事件は終わる、劇場が始まる
3章最後まで読んでいただきありがとうございますm(*_ _)m
───それから少女は、道化師に貰った力で復讐を完遂させてしまった。
全員で五人の少女達を、明るい未来から、冷たい地面へと墜落させたのだ。
自分にされた事を、そっくりそのまま返す事に躊躇いなど無かった。
自分の未来を奪ったのだ、ならば彼女達から取り上げても誰も文句は言わないハズだと。
そうして、落としていき終わった後、少女は満足することは残念ながら無かった。
愚かにも、少女は他の人も落としたいと思い始めたのだった。
地面に咲いた彼岸花を、もっと見たいと彼女は暴走し始め、無関係の人間を飛び降りさせた。
やがて、一人の青年……つまり、オレがこのビルへとやって来て、少女はオレの事を捜査官と見抜き、自身の邪魔をさせないようにオレを追い出し、そして脅そうとしたが失敗に終わった。
以上が、事の顛末だった。
なんてない、くだらない少女の復讐劇。
そこから展開された、彼女の殺人劇。
それが、彼女の───
「”否、違うよ源 未音。
短絡的な思考で、頭の悪さは相も変わらず健在で何よりだ“」
否と言い張るその人影は、道化師の姿をしていた。
場所はこのビルというのは分かる。
少女の記憶の中に流れ込んだ、その映像はチャンネルが変わったのかと錯覚してしまう程に唐突な、主役の横取り野郎が現れた。
その存在は、亜人種課でも有名人となっている。
稀代の人殺し、現世のジャック・ザ・リッパー。
“劇団”という、謎の犯罪組織の頂点に立つ者、道化師だった。
性別は通説では男だが、それも定かではなく、というのも女性のような声音や身体のラインに見える時があるのが原因だった。
しかし……道化師はどうやら、オレのことを知っているらしい。
でも、どういった経緯で?
可能性があるとすれば、犯人はオレの知り合いだったりするのか?
脳内で悶々と浮かんでくる疑問を、吹き飛ばすかのように道化師が声を発し始めた。
「”初めましてぇ、私は道化師と呼ばれているしがないただの鬼です“」
どこか巫山戯ているような明るい声音で、道化師は言葉を紡ぐ。
「”えーとですね、アナタがこの映像を見ているということはワタシの読み通り、あの少女は無様に倒されたと言うわけだ。いやぁ、本当に“」
どこか面白そうに、あの少女を嘲笑うように道化師は発言した。
「”愚かですよねぇ人間は。
力を手にした途端にその快楽に溺れて、求め続ける。
生存価値のない、全滅させる価値のある生き物にも程がある“」
そんなことを、淡々と口にするのだった。
……そうするように仕向けたくせによく言う。
語るのは勝手だが、もう少しマシな内容にして欲しかったものだ。
「”しかし、これでようやく、劇場が始まる。
さて、ワタシはアナタに宣言しに来ました。
この事件を解決させるのはアナタであろうと、ワタシは脚本を描いて見事に誘導を仕切ってみせたのです!!
その、苦労を慮ばってくださるというのなら、煌月 玄人に伝えといてください”』
深々と敬礼をして、道化師は高らかに宣言を始めた。
コンサートの開催情報を、実に楽しそうに。
『”───ハロウィンの日に、我々が結成した復讐者達だけのチームである『劇団』が、テロ行為を行います。
場所は当然東京全域、ついでに和歌山のどこか!!
そしてワタシは、その日に貴方という戦力を手にして、そのテロ行為を完遂させる“」
その仮面の下は、絶対に笑っていることだろう。
テロ行為は防がないとダメだ、死力を尽くして。
亜人種課としてのみならず、一人の人間として、その惨劇はなんとしてでも食い止めたい。
だがそれはそれとして、道化師の発言に対して、一つだけ返さなければ。
他人事のように振舞って暗に拒絶を示しながら、オレは道化師のオレを戦力に加えるという発言に対して───────
「そうか、頑張れよ」
たった、それだけを呟いた。
……さて、どう返ってくるか。
「”オヤオヤオヤ、まぁ確かにワタシの正体は気になることでしょう。
なんせアナタのことを知っているのだから!!“」
……どうやら道化師は別の言葉を予想していたらしい。
一人寂しく劇を続ける悲しい役者は手を大袈裟に空へと仰げる。
そして最後の最後に、気になりやがることを言って、挨拶を終えるのだった。
「”ワタシの正体に関するヒントを一つだけ。
───ワタシは、本来ならばこのビルにいるはずの人間の名でございます“」
待て、ということすら出来ない一瞬で、視界が元に戻り、辺りが夜の帳で塗りつぶされた黒の世界へと戻る。
散っていく白き魂の片鱗。数多の人を飛び降り自殺させた殺人鬼は白雪のように散っていく。
残った半身を振り投げて、オレは散っていく霊体に背を向ける。
「───とりあえず、煌月さんに伝えるか」
オレは、胸ポケットから携帯を取り出して煌月さんに連絡を取るのだった。
……最後の道化師の発言を脳裏に浮かべ、襟を引かれるような錯覚を覚えながら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
───事件から一週間が経ち、オレは麻上を呼び出した。
というのも、彼の手柄とオレが上層部へ伝えた結果、色んな人が麻上のことを褒めたりしてて、オレが話しかけれるような余裕がなかったからだった。
これは元々、麻上との約束だ。
蒼龍は何か言いたげだったが、仕方がない。
伊藤を殺せれる近道になるなら、それがダメな事だろうと厭わない。
カフェテリアで待つこと数分、麻上はどこか苛立っている様子でオレの前の席に、乱暴に座った。
「あーうっぜ、何が『着任してから解決までなんという速さだ』、だよ!!
うぜぇきめぇくせぇの三連チャンだよ全く。
あ、お前にはキレてねぇよみおと?
だって、お前はオレとの約束を守ってくれたもんなぁ?
約束を守る奴はオレ、好きだしねー」
そう言いながら、麻上は店員に珈琲を注文し、おしぼりを受け取った。
それで手を拭きながら、麻上はオレに理由を訊ねるのだった。
「で、話って?」
「……宇城琥珀って娘の名前に、聞き覚えは?」
宇城琥珀。
その名前は、今回の飛び降り事件の加害者の名前でありオレの目の前にいる同僚の麻上巴の元恋人であったらしい。
あの記憶を見た後、オレは過去の資料を見てしまったのだ。
……少女の記憶にいた、少年が余りにも麻上に似ていたから気になって調べてしまったのだ。
意外な関係で少し驚いたが、麻上の評判は割といいので気にはならなかった。
オレの質問に、麻上はあっけらかんと
「あぁ、元カノね。死んじまったけど。
いやぁ、生きてたら生きてたでオレが多分潰してただろうけどさ。
元々、遊ぼうとしか考えてなかったし……多分薬漬けにして風俗に売ってたなァ」
とても、同情すら出来ないほどに屑らしい発言をするのだった。
「……一応、口裏合わせとこうかなって思ってさ。
その子が、今回の飛び降り自殺の犯人だ」
「まぁ、あそこで最初に飛び降り自殺したのアイツだし、だろうなって思ってたわ。
ほら、別にオレ、術師いるって言ってただけで幽霊に対しては言ってなかったじゃん?」
確かに、言ってなかったな。
私情は持ち込まないところは変に真面目なのか、それとも彼女のことを心底どうでもいいと思っているのか。
おそらくは後者だろう。
オレは既に配られているカップを取り、珈琲を啜る。
無糖は苦くて滅多に飲まないが、何故か無性に無糖を飲みたかった。
「……あぁ、でもそっか」
麻上が空を眺め、呟く。
まるで、あの世にいる彼女のことを想うように、その目線はどこか、温かなモノだった。
「アイツ、玩具に出来なかったの残念だなぁ本当に。
つーか……巻添えで他の女達殺してさぁ。くだらねぇ心中だよね」
しかし、言葉は心底冷たく。
麻上は届いた珈琲を一杯飲み始めた。
───少女の巻添心中は終わり、次なる事件へと手につけるのだった。
えーと、このお話はアレです。
(名前出していいのかな)奈須きのこ氏著書の空の境界をリスペクトして書いております。
なので物語としてのラスボスと未音君にとってのラスボスを分けております。
そして、その最後は悲しいものとなっていますのでお覚悟して読んでください、鬱にさせてやるよ(最低)




