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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
道化終劇
40/50

穏やかな蜂

新キャラ出ます

 源の屋敷の前に着く。

 家を囲う塀と、目の前にある門はとても威圧があり他者と親しむ気配など微塵も感じられない。

 ……正直、この冷たい空気は苦手だ。

 心が失い、ただの獣になりそうになってしまいそうになる。

 門の前に立つ男がオレを見るや否や、下を鳴らしすっと横へと退く。

 頭を下げ、門へと手を伸ばす。


「……死んでると思ったのに残念だ」


「本当に残念だったな、この通り元気だよ」


 毒を投げる男に、堂々と生存報告をして門を空け中へと入る。

 すぐに屋敷のはずれにある道場へ向かおうと左に足を動かす。

 その時、


「───────やぁ、待っていたよミオト君」


 透き通った、穏やかな男の声が聞こえた。

 声は後ろからだった。直ぐに振り返るとそこには見慣れない青年がいた。

 穏やかな中性的な美形。

 黒の髪を伸ばし、後ろを馬の尾のように結んで耳には複数のピアスが空いているその青年は初めて見る相手だった。


「……誰でしょうか?

 何故、オレの名前を?」


「それは私が教えたからだ」


 道場の方から歩きながらオレに説明するのは義博であった。

 鷹のように鋭い瞳でオレを睨みながら、青年の傍まで歩く。


「コレの名はみなもと かなめ

 源家の次期当主として迎えた養子だ」


「なっ───────!?」


 驚きを隠せず、狼狽えてしまう。

 そんなオレを見て、微笑みながら要が手を差し伸べた。


「宜しく、キミには前々から興味を抱いていたんだ」


「宜しく……てっきり、当主は義貴にするもんだと思ってたけどな」


「義貴を?」


 義博が鼻で笑い飛ばし、義貴の部屋の方へ視線を向けた。


「アレは才能がない。

 ……近いうちに家からも追い出すつもりだ」


 義博の無責任な発言に、苛立ってしまった。

 確かに義貴には、サッカーシューズをズタボロにされたりと姑息な嫌がらせを受けていた。

 だが、それは彼もまたはみ出しものとして扱われていたが故にとる行動だった。

 ただ、鬱憤を晴らしていたにすぎない。

 その鬱憤の元を作ったのは他でもない義博だ。

 だというのにこいつは、最後まで面倒を見ずに野垂れ死なそうとしてやがる。


「アンタの実の息子だろ。流石にそれはないんじゃねぇか?」


「ならお前の家で面倒を見ろ。

 彼奴は最近は女に飢えている、姪に手を出すかもしれんが……奴を憐れむなら許せるだろう?」


「オレは面倒を見るつもりだ。

 楓に手を出させないように監視もする。

 けれど、楓にまだ聞けてないから待ってくれ」


「人の許可を取らねばならんとは……噛みつき、即答しただけあって無様だな」


 嘲笑する義博の顔に一発殴り込んでやりたい。

 なんだって、頼み事をしようと思ったのにその決断を後悔させる出来事を作るのだろうか。

 拳を握り、本気で義博を殴ろうか思案する。


「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ二人とも。

 ヨシヒロさんも意地悪な事を言わないで。

 ミオト君は頼み事あって此処へ来たんでしょ?

 それなら、喧嘩を売らずに恩を売りつけた方が得でしょう?」


 しかし、そんなとこを要が割って入って義博を諌め、オレを宥める。


「……貴様はこの家に来てからまだ日にちか経っていないからな。

 分からんのだろう、コイツの思考が。

 多方、事件を起こして死んだ友を助けれなかったことを悔い、それを切っ掛けに再びこの私に稽古をつけろ、と言いたいのだろう?」


 その通りだ。

 付け加えるなら、今日の老人に逃げられたヘマが決定打となった。

 もっと力をつけないと、伊藤には届かないだろう。

 普通の筋トレじゃ伸び代にも限界がくる。

 それを悟って、記憶を探っていたら高校の時におこなった半年間の修行の成果は凄まじいもので、その時点でオレは今の身体能力とほぼほぼ変わらないくらいにまで伸びたていたことを思い出し、それならば義博に頼るしかないと思ったのだった。


「その表情を察するに図星のようだが……生憎と私はその気がない。

 当然だ、後継者もいるというのに何故わざわざ貴様なんぞをもう一度鍛えねてやらなければならん?」


 ……悔しいがその通りだ。

 義博にはもうオレを鍛える理由がない。

 悔しいが諦めて、別の誰かに鍛錬をつけてもらおう。


「待ってください。

 ミオト君の稽古の件、このボクにつけさせてください」


「なに?」


 しかし、そんな矢先に予想外にも要が申し出てくれた。

 要の言葉を訝しんでか、義博が彼を睨みつけた。


「どういうことだ要。説明しろ」


「ワケというワケはないです。

 彼の実力がどれほどのものなのかが気になった、それだけです。

 ……それにアナタの後継者となればボクは子に、鬼狩りを志す者達に教鞭を取らねばならない。

 その練習も今からしておきたいのです」


 義博が少しの間、目を伏せた後に


「良かろう。要、貴様に一任する」


 そう言い残し屋敷の中へと入っていくのだった。


「じゃあ行こうかミオト君」


 要の後を付いて歩き、道場まで歩く。

 道場へ入るや否や、要がゆっくりと口を開く。


「───────済まないね、ウチのご当主が変なことを言って。

 彼はキミ達の理になるように動いているつもりではあると思うんだ、それは分かってあげて欲しい」


「……努力はするよ」


 オレの返答を聞いて、要が満足気に頷く。

 そんなよく分からない彼は壁際に飾ってある二振りの木刀を手に取り、一本をオレに投げてきた為、その木刀を受け取る。


「先ずは、キミの全力を見せてくれ」


「それなら、槍じゃダメか?

 槍は刀と遜色かな───────」


「キミの全力は、刀だろう?

 手を抜かれちゃ今の限界は分からない。

 さ、やろうか」


 本当に、彼はオレの全力のみを望んでいるらしい。

 ……気は乗らないが、やるしかない。

 時刻を見るともう既に十七時十七分だった。

 明日も仕事がある、そんなに長居はしてられない。


「”鬼灯鳴らせ“」


 短く、唱える。

 そして要に一直線を描いて奔る───────




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「───────あぁ、目が覚めたかい?」


 目が覚めると、要がオレの横に座っていた。

 横たわっている状況を見て、オレは負けたのだと認識した。


「いいや、負けてないよ。

 キミの完勝さ」


 要が自身の首に手を当てる。

 その寸前、彼の首は赤紫に変色しているのを見逃さなかった。


「……やっぱりか。悪い、要さん」


「気にしなくていいよ。むしろ嬉しく思っている迄あるんだ、ボクは」


「嬉しい?」


 そう、と要が頷く。

 その口元は嬉しさのあまり笑みがこぼれてしまっていたのだった。


「……後で話そう、さて。

 次は槍でお願いするよ」


 そう言い、彼は槍をオレに渡す。

 構えて、オレは要を睨む。

 要も刀を構え、オレへと視線を向けた。

 上段の構えと共に向けられる敵意のない、値踏みをしているかのような視線。

 それが気になりながらも、オレは要へと踏み込んだ。

 間合いは一瞬で埋めれる。

 その間に、オレは要の行動を把握していた。

 彼は横に一閃されるオレの槍をピンポイントに打ち落とし、足で槍を抑えてから脇腹に一撃を叩き込む。


 横へ一閃。

 ほら、予想通り一振で槍を打ち落とす。

 足で抑える、それも行った。

 それならば後は脇腹に来る一閃を受け止め───────


「甘いね」


 そう思ったオレを一蹴し、要はその軌道を変えてオレの顎へめがけて一撃放った。

 対応しようと腕に命令を送った頃には既に、木刀が顎へ直撃していた。


「ガっ…………!!」


 空を舞い、地面へと衝突する。

 起き上がろうとした矢先、胸に木刀を突きつけられる。

 要の眼は『これでキミの負けだ』と、告げていたのだった。

 逆らう気もなく、オレは両手を上げて降参を顕した。


「初撃があまりにも軽かった、まるで分かっていたかのようにね。

 だから、試したのさ。

 多分君の見えて未来はこうだろうなって、絵図通りに動いて君が違和感を持つか否か、ね。

 ……うん、やっぱりその未来演算に頼りすぎだ」


 要がオレに手を伸ばす。

 その手を取って、立ち上がると要が続きを話し始めた。


「源家は自身が極限まで鍛錬した武器を持てばあまりに正確な未来を演算することが出来る。

 未来視のようなあまりにも正確すぎるその演算は、確かに強力だ。

 しかし、その事を知る者たちは意味をなさなくなる。

 未来を演算してるはずだからもしかして、と対策されてるはずだから……と思考のイタチごっこが始まるからさ」


 確かに、源家は有名な鬼狩だ。

 未来演算が知られている、なんて可能性は大いに有り得ることである。


「なんで……キミには槍術を叩き込んでもらう」


 要が床に転がる槍を取り、構える。

 そして───────オレへ向けて矛先を向けた。


「キミは何も持つな。

 動きを感じ、受け止めるんだ。

 いいね?」


 先程までの穏やかな笑みとは一転。

 その笑みは、毒のような殺意が含まれていた。


新キャラの要くんですが、本来は六章に登場する予定でしたがちょっと引っ張ってきました。

義博が稽古つけるイメージがなかったです、ハイ(正直)

彼はまだ色んな設定隠し持ってますのでお楽しみに


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