幕間 王手
カップルを犯し尽くし、しっかりと家へと送った麻上とその取り巻きは、未音が藤也と戦闘を行っている最中にコンビニへと足を運んでいた。
なんてことは無い。
ただ、犯しすぎて疲れ、お菓子を食べたいなと麻上がふと思っただけである。
麻上は羅列されているお菓子の商品を眺めていたが、ふと隣に立った青年に目を付けた。
たまたま、本当にたまたま麻上が貧乏臭いな、とその青年に苛立ちを感じただけであった。
一度、そこから離れて飲み物の方へ移動し、硝子の反射でその青年の動きを観察する。
どういう仕草が苛立つのか、どうするつもりでわざわざ、みすぼらしい格好なのか。
そんなどうでもいいようなことを麻上は考え、そして青年の行動を見て解を得る。
その青年は、グミをさりげなくパーカーのポケットへと入れ、スナック菓子を手に取った。
その瞬間───麻上の脳内では、新しい玩具が早速手に入ったと、歓喜で震え、邪な笑みを浮かべ、口は自然と呟くのだった。
「……オレって、運いいのな♥」
会計を済ませ、青年がそそくさと外を出る。
麻上はメッセージを使って取り巻き達に目的を伝え、すぐに青年の後を追う。
コンビニの横にある駐輪場で自転車に跨ぐ、その寸前で麻上は青年の肩を、捕まえるかのように叩いた。
「よ、不健康大不良少年。
大健康超優良社会人サマが見てしまったんだよねぇ……パーカーのポケットに、グミ入ってるっしょ?」
ニコニコと、太陽のような明るい笑みを浮かべる麻上。
しかし、少年は感じ取っていた。
彼は、太陽のふりをした悪魔だと。
気付くと、周囲は麻上の取り巻き達が囲んでおり、退路は完全に塞がってしまっていた。
これから恐ろしいことが起こる。
そう確信した青年は、何とか逃げようと抵抗を試みる。
しかし、麻上は亜人種課の訓練校を卒業している。
自衛隊の二倍は厳しい訓練を乗り越えた麻上は、服で隠しているが体格がしっかりとしていたのだ。
目の前の青年は鬼ではあるが、麻上にとっては力のない雑魚同然、本当に殴られる為だけの玩具だった。
「大人しく……来いやァッ!!」
鳩尾に拳を叩き込み、青年の意識が遠のく。
その隙に、麻上は青年の財布から身分証を取り出して、青年の情報を確認する。
「えっと……水野 凛、種族は鬼。
うん、大当たり。オレさ、水野って名前嫌いなんだよねー。
オマエ、死んだと思ってよ?」
言い終える頃には、青年───────水野は気絶してしまっていた。
「車」
麻上の言葉に、彼の連れが水野を運び後部座席へと入れる。
そしてそのまま、別の場所へと移動するのだった。
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青年が目を覚ます。
洒落た雰囲気のバー、そんな場所に似つかわしくない、手足を拘束されて横に転がされていた。
「あ、起きたー?」
麻上が、まるで友達のような気さくで明るい声音で声を掛ける。
そんな麻上の態度に呆気を取られるも束の間。元気そうだと麻上が呟き、
「……じゃ、始めるかぁ」
指を鳴らし、取り巻き達を集める。
彼らの手には、しっかりと凶器が握られていた。
「あ、先にテメェにもんだーい。
鬼がさぁ、犯罪行為……特に殺人や強姦なんかを行うとどうなるんだっけ?」
「えっ…………えと」
戸惑う青年に、麻上は思い切り腹部を狙ってバットでフルスイングする。
見事に渠を殴られ、呼吸が出来ない少しの間、青年は苦痛で身体を必死に動かした。
逃げたかったと言うのもある。
手には凶器を、瞳には狂気を宿した彼らはまさに、悪魔だ。
悪魔達から逃げたいのは誰だって、同じだろう。
「正解はねぇ……害獣として駆除されちゃう、だぜ?
ホントはオレが生まれてくる前にはこの条例撤廃される予定だったみたいだけど。
荊棘……なんだっけな。
まぁなんか変な鬼がさ……滅茶苦茶にしちゃったんだよね」
顔を踏みつけ、麻上が青年に唾を吐き捨てる。
青年は、麻上に恐る恐ると問うのだった。
「……知ってます、けど、僕はやったのは万引きです……犯罪だけど、害獣認定されるほどでは……」
「んー?
さっきまでカップルの片割れ犯してたよね?
見たよ見たよー? なぁ、お前ら?」
麻上の質問に、男達が笑みを浮かべながら頷く。
でっち上げか、それとも冤罪か。
分からないが、理不尽に殺されると確信し虐殺される絵が脳裏によぎった水野は何とか生き延びようと算段を立てる。
言葉で? ……否、無理だろう。
そもそも会話が通じるような相手にな水野からすれば見えなかった。
逃走? これも無理だ。
手足は拘束されている。どう逃げるというのか。
そうして考えているうちに、麻上が気まぐれに水野の肋骨へ向かって釘バットで殴りつけた。
足で身体を踏み付け、麻上が水野に語り掛けた。
「オレの知り合いは多分よォ……罪は償えるだ、とかほざいて説教くらいで済ませるんだろうけど甘いよな?
罪人は全員等しく、無様に殺されるのがハナってモンだろォ!!」
それから麻上は何度も青年の顔に殴り込む。
「ごっ……いだ、いだいいだいいだいいだいいだいだいいだ、い………!!!!
や、やめて……やめ、や、やめてください……い、いたいです……」
痛みのあまり、青年が麻上に許しを乞うが麻上は止まることなく顔だけきょとんとさせて青年に告げた。
「え、ダメだよ?
レイプ魔の鬼は害獣なんだからさぁ……殺さないと犯されたコがカワイソーでしょ?
それに、オレはさっき水野って姓が嫌いつったよな?
なんだよ、水の野原って矛盾しかしてないじゃん気持ち悪ぃ。
そんな名前してるから、自己保身しか考えてない、矛盾してる奴ばっかなんだよ」
「そーそー。だから、お前には次から生まれてくる水野にはそんなやつがいないように儀式をするんだ。
まずは地面に転がってるお前をコレで殴りまくって、後は……水槽の中に沈めて、溺死させるって算段だ」
取り巻きの言葉に水野は絶望する。
僅かな望みにかけて、叫んで助けを試みようと大きく息を吸う。
「ハイ、店内は叫ぶのはナシでお願いしまーす」
しかし、それは一瞬で阻止される。
麻上が顎を狙ってフルスイングしたのだった。
直撃し、顎が外れると同時に口から歯がポロポロと抜けていく。
その光景を見て抱腹絶倒する者たちを他所に、一人の男はパソコンで何かを見つけ、笑みを浮かべながら麻上に声を掛けた。
「お、麻上ィ……こいつのネーチャンすっげぇ胸がでけえぞ!!」
「見せて見せて」
「あ、あいを……」
水野が恐る恐る訊ねる。
しかし、麻上が袖口からナイフを取り出して喉笛に向かってナイフを放った。
喉を貫かれ、水野はもはや叫ぶことすら出来なかった。
「お、ホントだ。顔もいいな……今から家行って犯しに行くか。
コイツはもうここで殺そ、飽きた」
「……あぁ、終わらそう。もう、うんざりだ」
───────水野の姉を犯そうと決めた矢先、麻上がどこかで聞いたことある声が耳に届き、バーの入口へと視線を向ける。
その場には、道化の仮面を被った男がいた。
「は?
……いや、いやいやいや。お前、ニコルとケミーはどうした?
アイツら、ゲイつっても軍上がりの奴らなんだけど?」
「”門番なら殺したよ、マクガフィン“
”なんせ、ワタシは道化師だからね“」
「マジで?
───────テメェら逃げるぞ!!」
そう言い、一目散に麻上が逃げ出すべく裏口へ向かって走る。
しかし、それに続く足音が聞こえず麻上が振り返ると全員がいつの間にか、血に伏せてそこから大量の血を流していた。
「へ?」
呆けた声を出す麻上の目の前に、道化師が肩に手を置く。
そして、
『”王手“』
遊びの終わりを、道化へと告げた───────
さて、四章がようやく終盤に入りました。
これからどうなるのか、藤也くんの運命がどうなるのかをお楽しみにしてください




