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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
衝動流転
31/50

終幕

第4章最後、と言ってもエピローグみたいなものです

 藤也の鬼殺害事件から一週間が経過した。

 あれからというもの、亜人種課に対する抗議文が送られるようになり、さらにはデモなどが常に起きるようになった。

 というのも、亜人種課の黒い噂……無実の鬼を罪を被せることで殺害してるなんて事実も、藤也の動画と同時に流れてしまったようで、市民に対する亜人種課のイメージは地に落ちてしまっていた。


 正直、元からそんなにイメージは良くなかった亜人種課ではある。

 なんせ、犯罪を犯したとは言え鬼という人の亜種を殺すことが主な仕事なのだ。

 殺人に対していいイメージなんて持てるはずもない、他の人からすれば人殺しをしたい異常者の集まりと思われててもおかしくは無い。


 そして、藤也のバディだった蒼龍は休職届けを出して姿を消した。

 その場では切り替えていたとはいえ、親友が死んだんだ、病んでしまってもおかしくは無い。

 ・・・・・・友達二人がこんなことになるなんてこと、オレは避けたかった、止めたかった。

 でも、それは全てオレの力不足が招いた原因だ。


 事件が終わった直後、玄人さんから


『残念だったな、友達が死んで。

 ・・・・・・だが、自分を非力だと恨むな。お前の力はもうほぼほぼ完成されている。

 死なせたくないのなら、次からは刀を持つようにしろ』


 そう、諭された。

 正直、刀はあんまり持ちたくなかった。

 すごく気分が悪くなるから、気乗りがしないのだ。

 ───────溢れ出る破壊衝動が、■■を斬り捨てるまでに至らせたのだから。


 しかし、そうしなければ友達を守れないのも事実。

 ・・・・・・どうするべきだろうか。

 分岐路に立たされた気分で、状況に悩む。


「おい、みおとよォ!?

 てめぇのせいでこんなに重傷を負う羽目になったんだぞ、どうしてくれんだオラァ!!」


 そんな中、飛ばされる花瓶をさらりと避けてベッドの上で元気一杯な姿を見せてくれた。


 ───────現在、オレは麻上の見舞いに来ている。

 というのも、どうやら道化師に襲われていたみたいで、麻上は道化師に身体の複数を串刺しにされてしまったようだ。

 麻上は運良く急所に刺さらなかったみたいで、無事に済んだみたいだ。


「巫山戯んなよ、鬼如きがよォ!?

 オマエ、誰のおかげで伊藤の復讐の掛橋ができてると思ってんの?

 むしろ、オレに感謝して然るべきだろぉ!?

 あんなクソゴミ殺人者のことなんて忘れちまえよ、この畜し───────」


 ───────こうも元気すぎると、少し、黒いモヤがかかってしまう。

 なぜ、コイツはこんなに人を罵倒できるほどに元気で。

 藤也が、死ぬ羽目になったんだろうと。


「・・・・・・・・・・・・藤也」


 ポツリと漏れる、亡き友の名。

 麻上はそれに、不快そうに反応した。


「あ、なに?

 あんなカスの異常者のこと気にすんの?

 これ以上オレの機嫌を損ねんなよ、マジで殺す───────」


「すまない、少し黙ってくれ」


 ……ある程度は我慢するつもりだったが、流石に友達を悪く言われるのは我慢ならない。

 しかし、


「クソ、クソクソクソクソ・・・・・・!!

 なんだよ、最近つーか。

 今年に入ってから、いいこと一つもねぇじゃねぇかゴミが・・・・・・!!

 あのゴミ女にも会うわ、道化師に刺されるわ・・・・・・お前みたいなカスに反抗されるわでオレの人生、お前と会ってからマジでいいことねぇよ、頼むから死ねよ!!」


「ゴミ女?」


「あ? 麻上あさがみひかりの事だよ」


 ───────彼は、あっさりと導線に火を灯すのだった。

 コイツ、光さんと出会っていたのか?

 いったいいつ、どこで?

 いや、そんなことよりも───────


「なぁ、お前・・・・・・光さんに聞いたけどさ」


「喋んなよカスが!!

 命令に従えやこのゴミが!!」


 威勢よく、麻上が次はリモコンを投げにくる。

 それを受け止めて、続けた。


「光さんの家族を全員殺して、彼女を辱めたってのは本当か?」


「悪ぃかよ? つーか喋んなってオレ言ったよね、聞き分けねーなこの駄犬。

 殺処分確定だろコレ、今すぐ殺してやるよ」


 麻上が、袖口からアーミーナイフを出す。

 ・・・・・・明らかに普通のアーミーナイフじゃない。

 刀身が真っ黒の、禍々しい気配を放つソレは間違いなく呪装具の一つ。


 どんな効果があるのかは分からない。

 しかし、禍々しいとはいえども。

 蒼龍の鎖刀や、藤也の首飾りなんかと比べれば可愛らしい禍々しさ……産まれたての赤ん坊のようだ。


「死ねやみおとぉ・・・・・・!!」


 麻上がナイフを投げる。

 ・・・・・・ただの投擲、という訳では無いだろう。

 しかし、ここは敢えて避けた。


「馬鹿がよォ!!」


 その瞬間、麻上は舌をなめずり、人差し指をくい、と曲げる。

 その瞬間、アーミーナイフの軌道が普通では考えれないほど曲がり、オレの背後へと刺さる───────前にナイフの刀身を掴む。


「はぇ?」


 何が起こったか分からない。

 麻上は、そんな顔だった。

 きょとんと目を丸め、呆然と見つめる様はサーカスに失敗したピエロのように。

 目の前の現実を受け入れられない、そんな顔をしていた。

 オレはナイフの刀身を握り砕き、残った柄のみを麻上に投げつける。

 束を投げられた麻上はヒッ、と可愛らしい声を出していた。


「・・・・・・正直、お前が人を陵辱してようとオレはそれを弾劾する資格がないと思ってた。

 オレはその悪事を承知でお前の手を握った。だから、オレもお前と同じ穴のムジナだ」


「───────けれど」


 一歩、踏み込む。

 その力強さに、麻上はさらに恐怖心を加速させて、後ろへずり寄る。

 後ろが壁だと忘れていたのか、それを思い出した麻上の顔は今にも泣きそうだった。


「や、やめろみおとぉ!!

 わかった、悪かった、悪かったよお前のカス・・・・・・お友達をバカにしてさぁ!!」


 もう一度、踏み込む。

 ・・・・・・やっぱり、我慢できないや。


「待て、待てよ・・・・・・殴るのか、オレのこと、殴んのか!?

 お前、おま、そんなことしたらどうなるか分かってんのか、オイ!?」


 必死に命乞いをするその様は、観客を沸かす舞台の道化役のように。

 あまりにも惨めで、滑稽だった。


「・・・・・・覚悟してる。

 だからお前も、少しは性根を直せ!!!!」


「ブボベェッ!!!!」


 ─────渾身の一撃を、麻上に叩き込む。

 真っ直ぐ飛ぶ、その様は弾丸のように。

 麻上は壁にめり込んで、気を失ったのだった。


「・・・・・・一回、オレも刺さるべきだったな。

 ちょっとした、償いもかねて」


 光さんが今、どこで何をしているのかは分からない。

 でも、この光景を見て欲しかった。


 その後、オレは警備員の人に拘束されてそのまま連行されることとなった。

 ……死刑かな。もしそうなら少し、嫌だな。

 まだ、伊藤への復讐は果たせていないのだから。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「”───ゲルニカ、それはドイツ軍による無差別爆撃を描いた、反戦と抵抗のシンボルとなった絵画“

 ”ワタシは、故に二つのテーマを劇として、源 未音に見せたかった“」


「”一つは心中劇、一人の少女による理不尽な死を送った相手達に対する心中を旨とした大人しく死ぬことへの抵抗の物語“

 ”そして二つ目。これは失敗に終わりそうだが・・・・・・一人の青年が突如シリアルキラーへと目覚め、それを止めようとする友人───────つまりは未音の反戦の物語“

 ”それで、彼の心根が変わるのなら、我らが団員に加えようと思った“

 ”・・・・・・まぁ、無駄骨であったみたいだがね“」


 どこか安堵するかのように道化師が呟く。


 パチリ、と道化師が指を鳴らすとバーの床が突如として杭状となり、呆然としていた観客達を全員貫き、嗚咽悲鳴の地獄へと早変わりさせた。


「痛い、痛い痛い痛い痛い・・・・・・・・・いたい、だれか、助けて・・・・・・・・・!!」


「アサガミ、アサガミ・・・・・・アレ、トリックなんだろ?

 いいから早く・・・・・・これ痛いんだよォ!!」


「”おかしいと思わないか?“

 ”キミが助けを乞うた時はヘラヘラと笑みを浮かべ、拒絶したというのに“

 ”ちょっとさされたくらいでこのザマだ”」


 語りかけながら、道化師が歩く。

 指をパチリと鳴らす。

 その瞬間、「ぎゃ」と短い断末魔を轟かせながら、麻上の取り巻き達は刺さっていた杭が突如として分裂し、その身体を裂かれ、絶命した。


 ポタポタと、一人で浴びる鮮血のシャワーを前に。

 ■■は思わず、恍惚とした表情を浮かべてしまった。

 それが、道化師にとって愚かな行為であると気付かず。

 首を振り、深く道化師がため息を吐く。

 侮蔑と、残念が入り交じったそのため息の意図を掴めぬまま、水野は首を掴まれた。


「”キミにも、罰をくれてやろう“

 ”この四葉のクローバーのトランプを見たら、全て思い出す仕組みにしておこうかな“

 ”あとは・・・・・・そうだ、以下の感情を───────“」


 そこで、■■の意識が暗転する。

 否、■■の意識が明転する。

 あぁ、コレはタチの悪い悪夢だと。

 彼の意識は、しっかりと表層に現れ始めた───────



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・・・・・・・・・・なんだ、今の夢?

 気持ちわりぃ、ウゼーウゼー」


 麻上が目を覚ます。

 殴られたショックか、未音に殴られた前後の記憶は吹き飛んでしまっていたため、彼は何事もなく別室に移されたのを気にすることが無い様子だった。


「・・・・・・四葉のクローバーのトランプなんて、ないよね?」


 移されてしばらくして、麻上が恐る恐る訪ねた。

 夢だった為、事実ではないのは確実であるが、その確証がとにかく欲しかったのだ。


 ナースが「ありませんでしたよ」と答えると、麻上はどこか満足気に微笑んで、そのままベッドに横たわった。




 その後、ナースが床頭台の引き出しに、四葉のクローバーのトランプを見つけてしまうのは、少し先の話である───────

第4章終わりまで読んでいただきありがとうございます。

第五章からは週に一回投稿(土曜の18時投稿)予定です。

ペースが落ちますが、皆様が変わらず読んでいただけましたら幸いですm(_ _)m

・・・・・・といってもこの後すぐに第五章の冒頭だけ投稿するんですけどネ!!!!

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