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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
道化終劇
48/50

道化と狂王

道化師は、自身の隠れ家へと帰還して、会議室と定めてある場所へと向かう。


「失礼」


短く謝罪を述べて部屋へと入る。

その部屋の中には、亜人種課の面々が今すぐにでも揃えて首を取りたいほどに有名な者達が揃っていた。


白スーツを血染めにするほど凄惨な殺し方をする、猟奇殺人者の伊藤いとう 守人もりと

その舎弟分である、髪を派手な金に染めた青年、宮塚みやつか 竜司りゅうじ

そして、数多の悪鬼達の犯罪幇助を行ってきた明導院みょうどういん 玄司郎げんじろう

亜人種課を裏切り、道化師の組織である劇団へと入った本多ほんだ 彦江ひこえ


更には───────二十年前に東京に大火災を起こし、民間人の大虐殺を行った男。

その髪は常に猛火の如く紅く、髪を全て後ろへとながしている荊棘いばらたつみ


そういった、顔ぶれの者達が入ってきた道化師の方へと振り向く。

その中で、伊藤と宮塚は怒気を浮かべた表情で道化師に向かって短刀を放った。

プロ野球選手のピッチャーよりも早い、その投擲が道化師の顔面へと迫り───────


「危なっ」


それを、道化師はなんなくとはじき飛ばし

た。

そんな飄々とする裏切り者に舌打ちをしながら、伊藤と宮塚は道化師を糾弾したのだった。


「テメェ……なんで斎藤を見殺しにした!?」


「そうだぜェ道化師よォ!!

ビビって逃げ散らかしやがって……エンコ詰めさせるぞゴルァ!!!!」


今すぐにでも自身を殺しに来そうな殺意。

それを、道化師は飄々と受け流して答えた。


「“予想外のイレギュラーがあったのです“

”かの作戦で鍵となる源 未音がいてね”」


「源……? 義博の倅か。

いやしかし倅はヨシタカという名前だったな。

となるともしや、アレか?」


怒り狂う伊藤なんかよりも早く、巽が問う。

僅かに口角を吊り上げ、思わぬ馳走にありつけるのではと嬉々として巽が答えを待ち望んでいた。

道化師が頷く───────


「まぁ、そうね。確かにアナタの子供はいたわ。

けれど、違うでしょボス?」


───────よりも早くに。

明導院がちらりと道化師へと視線を向ける。

その視線は牽制するかのように。

『逃走』は許されないと、道化師に釘を刺していた。


「貴方が逃げたのって……あの女のコ。

麻上光あさがみひかりちゃんがいたからでしょ?」


「やめろ」


道化師が明導院を制止する。

しかし、そんな道化師の答えを聞いて宮塚はさらに怒りをヒートアップさせた。


「なんだ、惚れた女でも居たってのか?

そんなんで斎藤を見殺しにしやがってよぉ……今まで我慢してきてやったが勝手すぎるなぁテメェ……いい加減にしねぇと殺すぞ!!」


「───────おい、竜司。

お前には昔言っただろう? あまり強い言葉を使うなと。

弱い犬程よく吠えるとはよく言ったものだとな」


「お、オヤジ……」


しかし、そんな荒ぶる業火の如き宮塚に、冷静に水を掛けて消火するのは巽であった。

宮塚を黙らせ、巽が道化師へと振り向く。


「オイ、おまえが女を見て逃げ帰る腰抜けの大将なのなら、オレは今すぐにお前が腰を抜かす原因の相手を問い質し……その相手の元へ行って拉致でも何でもしてお前の腑抜ける原因を摘むがどうする?」


「───────そうすれば、ワタシは貴方へ報復を必ず行う。

彼女に指一本触れたら貴様の倅を殺してやる」


仮面のような顔で彼の表情では巽は読み取れなかった。

しかし、明確に敵意を剥き出しにしたのは、その言葉で感じ取ったのだった。


「オレは倅なんぞ殺されてもいい。

何を躊躇うのかは知らんが、お前もオレも同じ殺戮者だ。

ならば振り切って、最期まで狂い踊れ。

好きな女がいるからとうじうじしていては道化師などという、大層な渾名に不相応だろう?」


巽の言葉を受け、道化師が沈黙する。

何も言い返さない道化師に巽は呆れ、背を向けて出口へと歩いた。


「さてと……オレはそろそろねぐらへ帰る。

来る日の為に集めたのだろうが……オレはやりたいように勝手にやるさ。

そうだな……まずはみなもと 義博よしひろの現在の実力を測らせてもらうとしよう」


そうして、王はその場を離れたのだった───────


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