道化
スランプ?になった
やべえ
「……『異能』か。
呪変臓が無い鬼が魂喰を行い、分解できなかった呪力が脳へと溜まることで発生させる鬼の力。
田沼家掃討作戦の時にチラッと聞いていた……けれど、今のは……?」
炎から荊棘へと変わったのを藤也が思い出し、疑問に頭を抱える。
口調が違った事。それを起点に藤也が答えを見出して、呆れるように笑みを浮かべた。
「……なるほど、そういう事か」
「何を勝手に理解したのかは知らないけどさ。
藤也、お前には悪いけど気絶してもらうぞ。
解決法はどうやらそれしか無さそうだしな」
ナイフを構え、未音が藤也と対峙する。
藤也が再び水で出来た巨大な蛇を出現させる。
ナイフ一本でその蛇と対峙する未音のコンディションは、最悪にも等しかった。
肋の骨の半分は水圧により砕けてしまっており、足の骨にもヒビが入っている。
不利にも程がある、そんな状況を前にして未音はふと、口元を緩ませた。
そんな未音を見て藤也も口元を緩ませてしまう。
久々だなと、過去を懐かしみながら。
「さあ、やろう未音。
逃走はしないさ、だから闘争をしよう」
「久しぶりだな、お前との喧嘩は。行くぜ、藤也……!!」
未音が地面を蹴り上げ、藤也へと向かい翔ぶ。
藤也もそれに合わせて蛇を前進させ、未音を呑み込ませようと地を這わす。
呆気なく、未音は呑み込まれてしまう。
しかし、突如として藤也の下顎に衝撃が走る。
───────蛇に呑み込まれた筈の未音が、藤也にアッパーをしていた。
「……その異能、幻覚を見せるのか……!?」
「まだ…あと一発お見舞してやる!!」
言葉と共に藤也の腹部へと拳を入れ、彼を数メートル後方の壁へと叩きつける。
「痛た……やっと殺す気なったのかい?」
「なるわけねえよ。オレは、お前を気絶させるだけだ」
「まだそんな生温いことを……!!」
───────その場の空気が凍りつく。
比喩ではなく、実際に。
場の全てを凍りつかせるかのような冷気を前に未音は、
「生温い? 本当にそう思ってんのかよ。
───────生きて、償わせる方が冷たいに決まってんだろ!!」
言葉とは裏腹に、温かな感情で吠えた。
「生きてて、楽しいって瞬間があってもその度に人を殺した記憶が、お前を苛む。
……オレだってそうだ。
オレはあの家族を見殺しにしちまった”あの日“から、笑った日には脳裏に浮かび上がるのはその時の光景だ!!
そんな、残酷なことをお前にも味合わせようとしてるんだ……酷いのはオレだ、オレなんだ。
それを、生温いって言ってくれるお前の方がとんだ甘ちゃんなんだよ、藤也!!」
未音の言葉に、藤也が固まった。
それは違うと言おうとした口が、寸前で動かせなかった。
否定すれば、友人の在り方すらも否定してしまう。
そう、脳裏に過ぎったから。
そして、そんな理由で動かせなかった自身はなるほど、確かに甘ちゃんであると納得させられ、不意に笑みが溢れてしまった。
「ハハ……確かに、僕は甘いね。
負けだ、負けたよ未音。
拳をぶつけ合う喧嘩と思ったけれど……こうもあっさりと口論で済んでしまった。
さ、手錠をかけてくれ未音。
言う通りにするよ、でもさそれを先に言ってくれよ。
じゃなきゃここまで、やり合うってことは無かったと思うけど?」
「……ぶっちゃけ今頭の中に浮かんで出てきたんだよ。
本当は、お前を殺したくないって気持ちだけだったさ」
呆れて肩を竦めて、藤也が手を伸ばす。
未音が直ぐに手錠を取り出し、腕につけようと歩み寄る。
───────その、寸前に悲劇は起こった。
藤也の背後の壁が異形となり、彼の身体を貫く。
あまりに一瞬、あまりに非情な出来事。
「え?」
頭の処理が追いつかず、藤也がポツリと戸惑いを零す。
未音は、目を丸めて驚愕を顕にした。
───────コツコツと、ステッキをコンクリートに突く音が聞こえる。
道からはでは無い。
おそらくは、壁から。
「“いけないよメインキャラクター”
“キミは、ここで更生してはいけないんだ”」
未音が上を見上げると、ビルの壁にソレは居た。
道化の仮面を着けた、最低な殺人者。
最近は影を潜めていた、犯罪界の新たなるナポレオン。
道化師と呼ばれる、その人がいたのだった。
驚愕を顕に、未音がその名を口にする。
「道、化師……!?」
呼ばれたソレは、仮面の裏で笑みを浮かべるのだった───────
何とか書きまくって脱却してみせます




