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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
衝動流転
17/50

再燃

胸糞注意、胸糞注意報どころか警報でございましてよ

 ───────家に着くと、オレはすぐに缶詰や携帯バッテリーをリュックに詰め込んで、楓に声をかけた。


「悪い、職場で寝泊まりするかもしれない」


「わかった、気をつけてね未音」


 快諾して、楓に見送られながらオレは家へと出る。

 コートのポケットにはナイフの形をした呪装具を入れて。

 正直、呪装具は蒼龍に以前に”特殊な力を持つ、強い呪いが篭った装備“と聞いたことがあるが、あんまり信用していない。

 というのも、オレが義博に与えられた二つ両方とも、何の変哲もない刀と、耳意外に貼るタトゥーシールめいたモノとかいう意味のわからない物だからだ。

 このナイフも、たまたま麻上から貰っただけで、麻上曰く”呪いがカスみたいに薄いから身体能力伸ばすだけ“という説明を受けた。

 ……やっぱり信用ならないなぁ。

 本当に、蒼龍が言ったみたいな変形する呪装具とかって存在するのだろうか?


 下で待ってもらっているタクシーを使い、オレは蒼龍の屋敷から少し離れたマンションへと向かい、屋上へと駆け上がった。

 そしてリュックから双眼鏡を取り出して、オレは風魔の屋敷の門をずっと監視し続けた。


 ……仮にこれで本当に病院だったとしても、それはそれで安堵できることだ。

 その確認が何日掛かろうとも、オレは絶対にこの場から離れるつもりは無い。

 一応、玄人さんにはメールで蒼龍のことは伏せて、少しの間だけ休むとは送っている。

 麻上にもLINEで伝えている、『次会ったら熱湯顔面にぶっかけるわ』とだけ返ってきた。まぁ、理解はしてくれているのだろう。


 だが、その長期間に備えての準備はたったの数時間で水の泡となった。

 理由は、門から出てきた蒼龍の姿があったからだった。

 ……正直、いては欲しくないというのはあった。

 これで、麻上さんの証言を元に想像していた、蒼龍が事件に関与しているのはほぼ確定となってしまった。


「………受け入れよう、先ずは。

 それに、加害者に加担している訳では無いだろうし」


 そうだ。蒼龍が加害者になるなんてことは有り得ない。

 きっと、玄人さんとかにも秘密にして犯人を追っている理由があるのだろう。


 ───その瞬間、オレの脳裏には何故か、もう一人、入院で休職を出している藤也が浮かんできた。


 ……いやいや、そんなハズはない。

 二人とも確かに、鬼狩りの一族出身ではあるが蒼龍も藤也も善人だ。

 それは関わってきたから分かる。藤也はすこし大人しくい奴で、変なところで茶目っ気を出すことはあるけども。

 それでも、あの二人は、善人だ。

 そんなハズは、ないんだ。


 必死に否定して、オレは蒼龍の尾行を開始した。

 離れていると言っても、二キロメートルくらいだ、すぐに追いつける。

 マンションから、一軒家の屋根に飛び移って。

 オレは、蒼龍の後ろを追う。


 そして、辿り着いたのは都心の、ラブホテルが隣接しあっている路地裏だった。

 ほんの少しだけ、不信感が強まりつつも、そんなわけがないと否定して、蒼龍の後を追跡する。


 ───そして、オレは目撃した。

 そこにある死体を、その死体にまっすぐ向かう蒼龍を。


 蒼龍の足取りは迷いなんてないものだった。まるで、そこにあるのが分かっているかのような。

 何故だ、何故なんだと脳内で戸惑いながらも、オレは見つけた以上、それを見過ごすことの出来ない。

 ポケットに入れていたナイフの束を握り締めて、オレは死体に手を伸ばしていた蒼龍を制止した。


「そこまでだ、蒼龍。

 職務怠慢なんかはどうでもいい。けれど、お前に訊ねないとダメなことが出来ちまったよ」


 蒼龍は呪術を扱える。ならば、その死体を完全に処理することは容易だ。

 もう、感情で否定はできる状況ではない。

 しかし、彼が違うといえばオレはナイフを手放そう。

 ……蒼龍はゆらりとオレの方へと振り返って、いたって普通の態度で、オレに気さくな挨拶を飛ばした。


「よう未音。こんなとこで会うなんて奇遇だな」


 そんな、まるでたまたま出会したってノリで挨拶をされても、悪いが今の蒼龍には不信感が深まるばかりだ。

 少しだけでもいいから、多少は誠実な対応をしてくれ。


「もう一度聞く。おまえ、何しようとしてるんだ?」


 死体に伸ばす手を凝視する。

 革製の手袋をつけているのは、指紋を隠す為か?

 そんな事をしなくてもいいと思うが……

 そんなことを考えていると、蒼龍がゆっくりとオレの方へと歩いてくる。


 ジャラ、と鎖が擦れる音が聞こえる。

 恐らくは武器を掴んだのだろうか?


「なぁ、未音。悪いが……今日のは見なかったことにしてくれ。

 お前には言えないが、本当にやらなきゃならねぇ事があるんだ。

 お前が今担当している事件も、それが終わったら解決するからさ」


 珍しい蒼龍の頼みだが、今は素直に頷けない。

 今、蒼龍がなそうとしている事を聞かなければオレはコイツの頼みを聞けるほど、信用できない。


「……まずは、何をしようとしてるのか聞かせてくれ。

 その死体に、なんで手を伸ばしてるんだ?」


「誓って、隠蔽とかじゃない。たんにこの手袋は、呪力を保存できる優れものでな、それでこの死体から検出された呪力を誰のか特定しようと思ってな。

 つーか、そうだよな。疑われてもこればかりは仕方がないよな。

 だが、本当にごめん。俺の目的は言えない。

 ……悪いが、伏せさせてくれ」


「……いや、聞かせてくれ。

 藤也は無事なのか、それか藤也の入院は本当なのか?」


「あぁ、入院してる」


 一瞬、何処にもない方を向いて蒼龍は答えた。

 しかし、それはして欲しくなかった。

 長い付き合いだから、分かる。

 蒼龍が関係ない方を向く時は、だいたい隠し事か、嘘をついている時の癖だから。

 オレはポケットからナイフを取り出して、刀身を蒼龍に向けた。

 月に煌めいて、刀身は蒼く光る。

 その、蒼く煌めく刀身に写し出される蒼龍の顔。

 悲しみと罪悪感が混じった、そんな表情を浮かべていた。


「嘘だろ。

 度々言ってるけどさ、治せよそのクセ。

 今回みたいに、スルーできない時が出来ちまうからさ」


「悪い、治んねぇや。

 ……退いてくれ、じゃないと俺が徹底して逃げるぜ?

 友達と殺し合いなんてしたくねぇしな」


 蒼龍が一歩後ずさる。

 腕の力をだらりと抜き、蒼龍は袖から鎖が繋がっている短刀を見せた。

 オレは─────その瞬間に、蒼龍との空いた距離を詰めた。

 逃走は許さない、そう告げる代わりに、行動でその意志を示した。

 オレと目が合い、蒼龍は不敵な笑みを浮かべる。


逃走かくしごとは許さねぇってか……!?

 ───────いいぜ、なら闘争やりあおうじゃねぇか未音……!!」


 ナイフの刀身が蒼龍に届く、その寸前に蒼龍は鎖をしならせてオレの腕に絡ませた。

 否、違う。

 鎖はまるで生きているかのように動いて、オレの腕に巻き付いたのだ。

 そして、鎖はオレの腕を別の方向へと強引に引っ張り、蒼龍への一太刀をいなす。

 その力は凄まじいものだった、軽自動車なら持ち上げれるハズの、オレの筋力が抵抗出来ずに、あっさりと引っ張られた。


 バランスが崩れ、身体が倒れそうになるが脚を地面に突き刺すようにめり込ませて、バランスを立て直す。

 しかし、そうしているうちに蒼龍は裾から球体のようなモノを取り出し、それを放り投げる。

 空に放たれたソレは、突如として光を放ち、オレの視界を奪った。


「悪ぃな未音、やり合うってのは嘘だ!!

 ま、ちょっとの間だけ俺の勝手な行動を許してくれや!!」


 声と共に、遠のく蒼龍の足音。

 しかし、その足音も鎖が地面に擦れる音で隠蔽される。

 光はどうやら呪力で生まれたモノらしく、瞼を開けようにも脳が『開けるな』、と警笛を鳴らすせいで目を開けることが困難だった。

 クソ、追おうにも目はまだしばらく開きそうにない……!!


「───蒼龍!!」


 数十秒経った後、漸く目が開くようになったオレは目を開けて先の景色を見るが、そこに蒼龍の姿はなかった。

 影と溶け込んでる、なんてことも無く。

 正真正銘、蒼龍はオレから逃げ切ってみせた。

 ……だが、絶対に見つけてやる。

 半ば意地で、オレはがむしゃらに走り、蒼龍の探索を始めた───。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 未音が蒼龍を見つけようと奔走している頃、あるラブホテルの一室にて。

 男女の二人組が縄で縛られて身動きを封じられ、周囲を麻上とその取り巻きたちに囲まれていた。

 麻上に、火のついたタバコを、左額部へと押し付けられジュウ、と焦げる音が響き───────


「ア“アアァァァァァァ……!!」


 女性が美しい声音に似つかわしい、獣の咆哮のような悲鳴を轟かせ、麻上の取り巻きたちを湧かせる。

 満場一致の拍手喝采、その中でポツリと二人だけが味わう阿鼻叫喚。

 きっかけは些細な事だった。

 ただ、女性が肩をぶつけた。それだけだった。

 そんな、些細なことで理不尽にも二人は車へと運ばれ、現在に至るのだった。


「しかし、相変わらず容赦ねぇなぁ巴。

 不満でも溜まってんのか?」


 茶化す取り巻きに、麻上は笑みを浮かべながら、答えた。


「当たり前じゃーん。

 前にも話したけどさぁ、あのクソッタレた女のせいでオレはメンタル追い込まれてんのよ?」


「あぁ、生きてたんだっけ?

 あの生真面目委員長サマ。自殺したって聞いてたから俺らも嬉しさで叫び散らしたってのになぁ」


 ホントだよー、と頷いて麻上がさらにもう一回、次は眉に煙草を押し付ける。

 ジュウ、と肉と毛が焼き上がる音。

 それと共に奏でられるは、先程同様、女性の悲鳴だった。


「春にさぁ、タピオカ屋に並んでたらたまたま出くわしてよぉ。

 生意気にも言いやがったぜアイツ、『貴方をぜったいに許さない。トモくんとお父さんを返して』…ってよォ。

 死人が返るわけねぇだろ、大人しくお前も死んどけってんだバーカ!!」


 その場にいない少女への罵倒と共に、男の顔を蹴り上げる。

 そして、女性に唾を吐き捨てた。

 女性の方は縄で縛られているだけでなく、一糸まとわぬ姿となっており、集団に犯された痕跡が未だに残っていた。

 取り巻きの男が一人、ある事に気付いて麻上に尋ねた。


「アレ、巴もしかして生で()った?」


「え、だってピルはもう持ってるし。

 飲まなかったらカレシの方を同じ目に遭わせればいいしね、ちょうどゲイの知り合いいるし」


「うっわ、女の子カワイソー」


 かもねと笑い、麻上が女性の髪の毛を掴んだ。


「でもさ、コイツがぶつかってきたのが悪ぃんだぜ?

 ねぇ聞いてるー?」


 女性に呼び掛け、麻上が頬を打つ。

 そんな中、ふとある話題が麻上達の周りで盛り上がった。


「そういやさ、ドレイ君だっけ?

 アイツってまだ生きてるんだっけ?」


「ドレイ君……あぁみおとね、生きてるよー。

 なんなら、多分だけど今も事件の犯人追跡してると思う。

 今さー面白い事件があるんだよね。

 知ってる? 無差別に鬼が殺害されてんの」


 麻上が周囲に問うと周囲は頷く。


「その調査やってるみたいでさー、どーせ今はアレだろ、風魔か因幡、んで煌月のどっかに張り込んでるだろ」


「え、なんでなんだ?」


 取り巻きのそんな問いに対して、麻上が灰皿代わりに煙草の日を男の頭に押し付けて消してから、答えた。


「んー、たんにあの家が鬼狩りの名門だからだよ。

 んで、確か……因幡、いや違う。

 風魔だ、風魔ってさー二十代以降から鬼に対して殺害衝動がすげぇ速さで芽生えるみたいなんだよねー。

 現に蒼龍の弟もソレに芽生えて秘密裏に殺されたって噂あるし。

 みおとはそれ知らないと思うけど、鬼を殺せるってなったらシンプルに鬼狩りの一族を疑ったんだと思うぜ」


「へぇ……え、じゃあ犯人ってもしかして?」


「そ。多分だけど蒼龍じゃね?

 あ、そうだ。みおとに蒼龍を捕まえたらオレの家に寄越すように言おうかな。

 アイツには心底ムカついてたから、ゆっくりいたぶって殺してやりたいんだよなぁ」


 そう呟いて、麻上が携帯の画面を開いてメールのアイコンに指を進める。

 が、麻上は電源を消して、携帯をポケットにしまい込んだ。


「アレ、送んねぇの?」


「んー? うん、そういやみおとと蒼龍って仲が良かったしさ。

 こういうので変に手を噛まれてもなって思って。

 ソレに、ちょっと欲情しちまってさ。

 おい、アバズレとクソもやし」


 そう麻上に陵辱の限りを尽くされた二人に声を掛け、麻上は笑う。

 その姿はまさに悪魔。

 しかし、本人にとっては慈愛ある天使のつもりであった。


「先に言っとくけど……チクっても警察には意味ねぇからな?

 マスコミにもだ、親父が口止め料払ってくれるからさぁ。

 寧ろ、分かったらオレらがまたてめぇらのこと嬲ってやるよ。

 免許証も見たから、住所とか知ってんからな?」


 しかし、二人にとってはそれは”いつでも家に乗り込んでやる“という、二人が抱いたイメージ通りの悪魔のようなお告げだった。

 そして、麻上が服を脱ぎ始め、


「さぁて、第二ラウンドといこっか♥

 あ、男の方はしっかり見とけよ?

 彼女が犯されてる光景を、無力だって嘆いて、おっ勃ててよぉ!!」


 さらに二人に追い打ちを掛けるべく、行為を始めるのだった。

 その行動に周囲は呆れながらも、麻上と共に陵辱を再開させたのだった。

カップル可哀想……

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