル部』の部室からレンが飛び出して来た。


「レン…そうだ!早く行かねえと体験入部間に合わないんだった!」


「そうだよ!…て、あれ?はじめまして」


レンは牧野に気付き、ニコッと笑って会釈をする。

牧野は一瞬目を見開いたが、すぐに先ほどの調子を取り戻し、レンに軽く頭を下げた。


その不自然な一瞬の挙動をシンヤは見逃さなかったが、特に気にも止めずにレンの方を振り返った。


「よし!じゃあ部活回ってみようぜ!お前も早く部活探した方がいいぜ!」


シンヤは牧野の肩をポンと叩き、レンと一緒に階段目掛けて走り出した。

遠ざかっていくシンヤたちを見つめる牧野。


「おーい少年!廊下走るなって言ったでしょー!」


すると牧野の隣の教室の窓が開き、凛子が身を乗り出してシンヤたちに大声で注意する。


「全く…若い子は手が付けらんないねぇ…おや、君は?」


ヤレヤレと手をひらひらとさせていた凛子は廊下に立っていた牧野に気付く。


牧野は軽く会釈をすると、その場を立ち去ろうと一歩踏み出す。

そんな牧野に凛子はニコッと笑いかける。


「もしかして君…『アイドル部』の入部希望者かな?」


「…違います」


「じゃあ…裁縫部の?」


「……違います」


そのままその場を後にする牧野。

凛子は窓枠に頬杖をつきながら、去っていく少年の背中を見つめていた。


「なんだか…気苦労の多そうな少年だねぇ〜」

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