少年は行く、少女を救いに
今はストックがちょこちょこあるし定期的に投稿するのではなく完成したら投稿するようにします♡
一人でビルの中へと入り、階段を上がる。
そのまま屋上へと目指して走る、走る。
しかし、勢いは良いがやはり、一階から十三階まで階段で上がるってのはキツい……!!
エレベーターが動いていないという、なんともクソみたいな状況。
息が切れそうだが、なんとしてでも楓を助ける。そんな固い意地で脚を動かす。
「待ってろよ楓……!!」
新任して早々なんてハプニングだ、これじゃ楓季さんに怒られるな。
『娘をなんて目に合わすんだい!!』
そう、怒鳴る楓季さんの姿が脳裏に浮かび、笑を零してしまう。
場違いなのは重々承知なのだが、どうしても堪えれなかった。
…………そういえば。
あまり、幽霊に対しては意味が無いとはいえ、実家を出る時に義博から貰った武器を持ってくるのを忘れてしまったな。
一応、幽霊にも通用するみたいだったし持っていくべきだったな。
……恥ずかしい、成長したとしてもまだまだ未熟だな。
だがまぁ、ここから学んで、成長していけばいいだけだ。
屋上前の扉を開ける。
覚悟はもうしてるから呼吸なんて挟む必要ない、時間もない。
オレは、黒世界に足を踏み入れた───────
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前全てが煌めく星が見える、綺麗な夜世界。
そんな中に、夜を白濁で穢すように嗤う、白装束の女、女、女。
三途の川みたいな光景に、オレは物怖じすることなく、幽霊達を睨みかえす。
負けを悟り、それでもと足掻く無様な男なのだと、彼女達は勘違いをしてしまったのだろう。
睨み返すオレを、少女は嘲笑い焚きつけるのだった。
『あらあら、楽しめないの?
たくさんの女がいて、まるで大奥みたいじゃない。ワタシ達は、貴方みたいな逞しい顔つきの男の子って大好きよ』
「悪いけど、幽霊だらけの大奥なんてお断りだよ。
それに、量より質を取りたい人間なんでね、お前らの女将が今、まさに乗っ取ってる女性を選ばせてもらう、ゾッコンなんでな」
拳を構えて、幽霊を煽り返す。
……こんな状況なのに、なんて滑稽な光景を連想させるんだ、オレは。
───まるで、風に煽られるベッドのシーツみたいだなと、一人で微笑む。
ならばオレは、黄砂を払うようにこの少女達も祓うとしよう。
オレは、脚に力を込め─────
「さぁ、初戦闘だ…!」
奥で妖艶に微笑んでる、楓を助けに走り出した。
そんな矢先に、まずは一体目の幽霊が壁となり、オレに立ちはだかる。
「───邪魔だ!!」
その、壁となった幽霊の胸を貫き、苛烈に割いて祓う。
スピードはそのまま最速を保ったまま。
『っ、……でも、まだ数はいるもの!!』
何かを悟り、それを懸命に否定して。
楓を乗っ取った悔しそうに顔を歪ませながら幽霊は、さらにほかの幽霊たちを呼び、自身の盾と化させる。
増えた数は五体、さっきの幽霊と合わせたら合計でちょうど二十体だろうか。
何体でも、関係ない。
彼女達は非常に柔らかい。それこそ、本当に絹のように、とても柔らかな壁だ。
そんな彼女らがいくら束になろうが。
コンクリートすらも容易く貫くことが出来る腕力を前にしては、無駄である。
悪いが、はっきりいって少女達の肉壁は意味を成さないのだった。
重なった五体の壁を、オレは容易にぶち抜いた。
……恐らく、さっきの一体目で楓を乗っ取った彼女は分かってしまったのだろう。
だからこそ、焦っているのだ。
このままでは、自分が負けてしまうと。
もっと悪さをしたいのに、それが出来なくなるのは嫌だ、そう少女の顔が喋っていた。
『……み、皆、ワタシの事を守りなさい……!!』
少女の声に応じて、残った十四体の幽霊がオレの前へと立ち塞がる。
意味を成さない事にオレは嫌気が差す。
幽霊となる羽目となった、彼女たちが可哀想にも程がある。
さっさと終わらせるべくその肉壁に向かって突進し、全てを空の元へと露散させた。
肉壁の道を渡りきり、たった十歩ほどの距離間で、オレはようやく楓から出た、その幽霊の顔を拝見した。
……どこか幸薄そうな、可愛らしい幼さを残した顔の少女はオレを怯えるように凝視し、
『そ、それ以上近づくというのならこの子を突き落とすわ!!
いいの、いいの!?!?』
焦りながら、そう迫ってきた。
ふぅ、と息を吐いてオレは、
カツンと、一歩、コンクリートの床を歩いた。
それを挑戦と受け取ったのか、少女はムキになったようで眉間に皺を寄せ、怒り狂ったように楓を屋上から落とした。
『アハ、アハハハハ……ホントはこうしたくはなかったけど、貴方が悪……!?』
───────動揺しすぎだ、明らかに戦闘慣れしていない。
あんな絶好の人質を、手放すなんてどうににかしてる。
幽霊はオレが一瞬で近付いているのに気づかなかったみたいで気づいた頃には少女の首を、後ろから掴んでいた。
「最後に、見せてやるよ」
そう言って、少女に下の光景を見せた。
下には、身体を散らして、鮮やかな血の水溜りを作った楓の遺体。
なんてものはなかった。
そこには、楓を抱えている蒼龍の姿があったのだ。
『……な、なんで!?』
───遡ること、十数分前のことだった。




