魔法使いの夜をプレイするので二週間休みます
オレたちの黄金時代が帰ってくる……!!
「───────それ、は」
坂本が未音に動揺する。
腕に宿る『荊棘』。
そして、本人は気付いていないが『荊棘』が現れた時に茶色から、業火のような橙色へと変色する特異な髪の毛。
その特徴は、彼が敬愛してやまない人物と一致していたからであった。
動揺していた坂本だったが、ふと横から刃が迫っているのを認識し、即座にしゃがんで回避行動を取った。
刃が頭上を通過し、無事に奇襲を回避した。
しかし、そんな囁かな安らぎは束の間。
今度は自身の足首に強烈な痛みが走った。
骨折した際の痛み方に坂本は思わず歯を食いしばり、足を抑えた。
「なんだ・・・・・・足が、痛む・・・・・・!?」
突如として襲い掛かる脚の痛みに、困惑する坂本。
敵である未音の居場所を把握するべく顔を上げる。
しかし───────先程まで居たはずである未音の姿は見えず。
代わりに、自身の喉元に熱感を感じたのだった。
熱感と共に、呼吸ができないのを認識した坂本は、結論を出した。
(なるほど、相手に幻覚を与える異能か。
異能の中でも特に珍しく、強力なモノを授かるとはさすがあの方の───────)
地面に横たわり、いずれ絶える生を最後に噛み締めながら坂本がふと、目線を逸らす。
そこには、道化の格好をした自分達の今の王がいた。
『───────では今日の午前に、御茶ノ水のコンビニの前に待機しておいて下さい。
貴方の目撃情報を聞いた亜人種課の連中が貴方の命を奪いに来るでしょう。
しかし、そこをワタシが奇襲を仕掛けます』
道化師の言葉が過ぎる。
間に合ったと、よく間に合わせてくれたと坂本が安堵した。
しかし、その直後に道化師が深く詫びるように頭を下げて、背を向けて走り去った。
「な・・・・・・で・・・・・・」
思わず、坂本が声を漏らす。
なんで逃げるのだと、坂本が振り絞って問う。
だが、声は届かず道化師はさらに姿を遠くへ消す。
(───────これは罰なのか?
田沼家の時に、仲間を見捨てて逃げ去った俺への罰なのか?)
そうだろう、そうに違いないと坂本が断定し、嗤う。
安らかとはいえない、贖うための冷たい孤独死。
その過酷さを土産に、坂本は地獄へと旅立とうと決めて息を引き取った───────
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「えぇ・・・・・・未音っちのあの出鱈目な強さはなんなんですかねぇ」
「風魔といい・・・・・・今年の新入りは強いな。
因幡や麻上巴も強くはあったが・・・・・・。
流石はあの家出身だな」
「源家・・・・・・のことですか?」
光がふと、未音の並外れた強さに感嘆と畏怖が混じった声を漏らしていた延時と斎藤に訊ねる。
未音の姓の『源』家とは鬼狩りの名家である。
光はその源家に鍛えられたから、あそこまで戦闘能力が高いのだろうと予想していた。
しかし、
「いんや?」
斎藤が首を横に振り、あっけらかんと
「アイツ、ホントの出身はして───────」
「すいません、死体の後処理お願いします!!」
言い切る前に、怒号にも似た未音の声が耳に響き渡る。
未音の急な要求に、三人は目を丸めて驚いた表情で彼の視線を追う。
その先には、背を向け走り去る老人がいた。
「爺さん一人、何を血色変えて追ってんだ?」
そんな疑問を口にする齋藤と、
「いや、変装か何かをしていると察知したのではないか」
刀を抜き、周囲を警戒する延時。
そして、何も言わずに光が未音の元へ駆け出す。
「麻上くん!!」
延時が呼びかけるが、光は足を止めることは無かった。
すぅ、と一呼吸おいてから頭をクリアにした齋藤が、無線を耳に当てながら延時に声を掛けた。
「ノブさんは彼女の後ろお願いします。
俺は死体の処理と、増援要請だけしとくんで!!」
「助かる、すまん!!」
延時が走り、光の後を追う。
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「な・・・・・・で」
坂本の驚く様子に違和感を感じたオレは、周囲を見渡す。
坂本は最期、視線がオレではなく別の方へと向いていたからだった。
オレの能力にたい惑わされた、そんな訳では無い。
アレは、微かな悲しみが籠った目だった。
とすると、仲間に見放されたとオレの中で結論が出るのはすぐだった。
正解だと、背を向け逃げる老人が証明している。
すぐに追わないと───────!!
「すいません、死体の処理をお願いします!!」
すぐに老人の背後を追うべく、走る、走る、走る。
その速さは、車のような速度を保ち確実に老人との差を縮めていく。
と、思っていたが現実は違った。
老人は車すら上回る走力で、オレとの差を空けていくだけだった。
「クッ・・・・・・ソォッ・・・・・・!!」
更に早く、もっともっと早く。
脚に命令するが、言う事を聞かずに寧ろ脚の力が抜けていく。
このまま逃してしまうのだろうかと考えると、悔しすぎて吐きそうだ。
藤也を死なせてしまってから、筋トレやランニングを何時もよりも倍こなして多少は伸びていると思っていた。
その成果を今、此処で出さずに何処で出せれるってんだ・・・・・・!!
歯を食いしばりながら、コンクリを踏み込む。
その瞬間だった。
───────ピキリ、と骨の悲鳴が身体中に響き渡る。
悲鳴だけでなく、痛みでさらに足が抵抗してくる。
これ以上はダメだと、脳が警報を鳴らす。
がくり、と足が崩れて地面に伏してしまい老人の姿が遠ざかる。
敵勢力を取り逃がしてしまう、どうにかしてアイツの脚を止めないと。
どうするか悩んでいるうちに、
「待って!! ごめんなさいお爺さん、待って欲しいの!!」
後を追っていたのか、光さんが大声を出して老人を呼び止めようとする。
・・・・・・人が良すぎる、止まるはずがない。
そう思っていたオレの予想に反して老人はピタリ、と足を止めて光さんへ視線を向ける。
その視線は悲しみが含まれていて、そして僅かに怒りも含んでいた。
「貴方・・・・・・道化師なの?」
光さんの問い、そこから間が空いて。
老人が指をパチン、と鳴らした。
その直後に、道路が含み上がり巨大な壁となって塞ぐ。
それはもう、正解だと答えているようなものだった。
「藤也の仇が・・・・・・!!」
歯を食いしばり、地面を殴る。
悔しい、悔しすぎる。
どうにかしてもっと力をつけないと。
「・・・・・・やっぱり、貴方なのね」
どこか含みがある言葉を光さんが紡ぐ。
その直後に、ノブさんが後ろから現れて、
「麻上・・・独断、先行は・・・・・・危険だ」
息を切らし膝を崩してしゃがみこんだ。
この後は死体の処理を行い、事務作業を終えて家へ帰るのみだ。
だが、楓には『寄り道をする』とだけ伝えオレは源の屋敷へと向かうのだった───────
コマドリが羨ましい、ジブンもマイ天使に雑に扱われたいッス




