数歩下がって前へ進む
宣言通り未音くんパートです
「すいません、麻上・・・麻上巴はいますでしょうか!?」
ニュースを見て、すぐに亜人種課まで駆けつけたオレはドアを開けるや否や、オレはすぐに麻上の事を訊ねる。
麻上がクビになっていたとしたら、オレの伊藤への近道が遠くなってしまう。
出来れば、遠のいて欲しくはない。
何故ならオレは、伊藤を一刻も早く殺したいからこの道を決めたからだった。
「アイツはもう、さっきクビになったわ」
しかし、オフィスにいる光さんに冷たい事実を告げられる。
「クソ・・・・・・伊藤・・・・・・!!」
近くの机を殴り、歯を食いしばる。
アイツに殴られたり、罵倒されながらも近道であると信じて黙っていた。
それが、水の泡となったオレは正直、苛立ちを発散せずにはいられなかった。
・・・・・・だが、それもこれだけで終わらせて落ち着こう。嘆いたって、怒り狂ったって過ぎたことは帰ってこないのだから。
息を整えて一旦冷静になろうと努める。
「・・・・・・・・・・・・おい、源。
言い辛いが、そこは私の机───────」
「あ、すいませんノブさん!!」
そんな矢先、言うタイミングを待っていてくれたのか、ノブさん・・・・・・延時さんが申し訳なさそうにオレが殴った机に指を差す。
直ぐに謝り、オレは拳を机から離した。
「ノブさん朝っぱらからドンマイっすねー。
だーいすきな熊野先輩にもキツく言われるし」
「な、あまり大声で言うな斎藤!!
いや、ホントに頼むから!!」
どうやら、朝からノブさんは何かあったらしく、ノブさんの後輩である斎藤さんが茶化す。
熊野さん、後ろにいるということは言わないでおこう。
ふと、熊野さんと目が合う。
人差し指を口元に当て、『言わないでね』とジェスチャーを送って熊野さんが足音を鳴らさずにその場から離れる。
「本当にすみません。
ちょっと、伊藤と距離が空いた気がしたんです」
……そう、伊藤との距離が遠くなった。
だけれど、今までと変わらずに努力を続ける。
幸い、後一週間もしないうちに”劇団“の連中がうちを攻めるって噂がある。
その組織には伊藤が所属しているという情報はある。
後は、その日まで待ち続けのみだ。
「未音、少しいいか?」
「玄人サン、なんでしょうか」
玄人さんに呼ばれ、振り返ると彼はスーツで身を固めてら片手にはビジネスバッグを提げていた。
普段、玄人さんは犯罪を犯した鬼・・・・・・亜人種なんかの相手をしている。
だが、それと同時に叔父であり亜人種課の中で最高権力を持つ亜人種課所長の煌月灰利さんが本来行うはずの会議などの出席なども行っていた。
灰利さんは何をしているのか全く分からないが、熊野さんいわくつい最近は美女を脇に抱えてネオン街を歩く姿を見たとか。
「今日で君はソロとなってしまった。
生憎、パートナーとして配属できる人材も風魔が長期休暇の為いない」
「・・・・・・そこでだ。
偶然にも、私は今日から二、三日ほど出張を強いられてね。
来年になって後輩を迎える時に備えて、私の助手の光くんを今日から風魔が戻ってくるまでパートナーとして、教えてやって欲しい」
そんな、意外なことを玄人さんが頼んできた。
蒼龍は今、ドイツにいる。
つい最近、弟さんらしき人物がドイツにいると情報が回ってきたらしく、真偽を確かめるためであった。
その彼が帰ってくるのは十月三十日・・・・・・四日後だ。
それからは蒼龍とパートナーになるのだ。
多分、これはほぼワンマンで捜査とかを行っていたオレに、今一度二人一組の捜査に慣れてもらおうと考えた、玄人さんの配慮なのだろう。
そう考えると、断るなんて恩知らずなことはしたくない。
「任せてください!
えっと、危険な戦闘とかは避けてもらった方がいいですか?」
「いや、彼女はサポート寄りだからバンバン出してくれ。
君なら守りながら戦えるだろう?」
言いながら、玄人さんが床に寝かせていた槍を取り、オレに渡す。
「私が幼い頃に使っていた呪装具だ。
お礼の代わりにあげよう、受け取ってくれ。
呪いが薄いから、身体能力の向上しか出来んがそれでも大丈夫か?」
「全然大丈夫です!!」
槍は嬉しい。
なんせ刀と違って安定するからだ。
そういえば幼い頃って、だいたい何歳からだ?
うっすらと柄に血液のようなシミができてるし、鬼狩りもしていたということだろう。
ふと、気になったし尋ねてみよう。
「あの玄人さん。
玄人さんってそういえばいつから鬼狩りの仕事を?」
「六歳からだ。その時点で私は並大抵の鬼より強かったからな」
・・・・・・・・・・・・なんというか、次元が違うのを感じた。
「それでは頼む、未音」
言い残し、玄人さんが姿を消す。
後ろで見ていた齋藤先輩がぽつりと、
「いいなぁ、俺もあの禁呪ほしーなー。
・・・・・・寝坊して説教されることも無くなるし」
しみじみと、連日寝坊中の斎藤先輩が呟くのだった。
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捜査の仕事は現在、オレには回っていないので光さんが作った記事の確認や、掃除などの雑務をこなしながら事務室で待機していると、電話が鳴り響く。
近くにいた熊野先輩が受話器を取り、通話を始めた。
「もしもし。
・・・・・・それは本当!?
分かったわ、すぐに出動させる!!」
受話器を置き、先輩がオレに振り返る。
「・・・・・・田沼組の生き残りで現在は『劇団』の幹部、坂本 拓馬がいたらしいわ。
二人とも至急向かって。
スカイツリー近くのコンビニにいるらしくて現在、延時と斎藤くんが尾行中よ」
「分かりました、麻上さんを見学させてもよろしいでしょうか?」
元々、血腥い職場だ。
早いうちにそういった、死体とかに慣れてもらった方がいいだろうと思い、熊野先輩に訊ねる。
「元よりそのつもり。
くれぐれも、刀は使わないようにね」
「分かりました、光さん行こうか」
「うん、未音くん!!」
光さんを連れて、オレは事務室を後にする。
……よし、実戦だ。
考えなくちゃならないのは、光さんの殉職を避けること。
玄人さんから預かった大事なパートナーだ。
殉職は勿論、怪我すら負わせるわけにはいかない。
車に乗って目的地へと向かう。
亜人種課はパトカーは所持していない。
それは、単にこうして姿を隠している鬼に逃げられる可能性があるからだった。
車種はパトカーとは同じではあるため、クラウンを見たら指名手配されてる鬼たちは警戒しているみたいではあるが。
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「───────来たか。こっちだ源」
目的地より少し離れた地点で車を停め、あとは小走りで尾行を続けていたノブさん達と合流する。
「あそこだ」
ノブさんが指を指すと、その先には手配書通りの、逃亡中の男がいた。
コンビニからほんの少しだけ離れた十字路。
その手前を坂本が誰かを待ち構えるようにずっとその場に止まり、立っていた。
坂本は伊藤に次ぐほど獰猛かつ、強力な悪鬼だ。
先輩達も一週間後にある作戦を考慮して、負傷をしないように亜人種課の中て比較的身体能力の高いオレを呼んだらしい。
「どうする?
向こうは警戒していないみたいだが」
「とりあえず、オレが出ます」
「未音っち、武器は?」
訊ねる斎藤先輩に、オレは光さんに持ってもらっていた槍を見せる。
「護身用に持ってもらってます。
・・・・・・人が多いですし、武器は持たない方がいいかなと思いまして」
「いやいや、命を大事にしろ?
市民優先はいいことだけどさ、イッチャン大事なのは自分の命ね?
麻上チャン、武器は」
「鞭はあります」
「・・・・・・・・・・・・にあ───────あいたたたたた!」
「それ以上はやめろ斎藤!
源、麻上君には私の武器をあげよう。
それと麻上君、いくらなんでも鞭は護身用すぎる。
ナイフでもいいから、そういった呪装具を買いなさい」
斎藤先輩の頭を掴んみながら、ノブさんが麻上さんに武器を渡す。
「あ、その・・・・・・ごめんなさい、刃物はトラウマが・・・・・・」
しかし、麻上さんが口元に手をあて呪装具の受け取りを拒否した。
「ホントにごめんなさい・・・・・・正直、槍もあんまり気分が良くならなくて・・・・・・」
「なら───────」
罪悪感を抱きながら、光さんから槍を奪うように取る。
玄人さんは知っていたろうが、こればかりは仕方がない。
なんせ、銃の呪装具はこの世に存在しないのだ。
それさえあれば、解決する話なのだが呪装具は東洋の武器の形が多い。
たまに巴が持っていたようにナイフの呪装具はあるがそれもホントに稀みたいで、コレクターの蒼龍は話を聞いた時に
『言い値で買わせてくれ』
と、真剣な顔で詰め寄っていた。
それくらい、西洋の形を模した呪装具が現存しないのだ。
・・・・・・普通の銃では意味が無い、それだと身体能力が向上しないから、伊藤のような化け物じみた鬼と戦うことは叶わないからだ。
今回の坂本という男も、伊藤のような強さだという。
だから、オレは先輩方二人に
「光さんの護衛任せます!!」
「おい、源!!」
「未音っち!?!?」
それだけ任せて、飛び出した。
連携を練習したかった。
彼女がどんな立ち回りをするのか知りたかった。
彼女の呪装具を知りたかった。
しかし、彼女がしっかりとした戦闘が出来ないのなら仕方がない。
オレはと車の横に並んで走り、坂本へと接近する───────!!
「・・・・・・亜人種課か!!」
当然、足音に気付いて坂本がオレの方へ振り返り応戦体勢に移行する。
懐から銃を取り出し、オレに向かって一発弾丸を放つ。
すぐさま軌道を読んで槍で切り払う。
「え、なに!?」
「うぉ、亜人種課じゃん!!
戦闘みよーぜ!!」
銃声に驚いた通行人が気付いて、オレと坂本の戦闘を観戦しようとその場に留まる。
───────それを見計らってか、斎藤先輩と目が合った。
「はいはい・・・・・・あんまし得意じゃないんだけどなぁ。
”囲め囲め、遮り内と外を遮断せよ“
”玄武の三十一・遮蔽道場“」
斎藤先輩が気だるげに頷き、すかさず詠唱する。
するとその直後、地面が膨れ上がりオレと坂本のみを包んで軽い闘技場を作ってくれる。
この後、ノブさんが民間人の二人から斎藤先輩の呪術に関する記憶を消す。
呪術は、亜人種課と鬼狩り、そして古くから呪術を扱う家系のみにしか存在を知らせてはいけなく、家系でない者が見たら記憶の消去を行うのだという。
そこら辺りは、呪術の連盟組織がやるらしくオレたちは組織の人が来るまで保護するだけである。
こうして、オレと坂本の二人きりの戦闘が始まる。
・・・・・・しかし、結果はもう見えている。
坂本が足元に向かって射撃を行う。
しかし、それはもう見切っていたため射撃される前に槍で銃を貫き破壊する。
そして───────オレは腕に、『荊棘』を発現させた。
ちなみに坂本との戦闘終了後に麻上がリンチくらってます。
だいたい亜人種課を追い出されて三時間後の出来事です。
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