流転
新キャラ出ます
───幽霊の件から数ヶ月が経ち、真夏となった。
変わったことと言えば、玄人さんが道化師の宣戦布告を受け取ると直ぐに道化師の息がかかっていると思われる組織をいくつか潰したことだった。
その中で玄人さんに次いで、麻上が隠れ家を突き止めたりと中々に凄い活躍を見せてくれた。
小隊規模の人数で掃討作戦を行ったりしたが、被害も最小限に抑えられ、妨害は好調と捉えてもいいだろう。
証拠だと言わんばかりにそれの影響か、道化師は最近では姿を潜めているようで、道化師による犯罪は無くなっていた。
しかし、その反面で別の問題が起きてしまっていた。
「……道化師は影を潜めたけれど、次は何者かによる鬼の無差別殺害事件かぁ……」
そう、最近では道化師に代わって新たに殺害事件が度々起こるようになった。
それも、ターゲットは罪なんて犯してない無辜の鬼達だ。
まず一人目が、水圧によって潰された肉塊となっていて、二人目は窒息死、三人目は血液に水が混ざったことによる血管の破裂。
その全てが、呪術によるモノだという痕跡が遺されていた。
当然、亜人種課がこの事件を受け持つことになり、オレもオレで掃討作戦時とかで二、三番目に悪鬼を駆除したこともあり、その実力を周囲から認めて貰えるようになってきた。
実はと言うと、最初は蒼龍と藤也が担当をしていたが一週間前に行われた大規模の作戦である“田沼家掃討作戦”の際に負傷したらしく、休職することとなりオレと麻上の担当となった。
最初こそ麻上は乗り気だったが、わずか二時間で勝手にどっか行きやがった。
オレは、ここ数日は玄人さんに怒られるか冷や汗をかきながら、一人で事件現場である路地裏へと向かい、何か手がかりがないか調べていた。
が、口惜しいことに好ましい結果は無く、念の為に後で見返せれるように写真だけは撮影してその場から離れた。
路地裏から出ると、奇遇にも、
「……あれ、源くん?」
「………………え?」
オレは同じ高校のちょっとした有名人と対面した。
甘栗色の綺麗な髪の毛を肩まで切り揃えた、楓と双璧をなしていた高校の人気者。
不運にも父親を高校の時に亡くし、その後にそれが原因となってか、不登校となった。
……否、本来は自殺したと噂されていた。
それもそのハズだ。
その父親は、養子として迎えた一人の鬼と人の少年により殺害された……らしいのだから。
「……麻上、光さん……だよな?」
女性の名前は麻上 光。
麻上巴とは何ら関係もない、姓が同じだけの女性と出会うのだった。
どこか嬉しそうに、麻上さんは笑顔を浮かべ、オレの手を握った。
「久しぶり、源くん!!
すっごい、なんか渋くなった?」
「まぁ、色々あってね」
「へー含みがあるねぇ…………そうだ、色々と聞きたいことがあるし、近くのスタバに寄ろうよ!!」
「……そうだな、少しだけなら」
誘いに乗り、オレは近くの喫茶店へと向かうのだった。
……聞きたいことが、あったからだ。
再会は嬉しいが、それよりもオレは彼女に確認したかった。
少女の顔の傷と、とある噂について。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なぁ、麻上さん。
……その顔の火傷、麻上にやられたのか?
噂でさ実は君の父親と、同い年の弟を殺害したのは麻上だって言うのが広まってさ。
……それと、その」
テーブルに対面して座り、オレは注文を通して、その待ち時間に率直に訊ねた。
……少しだけ心が痛むけど、聞かずにはいられなかった。
犯されたのか、なんて聞くべきでないと咄嗟に我に返って、言い淀んでしまった。
当然、実行したのはオレの相方である麻上だというのが、広まっていた。
警察署に行って、そう訴える麻上さんの姿があったという情報が、噂の源となっていた。
元々、麻上さんの同じ年の義理の弟の名前はアイツと全く一緒であり、麻上はそれが気に食わなかったようでよく暴力を振るっていた。
結局、麻上は何も罪に問われなかったことから、噂はガセだと思われていたが……。
本人の口から聞いた方が確実だ。
麻上さんはかなりの真面目で有名で、麻上とは反りが合わなかったし、容姿は麻上の好みだったと、本人がよく口にしていた。
それに、麻上ならば有耶無耶にすることくらいは容易だ。
彼は有名企業の社長の息子で、金で黙らせたりするのはとても容易だろう。
現に、自殺に追い込まれた教師だっている。
……アイツには悪いが、オレは噂が正しいと思っている。
オレが言い淀んだ意味を悟ってしまったのか、麻上さんは顔を俯かせて少し経った後に。
こくりと、頷いた。
「……うん、そうなの。
ごめんね、源くん。私も訊ねたいことがあってさ。
貴方が……その、ね? 亜人種課に入って麻上とコンビを組んでるって、聞いて……」
成程、確認したかったというわけか。
聞いてどうするのかは不確定だが、復讐心があるのは確実だ。
オレは、麻上さんに謝罪の意を込め、頭を下げて肯定した。
「そうだよ。オレは、麻上とコンビ組んでる。
……復讐、したい奴がいて。アイツが一番近道だと思ったんだ。
オレが確認したかった理由は、どうしても君に謝っておこうと思ってさ。
正直、もう会えないと思ってたから、この出会いは奇跡だ」
何をされたって文句は言えない、言えるはずがない。
なんでそんな奴なんかと、と胸ぐらを掴まれようと、頼んでた珈琲をぶっかけられても。
オレは絶対に何もしてはいけない。
仮に麻上に罪があろうとも。
そんなやつと手を組んで、あろうことか被害者に堂々と肯定したオレにも、罪はある。
オレはただ黙って、彼女のアクションを待っていた。
すぅ、と息を飲む声が聞こえて、彼女は───
「……堂々と、答えてくれてありがとね。
どっちかって言うと、はぐらかされたら怒ってた。
けども、ちゃんと答えてくれたっていうことは源くんは変わってない、いい人だってことだもんね……よかったぁ」
そう、安堵の笑みを浮かべて息を吐き出すのだった。
そして彼女はきっぱりと、
「私が恨みを抱いているのは麻上だけだから、安心してね」
そう告げた。
その直後に、彼女は頭を下げるのだった。
「というか、私の方こそ変に罪悪感を抱かせてごめんね。
それと……学生の頃、貴方の傷口を抉ってしまったことも本当にごめんなさい」
確かに、彼女は以前に友紀奈達が死んでしまった数日後に、プロの推薦が来たことを祝われたことがある。
なんならオレはフラッシュバックして嘔吐もした。
けれど、彼女に非は無い。寧ろ、オレがそんな状態で学校に行ってしまった事に大きな責任がある。
しこりとして残っていたのなら本当に申し訳ないことだ。
「そのことに関してはオレが全面的に悪いんだし気にしないでくれ」
「そう言ってくれてありがとう……あぁ、そういえば先に言っとかないと。
実はつい最近、ビルの屋上で蒼龍くんを見つけたよ?
なんか、袖口から刃物っぽいのも見えててさ。
一応、知り合いの亜人種課の人にも言ったけど未音くんにも言っておきたいなって」
なにか、別のことを言おうとしたのか、少し間が空いてから麻上さんが蒼龍の情報を聞いた。
……蒼龍は確か怪我で休職中だったハズだ。
麻上さんが嘘を言う人ではない、それが更に不審を加速させる。
麻上さんはさらに気になることを口にするのだった。
「───なにか一点を見つめててさ、多分だけど、最近話題の鬼の殺害事件が起こった場所の方を見てたんだと思うよ」
「ありがとう、オレ、少し向かわないとダメな場所ができた。
これで会計済ませてくれたらいいよ」
引き金を引かれた弾丸のように一直線を描いて。
オレはテーブルの上に自分と麻上さんの分を合わせた代金を乗せて、すぐに席から立ち上がった。
先ずは、蒼龍に確認をしなくては。
オレは足早になって、蒼龍の家へと向かうのだった。
新キャラ出しました




