襲来
スランプの脱却の仕方は脳死で書きまくることでした()
「“仕方がない、ワタシとしては不本意ではあるけれど脚本を書き換えよう”
“主役はワタシ、そして君は端役だ”
“無惨に、シリアルキラーであるこのワタシに殺されるのだ”」
「誰が……キミなんかに殺されるって?」
よろめきながら、藤也が道化師を見上げる。
見下しながら道化師はほぉ、と興味深そうに呟く。
「未音、そんな格好だと死んでしまう。
少し、下がっててくれ」
言われた通りに、未音が数歩後ろへ退く。
その刹那───────場は再び冷気に支配された。
「先に言っとくと道化師、キミは僕を初撃で殺せなかった時点で負けは確定している」
「”天変地異でも起こるのですか?“
”否、これは……神の怒りなのですね“」
「和を創りし者へ奉る───────白猪・袖月伊吹」
道化師の言葉を無視しながら、藤也が唱える。
瞬間、ただの路地裏だったその場所は凍てつき、一面が白世界となった。
季節は夏。しかし光景は冬。
なんとも言い難き矛盾が、その場を混沌とさせていた。
「へぇ、その域までいってたんだ。
”……やりますね、白兎の直系“」
「鬼狩りを舐めるべきじゃないよ道化師。
訓練校に入る頃には、大体の鬼狩りは他属性同士の呪術の複合をできるようになっている。
本来は一つしか扱えないが、複合の技術を成人前に覚えるのは血反吐が出るくらいの修行を積まされた。
……普通は一組だけだというのに蒼龍は全ての組み合わせを覚えてるが、どうやったのかはあまり想像をしたくないけどね」
藤也が喋っている内に、道化師が気付いた頃には自身の腕が凍りついてしまっていたのだった。
「”しかし───────甘いですねぇ“」
不敵に、道化師が呟く。
その直後だった。
地面に積もっていた雪が、杭のように先端を尖らせて藤也の心臓付近を穿いていたのは。
「”言ったはずです、アナタは堕ちた主役“
”今はワタシが、このお話を支配する立場にあるのですよ“」
凍りついていた道化師の腕はいつの間にか元に戻り、自在に動かせていた。
あまりに一瞬の終わり。
その一連を、未音はただ呆然と見るしかできなかったのだった。
「”邪魔だ───────端役“
”ワタシはそこの異形に用がある“」
言いながら、犬の形をしたバルーンが突如として大木となり、藤也を薙ぎ払うのだった。
「がっ・・・・・・!!」
「藤也!! ───────!?」
駆け寄ろうとした未音だったが、その場で留まってしまう。
コンクリート造りの地面は、何故か粘着質のモノで表面を塗られており、それが足を拘束しているのだった。
「”さて、君は本来ならば味方になって欲しかったが・・・・・・“
”仕方がない、なんせ要らない方の異能を覚えたのだから“
”まぁ、取り敢えずはその記録を見させて貰おうか“」
すぐそばにまで来ていた道化師が、未音の額に手を当てる。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・何も起こらない。
道化師がはて、と首を傾げながら戸惑いを口にした。
「・・・・・・なぜ、効かない?」
「いいから、さっさとこの地面をどうにかしやがれ───────!!」
拳を思い切り振りかぶり。
未音が、道化師の顔へと一撃を叩き込む───────!!
その一撃はコンクリートすらを砕けれる。
そんな一撃は、何故か通じず。
むしろ、未音の腕の骨が剥き出しになるのだった。
「なっ・・・・・・! 痛ぅ・・・・・・!!」
「”ウルツァイト窒化ホウ素……ダイヤモンドよりもさらに硬いとされる硬質だ“
”君の自慢の矛を、我が最強の盾が打ち砕く“
”そして───────“」
未音に一撃が叩き込まれる。
あまりに鋭く、重々しい一撃。
獣を彷彿とされるその一撃は、未音が容易に吹き飛ばされてしまうのであった。
「”失礼、確かにあのままは可哀想だったね“
”だから退かせてあげたよ。尤も、羆の腕力だからかなり痛いだろうがね“
”三毛別羆事件、石狩沼田幌新事件……その主役である羆は、素晴らしい膂力を持っている“
”本来ならば、首が吹き飛ぶところだったが、鬼の血に助けられたね“」
大木を軽々と拾い上げ、道化師が次はミニガンへと姿を変えさせる。
死刑執行前かのように、道化師が嬉々として未音ヘ訊ねた。
「”さて・・・・・・最後に言い残すことは?“」
「殺させはしないさ。彼は、私の手塩にかけた鬼狩りだからな」
上空に、影が浮かぶ。
浮かんだ直後に、その影は地面に着地すると共に巨大なミニガンの軽々と、まるで豆腐を切るかのように切断していたのだった。
灰がかった髪色に、巨大な鎌。
その姿を見た悪鬼達はもれなく恐れ戦き、その名を口にする。
「死神───────煌月 玄人・・・・・・!!」
「久しいな道化師。内臓を出してやったから死んだものだと思っていたが・・・・・・やはり、そうなのだな」
確信を得た玄人は、冷淡としている。
しかし、道化師にどこか憐憫を向けていると未音は感じたのだった。
「”何を言いますか、ワタシは喜劇を与える存在です。悲劇の喜劇、をね“」
「だが望んでないものがいる。それも身近にな」
瞬間、道化師が固まる。
何を悟ったのかは未音には分からない。
それでも、道化師の仮面の裏は苦渋な顔を浮かべているのだろうな、と嫌な確信を得てしまうのだった。
「明導院君に聞かなければならないことが出来ましたね・・・・・・さて、ここは撤退を」
「させるわけなかろう
”憐憫なまでに身を焦がされるその罪人達。
地獄の業火をその身で喰らい、暗い帳の底へと朽ち落ちゆく。
溢れ出し禁忌達が焼き、滅ぼし、笑う。
そこには聖人君子はいない、菩薩も然り。
天災を巻き起こし第六天魔王の生き写しとなりて、全て焔で飲み込め。
朱雀、炎ノ極地───『煉獄』“」
逃げようとした道化師に玄人は即座に対応し、わずか三秒で長い詠唱を唱え終える。
空気から放たれるその青黒い炎は地獄からのもののように。
殺人鬼たる道化師を裁かんと、波の如く押し寄せた。
通った後の地表は焼け溶けており、その炎の脅威を感じ取るには充分であった。
炎は奔る、奔る、奔る。
現代のジャック・ザ・リッパー、罪人たちのナポレオンを灼き尽くさんと、轟々と奔る───────!!
その炎を前に、道化師はただ指を鳴らすだけだった。
しかし、その瞬間───────炎は瞬く間に消え去ってしまうのだった。
「”自らの呪力を大気に溢れる四大元素のどれかを混ぜさせることで発動させる呪術“
”その輪である限り、如何に過去に偉大なる陰陽師に封じられた禁呪のソレであろうと結局は自然の摂理に従うモノなのです“
”だから、ワタシは炎の周りを二酸化酸素にすることで炎を消した“
残念でしたねぇ・・・・・・それでは」
道化師の背中から羽が生え、羽を羽ばたかせて上空へと飛ぶ。
それと同時に、玄人と未音を囲むように地面を巨大なドーム状へと変化させ、自身の逃走を確実に成功させるものとした。
「ウルツァイトの壁。さすがに壊すのは骨が折れるでしょう」
道化師が呟く。
しかし、そんな予測は簡単に死神に覆される。
ドームは一瞬にして破壊されて、玄人が道化師のいる上空へと跳躍し、その眼前へと現れるのだった。
「おっとォ!?」
「シッ───────!!」
鎌でその顔を切りつけ、仮面を割る。
その顔を煌月がしっかりと認識し、
「リク───────」
強く歯を軋ませる。
それが隙となり、道化師が自身の身体を発光させて玄人の視界を奪った。
「しまった・・・・・・!」
直ぐに玄人が見えないが周囲を袈裟斬りする。
僅かな呼吸音で位置を把握し、道化師の身体が鎌で切り裂かせた。
「”今回も、ワタシの逃走は成功だ・・・・・・!“」
言いながら、道化師は再び羽ばたきその場を去る。
視界が戻り、玄人が周囲を確認したが道化師はもう追い付くのが困難な距離であった。
「・・・・・・まだ動揺する心があったとは、私はまだ未熟だな」
自身に苛立ちを募らせながら、玄人がドームを砕く。
砕かれたドームから未音が飛び出し、藤也へと駆け出した。
「藤也!!」
彼の上体を起こし、状態を確認する。
血は既に致死量を超えてしまっており、身体の所々には風穴が空いている。
もう助からない。脳裏に過った事実を否定して未音が玄人に懇願する。
「玄人さん・・・・・・藤也を、藤也を助けてください!!
なにか、身体を治す呪装具とかっていうのは・・・・・・!!」
「ない。正確には、過去にあって神社にて保管されていたが道化師に奪われた」
「そんな・・・・・・クソ、藤也・・・・・・藤也・・・・・・!」
どうにかして助けようと未音が止血を試みる。
そこに、
「未音、やめろ。
もう・・・・・・藤也は助からない」
追い討ちをかけるかのように、鎖刀を持った蒼龍が到着するのだった───────
あと二話か一話で4章終わります。
長かった・・・・・・これで折り返しになる




