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復讐螺旋  作者: 桜野 ヒロ
禍根墜落
11/50

少年は対峙し、地獄へと誘う

「蒼龍、すまない……楓が幽霊に体を乗っ取られた!!

 俺の担当してる飛び降り自殺の事件はその幽霊が犯人だ!!」


『……状況を詳しく聞かせてくれ未音。

 橘花が、本当に幽霊に乗っ取られたのか?』


「あぁ、確実だ!!」


 答えると蒼龍は唸るように考え始めた。

 そして、


『場所はお前が昼に行った現場だったよな。

 お前の家からして距離はだいたい……お前が全力疾走して十数分くらいか?

 鬼の身体能力は恐ろしいもんだよホントに、だって車と速さ変わらないだもんなぁ。

 俺は今からタクシー呼んでそこに向かう。

 同じタイミングで着くから、お前は今すぐに向かっといてくれ』


「ありがとう、蒼龍」


『礼なんていいさ』


 蒼龍が電話を切る。

 さて、オレも向かおう。

 そう思い玄関へと向かうと、蒼龍から再び電話が掛かってきた。

 なにか伝え忘れていたのだろうか?


「どうしたんだ、蒼龍?」


『言い忘れていた。

 その幽霊はおそらく、例えるならステルス機みたいな存在だ。

 鬼という幽霊に飲みとっかしたレーダーに感知されずにお前に取り憑いて、橘花に乗り移った、ほぼ間違いないだろう。

 だがそれは基本有り得ない、誰かがその幽霊の霊体を呪力で弄らない限りはな』


 つまり、それは───


「幽霊と、呪術師の共同での犯行ってワケなのか?」


『そうだ』


 第三者による介入。

 その可能性に、少し頭を悩ませる。

 奇襲を食らうというリスクを脳裏にちらつかせる。


『未音?』


「あ、あぁ済まない蒼龍。

 どうしたんだ?」


『……まぁ、いいか。

 取り敢えず、俺が許可を貰うからお前は魂喰(しょくじ)を行え。

 そうすりゃ、共犯の正体を確定させることが出来る。

 仮にその場に呪術師がいなくても別の日に身柄を確保できるだろう?』


 ……なるほど、たしかにいいな。

 だが、楓はどうするのだろうか?

 彼女は今現在、幽霊が乗っ取っている。

 堕とされたら、それで今回の目的は不達成だ。

 オレが訊ねるよりも早く、蒼龍はオレの危惧を見越していたのか明るい声音で答えた。


『橘花は俺が救助する。

 絶対に助けるから、期待だけしとけ!!』


 自信に充ち溢れたその声は、オレを安心させてくれるには十分な材料だった───────




 ───幽霊の少女が潜む、廃ビルとは二軒程挟んだビルの屋上にて。

 未音みおとに任された蒼龍そうりゅうは、龍が描かれた着物から、柄が鎖で巻かれた短刀を取り出し、目的の女性である橘花たちばな かえでのみを集中して凝視していた。

 その、明らかに雰囲気の違う後ろ姿を捉え、幽霊の気配が去るのを待っていた。

 呼吸をいつしたか覚えていないほど、瞬きすらせずに彼はただ、極限の集中力をもってクラウチングスタートの体勢で待ち構えていた。

 いつ飛び降りるか分からない緊張感の中、蒼龍はひたすらに耐えて楓のみを凝視しつづける。


『───悪いけど、蒼龍が頑張ってよ』


 そんな中、ふと、藤也とうやの言葉を思い出す。

 仕方ないとはいえ、少し冷たいような態度を思い出し、蒼龍は若干の苛立ちを覚えた。

 その直後だった。

 まるで、タイミングを見計らったかのように楓が廃ビルから空を舞うのだった。


 僅かコンマ数秒遅れ、蒼龍は駆ける。

 気付かれたか? 否、まぐれであると蒼龍は即座に湧き上がった疑問を否定し、走る速度を早めた。

 その速さは、まるで銃弾の如く速く、そして鋭くあった。

 おおよそ、平和に生きていた人間なら出せないであろう速さを、蒼龍は涼しげな顔をしながら出していた。

 高校の頃から、夜に犯罪を犯した悪鬼と命懸けの戦いをしていた蒼龍にとっては。

 これくらいの速さならば朝飯前だった。

 しかし、このままでは足りない。

 少女の墜落する速さの方が勝っている。

 だというのに、蒼龍は焦る様子を見せなかった。

 それは、その鎖刀があるからと言える。


「出番だ───“鬼忌廻改”!!」


 そう叫ぶと鎖刀は紫の妖光を放ち、柄に巻かれていた鎖が解けて楓へと向かって伸びる。

 そのまま、彼女の身体を柔らかく包み込むように鎖が巻きついた。


「よっとぉ!!」


 そのまま蒼龍は鎖を自身の元へと引き寄せて、楓を抱える。


『───!!』


 ふわりと強風が蒼龍と楓の着陸時の衝撃を帳消しにする。

 天然のマットに助けられながら、二人は安全に地面へと着地したのだった。

 そして不意に、蒼龍の首飾りが砕け散った。


「よし、約束は守ったぜ未音」


 廃ビルを見上げ、未音と視線を合わせた蒼龍は、微笑みながら楓を家へと運ぶ為、踵を返すのだった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




『……嘘よ、コレは、悪夢、そう、悪夢だわ!!』


 幽霊が、否定するように必死に首を振る。

 現実から目を背けるその姿は、どこか幼子に似てて、内心でこれからすることに罪悪感が芽生えた。

 だが、彼女は楓を殺そうとした。

 その一点に於いて、許す道理なんてあるわけが無い。

 心を冷徹に切り替えて、彼女の首筋に牙を食い込ませる。


『いっ、つぅ……いや、いやいやいやいや!!

 貴方、ワタシの事を完全に殺そうとしてるわね、なんで!?

 ワタシは、ただ、ただ……ワタシを突き落とした彼女達が憎くて───』


「関係の無い楓を仲間にしようと企んでおいてよく言うな。

 そういうの、被害者ヅラって言うんだぜ。

 ……君が赤の他人まで手をかけた時点で、もう君は被害者じゃない、人殺しの加害者だ」


 彼女の言葉を遮り、オレは首筋を食いちぎる。

 直後、オレの脳裏に見たことの無い景色が流れ始めた───


キャラ紹介

風魔蒼龍

未音の親友で、鬼を狩る『風魔家』の長男。

普段は着物姿で生活をしているが本人曰く「動きづらい」とのこと。

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