陽射しが翳る
ヒロイン回?です
帰路を楓と共に着く。
彼女は、たまにオレへと視線を向けている。
何処か心配しているような視線、それはオレにとってはとても辛くて、傷かった。
だからだろう。自然と、楓に声をかけてしまったのだった。
「どうしたんだ?」
「……うん、未音が辛そうにしてるから大丈夫かなって聞こうと思ったの」
辛そう、か。
正直、かなり辛い。
オレは今まで、人を殺したモノに容赦はするつもりが無かった。
───────宇城琥珀や、田沼家といった、快楽的に人を殺す存在を許さないと。
「大丈夫……って言いたいんだけどさ。
多分、楓は怒るだろうけれど一つ訊ねていいか?」
「怒るけれど、いいよ」
温和な笑みを浮かべながら。
けれど、静かにギュッと握り拳となった彼女の手を見て。
覚悟して、オレは零すのだった。
「荊棘巽の息子、そんなオレがあの家族に助けて貰える価値なんてあった───────」
「ある、絶対に」
強く彼女が言う。
その瞳は、否定の言葉を拒絶していたのだった。
「殺人鬼の息子だから何よ?
貴方は、そんな父親を知らないっていうのに見ず知らずの人を助けて来た根っからの善人じゃない。
罪悪感からでもなんでもない人助けをしておいて、助けられる価値があるかないかで悩まないで」
その言葉に、とても胸が救われた。
厳しくも、包み込んでくれる母親のようなやさしさ。
とても、居心地のいい感覚でずっとそこにいたくなってしまう。
───────けれども、彼女はオレでない誰かと結ばれるべきなのだ。
正直、サッカー選手としての道を志すのならオレは彼女を一生を掛けて幸せにすると誓っていただろう。
だけど、オレは血みどろの道を選んだ。
殺し、殺されての道に手招きするようなことをしたくはない。
……本当は、もっと早くに彼女と別離するべきだったのだ。
しかし、オレが甘えてしまったばかりに今の同棲状態が続いている。
考えねばならないが、今はいいだろう。
今は、今だけはこのあたたかさに甘えていたい。
「楓、今日はどっかで食べて帰りたいんだけど構わないか?」
「……しょうがないなぁ。
未音が奢ってくれるのなら、いいよ」
温和な笑みを浮かべて。
彼女と肩を並べて道を歩く。
本当に、秋の陽射しのように心地が良い。
その陽射しを浴びたい、と思う者は少なくは無い。
「おい楓……誰だよ、その男は!?」
───────だから、それを独占しようとするヤツがこうして現れるのだった。
結構モテてそうな顔立ちのソイツは楓と顔見知りなのか、下の名前で呼んでいる。
……チラリと、楓に視線を移す。
彼を見る彼女の顔は、恐怖が入り交じって引きつった薄笑いを浮かべていた。




