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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
道化終劇
42/50

強くならず、強く在れ

ごめんなさい先週サボってました()

選考落ちたの悔しいのでもっと精進します

アレから、どれくらい時間が経ったのだろうか。

時計の時針が七へ指されていることから、少なくとも二時間は経った。

十二回程、だろうか。

彼の静かな水流のような槍捌きに圧倒され、床に這いつくばったのは。

───────ヒュン、と風切り音が聞こえる。

其れは、要による一撃の音だった。

彼は、地面に伏していたオレに容赦なく追加の一撃を加えに来たのだった。


「うおおぉぉぉっ……!?」


転がり、その一撃を回避する。

転がった勢いで身体を起こし、再び要と顔を合わせる。


「遅よう、ユメは見れたかい?」


ニコニコと、童に向ける慈愛の笑みを向ける要。

その手にある槍とはかけ離れた笑顔を平然と出せる事に戦慄し、背筋に冷や汗を流す。


「たった数秒でいい夢なんて見れないさ。

寧ろ、その木の槍がオレの頭をかち割る現実ユメが見えたよ」


「へぇ、素手でも高精度の未来演算が出来るようになったんだね。

やっぱり、キミの成長は素晴らしいね」


強がりを本当の事だと受け取ったのか、もしくは強がりだと見抜いな上で遊んでいるのか。

恐らく後者ではあるが、要が褒めてくる。

意地の悪い、品性がない笑みとは対局の上品な、穏やかな笑みを浮かべたままの彼は本当にある種の怖さがあった。


「それじゃあ───────いくよ」


その掛け声と共に、直線二メートルの距離を一瞬で彼は詰め、弧を描くかのような軌道で槍が放たれる。

後ろへ跳躍し、回避───────そんなことは予想済みであったようだ。

槍の軌道は弧を描くと見せかけ、平仮名の「つ」のような軌道で後ろへ回避行動をとったらオレの腹部にヒットするのだった。


「ぐぅ……っ!!!!」


「あらら、どうやら思っていたより高精度の未来演算は出来ないみたいだね」


残念そうに呟き、要が槍を床に置いて座る。

俺はまだ出来るし、なんなら続けて欲しい。

声を掛けようとした刹那、要が先手を打つのだった。


「多分、恋人が待っているよ」


恋人……では無いが、確かに今日は同居人のかえでがご飯を作って待ってくれているだろう。

しかし、本人にはもう帰るのは遅くなると伝えている。


「楓にはもう、連絡してる。

あと、アイツは恋人じゃない」


同衾どうきんしているのにかい?」


───────その言葉を聞いた瞬間、オレは起き上がり刹那で要の胸ぐらを掴んだ。


「なんで知ってる?

監視カメラでも付いてんのか、ならそれを壊す。

木刀は使いたくないから、素直に教えてくれるとありがたいんだが」


「キミの事はこの家に引き取られる前に調べた。

一つ、キミの復讐者となった経緯を。

二つ、現在のキミの人間関係全てを、小動物などに呪術を掛けて視界をジャックしたりして、調べたよ。

三つ、キミがこの家に嫌われている原因、そしてその起源を。

あとさ、なんであんな可愛い子が同じ布団にいるのに君は手を出さないんだ? 枯れているのかい?」


「彼女は確かに好きだ。けれど、オレが楓と添い遂げる資格なんてあるわけないだろ。

つーか……オレが嫌われてる原因なんて、鬼と血の混血児だからだろう?

そんな分かりきったこと、調べる必要はないだろうに。苦労様だよ、ホントにさ」


「本当に、そんなことで嫌われていると思っているのかい?」


要が、目を妖しく光らせる。

すると、オレの身体はまるでコンクリートブロック十個を乗せられたかのように重力がかかり、床に倒れ込む。

この目……まさか呪装具か!!


「フゥ……ゴメンね、少し重くしたよ。

こうでもしないも拳が飛んできそうだったからね。

さて、話を戻そう。

キミは、たかだか混血児で嫌われていると思っているようだが違う。

四天童子、という言葉に聞き覚えは?」


「鬼の中でもその名を持つのなら子供だろうと人権が与えられていない鬼の家系、その四つの家の総称だったよな?」


「正解」


にこやかに頷き、オレを真っ直ぐ見すえる。

そして、要が告げた───────


大嶽家おおたけけ穴熊家あなぐまけ虎熊家とらくまけ酒天家しゅてんけ

その四つのうち、大嶽家の代わりに四天童子となった荊棘家いばらけ

そしてその発端となった荊棘巽いばらたつみ

キミはそこの息子───────」


「喋り過ぎだ、小童」


告げ終えると同時に、義博が道場に姿を表す。

……荊棘巽。

オレが生まれた日に、暴力団組織を複数率いて東京の人口の半数を殺害した事件、通称百鬼夜行の主犯とされる鬼だ。

成程、どうりであんな扱いだった理由ワケだ。

殺人鬼の息子なんて厄ダネなんて蜜を与えてから、じわじわと絶望させてやりたいに決まっている。


「……今日は帰れ。

いずれ、またこのことは話す」


義博に言われるがまま、オレは靴を履いて外へ出た。


空を仰ぐ。

最低な殺人鬼、その子供であるオレ。

その事実を知り、どう受け止めればいいのだろうか。

……オレは、あの家族に救われて良かったのだろうか。

寧ろ、あの家族の居場所を巣食ってグチャグチャにしてしまったのでは無いだろうか?

真っ暗。何も見えない、答えも道も。


門が開く。

そこには、


「やっぱり、ここだと思った。

ほら、帰りましょ未音みおと


楓が、屋敷に入ることなくオレを待っていたのだった───────




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「余計な事を言ったな要。

その事実は、アレに知らせてはならぬと云うのに」


要を糾弾する義博の視線は鋭く。

今にも腰にある刀を抜き、要を切り捨てようとしていた。

そんな、静かに怒り滾る義博を冷静に要が応えた。


荊棘巽臣いばらたつおみ。この名を教えなければいいのでしょう?

しかし全く……貴方も素直では無いですね。

折角、久しぶりに顔を見せてくれたのに照れくさいのかあんな暴言を吐いて。

義貴くんだって、今は訓練を積ませてあげているではないですか」


「……アレを鍛えさせているのは人手がいるからだ。

十月、三十一日。

道化師という者が未曾有の虐殺を行うというのだ。

心苦しいが、アレにもちと力をつけてもらわねばなるまい」


義博が槍を拾い、掛けていた場所へと戻す。

頭を下げ、要が礼をしながら未音の感想を述べるのだった。


「まぁでも、貴方の睨んでいた通りですね。

彼は、身体能力は全て最大値。

魂を喰らえば上限は増えますが……あっという間に埋めるでしょうね。

そして技術も。恐らく彼は目で追った技全ては盗んで行った。

鍛える所など、ほぼ無いに等しい」


「あぁ、そうだ。

僅か半年。奴はそれだけの短期間の修練で身体能力を最大値にして見せた。

……凄まじい才能だろう、悔しいがな」


くるりと玄関へと義博が向かう。

草履を履いて、要にチラリと視線を向けた。


「……そろそろ飯の時間だ。

遅れるなよ、息子よ」


「分かりました、向かいますよ。

……ほんと、素直では無いですね」


義博の言葉に、要が薄らと笑みを浮かべ後を着く。

戸が閉まり、部屋が暗転する。

そこに月光が差し込まれる。

その月光に、一人の女性の写真が麗しく輝くのだった。

未音くんの掘り下げ回です。

次は楓さんのヒロインちからを発揮したいところではあります。

あと、未音くんはヘタレです

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