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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
衝動流転
28/50

道化

スランプ?になった

やべえ

「……『異能』か。

 呪変臓が無い鬼が魂喰を行い、分解できなかった呪力が脳へと溜まることで発生させる鬼の力。

 田沼家掃討作戦の時にチラッと聞いていた……けれど、今のは……?」


 炎から荊棘へと変わったのを藤也が思い出し、疑問に頭を抱える。

 口調が違った事。それを起点に藤也が答えを見出して、呆れるように笑みを浮かべた。


「……なるほど、そういう事か」


「何を勝手に理解したのかは知らないけどさ。

 藤也、お前には悪いけど気絶してもらうぞ。

 解決法はどうやらそれしか無さそうだしな」


 ナイフを構え、未音が藤也と対峙する。

 藤也が再び水で出来た巨大な蛇を出現させる。

 ナイフ一本でその蛇と対峙する未音のコンディションは、最悪にも等しかった。

 肋の骨の半分は水圧により砕けてしまっており、足の骨にもヒビが入っている。

 不利にも程がある、そんな状況を前にして未音はふと、口元を緩ませた。

 そんな未音を見て藤也も口元を緩ませてしまう。

 久々だなと、過去を懐かしみながら。


「さあ、やろう未音。

 逃走ダサいことはしないさ、だから闘争けんかをしよう」


「久しぶりだな、お前との喧嘩は。行くぜ、藤也……!!」


 未音が地面を蹴り上げ、藤也へと向かい翔ぶ。

 藤也もそれに合わせて蛇を前進させ、未音を呑み込ませようと地を這わす。


 呆気なく、未音は呑み込まれてしまう。

 しかし、突如として藤也の下顎に衝撃が走る。

 ───────蛇に呑み込まれた筈の未音が、藤也にアッパーをしていた。


「……その異能、幻覚を見せるのか……!?」


「まだ…あと一発お見舞してやる!!」


 言葉と共に藤也の腹部へと拳を入れ、彼を数メートル後方の壁へと叩きつける。


「痛た……やっと殺す気なったのかい?」


「なるわけねえよ。オレは、お前を気絶させるだけだ」


「まだそんな生温いことを……!!」


 ───────その場の空気が凍りつく。

 比喩ではなく、実際に。

 場の全てを凍りつかせるかのような冷気を前に未音は、


「生温い? 本当にそう思ってんのかよ。

 ───────生きて、償わせる方が冷たいに決まってんだろ!!」


 言葉とは裏腹に、温かな感情で吠えた。


「生きてて、楽しいって瞬間があってもその度に人を殺した記憶が、お前を苛む。

 ……オレだってそうだ。

 オレはあの家族を見殺しにしちまった”あの日“から、笑った日には脳裏に浮かび上がるのはその時の光景だ!!

 そんな、残酷なことをお前にも味合わせようとしてるんだ……酷いのはオレだ、オレなんだ。

 それを、生温いって言ってくれるお前の方がとんだ甘ちゃんなんだよ、藤也!!」


 未音の言葉に、藤也が固まった。

 それは違うと言おうとした口が、寸前で動かせなかった。

 否定すれば、友人の在り方すらも否定してしまう。

 そう、脳裏に過ぎったから。

 そして、そんな理由で動かせなかった自身はなるほど、確かに甘ちゃんであると納得させられ、不意に笑みが溢れてしまった。


「ハハ……確かに、僕は甘いね。

 負けだ、負けたよ未音。

 拳をぶつけ合う喧嘩と思ったけれど……こうもあっさりと口論で済んでしまった。

 さ、手錠をかけてくれ未音。

 言う通りにするよ、でもさそれを先に言ってくれよ。

 じゃなきゃここまで、やり合うってことは無かったと思うけど?」


「……ぶっちゃけ今頭の中に浮かんで出てきたんだよ。

 本当は、お前を殺したくないって気持ちだけだったさ」


 呆れて肩を竦めて、藤也が手を伸ばす。

 未音が直ぐに手錠を取り出し、腕につけようと歩み寄る。

 ───────その、寸前に悲劇は起こった。

 藤也の背後の壁が異形となり、彼の身体を貫く。

 あまりに一瞬、あまりに非情な出来事。


「え?」


 頭の処理が追いつかず、藤也がポツリと戸惑いを零す。

 未音は、目を丸めて驚愕を顕にした。


 ───────コツコツと、ステッキをコンクリートに突く音が聞こえる。

 道からはでは無い。

 おそらくは、壁から。


「“いけないよメインキャラクター”

 “キミは、ここで更生してはいけないんだ”」


 未音が上を見上げると、ビルの壁にソレは居た。

 道化の仮面を着けた、最低な殺人者。

 最近は影を潜めていた、犯罪界の新たなるナポレオン。

 道化師と呼ばれる、その人がいたのだった。

 驚愕を顕に、未音がその名を口にする。


「道、化師……!?」


 呼ばれたソレは、仮面の裏で笑みを浮かべるのだった───────

何とか書きまくって脱却してみせます

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