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4 ヒロイン


 ひどい夢を見た。


 俺はあくびを噛みながら机の上に突っ伏した。

 朝の教室。

 担任が来る前の賑やかなクラスメイト。

 みんな眠そうだったり元気だったりしているが、俺は疲労困憊だった。

 たくさん寝たはずなのに全然疲れが取れてない。

 それもこれも――


 あの妙にリアリティーのある夢のせいだ。


 いや。

 しかし。

 それにしても。


 とんでもない話だった。

 神様が人間を見捨てる話だなんて。

 天使が人間を殺す話だなんて。

 恐ろしい以外の感情が湧かない。

 悪魔や妖怪が相手ならなんとなくなりそうだけど。

 神様相手に人間が太刀打ち出来るわけ無いのだ。


 夢だからよかったものの。

 正直、夢の中の俺は滅亡を覚悟した。

 今思い出しても身震いする。

 あんなに荒唐無稽な夢だったのに。

 どういうわけか、真に迫る現実感があった。


 と、同時に。

 なんか、すごい可愛い子だったな。

 ちょっとだけ惜しい気持ちもあった。


 だが。

 あれは、間違いなく夢だった。

 起きたら空に異形の化け物はいなくなってたし。

 家族も友達もテレビもインターネットも、誰もその話をしていなかったし。

 あれは、夢だった。

 本当によかった。

 あれが夢で。

 嘘で。

 幻で。


 本当によかった。

 そのはずだったのに――


「はーい、みなさん席について」


 やがて、担任の林田が教室に入ってきた。

 てんでに話をしていた生徒たちはそれぞれ席に戻り、ザワついていた教室が刹那、静まりかえる。


「起立」


 今日の日直当番が朝の挨拶を始める。

 すると、林田が「あーちょっと待って」とそれを止めた。


「えーと、今日はホームルームを始める前に、紹介したい生徒がいてな」


 林田はこほんと咳払いをした。


「この時期には珍しいんだが、転校生だ」


 おぉ、とクラスメイトがザワついた。

 みな、ちょっと嬉しそうだ。

 転校生、という響きは、少しだけ高校生をときめかせる。

 どんなやつが入ってくるのか。

 カッコいいのか。

 可愛いのか。

 男子も女子も、微かに期待を膨らませるイベントである。


 他方。

 俺は、胸騒ぎを感じていた。


 そう。

 あれは夢だった。

 夢のはずだったんだ。


「おーい。入ってー」


 担任が生徒を呼び込む。


 するとがらりと扉が開き。

 一人の女生徒が、ツカツカと歩いて壇上に登った。


「ハーイ! みなさん、こにゃにゃちわー!」


 腰に手を当てて。

 ゴスロリ姿に身を包んだ。

 超ミニスカートの。


 ミーが、自己紹介していた。


「うぉい!」


 俺は思わず大声を出して立ち上がった。


「ど、どういうことだよ! あれは夢だったはずだろ!」


 すっかり言ってしまってから、クラスのみんなが俺を見ていることに気付いた。

 

「……どうした? 宮内」


 林田が怪訝そうに見ている。


「あ、す、すみません」


 俺はすとんと座った。

 そして大きくスーハーと深呼吸した。

 いかんいかん。

 驚きのあまり我を忘れてしまった。


 偶然だ。

 偶然に決まってる。

 いや、もしかしたら、これは予知夢という奴かもしれない。


 つと見ると。

 ミーが俺を見て、ニヤニヤしていた。


 その表情かおを見て確信した。

 ヤベぇ。

 間違いねぇ。

 昨日のあれは――本当だったんだ。 


「うーし、んじゃ、自己紹介ジコショしまーす」


 ミーは黒板の方へ振り返り、チョークを握った。

 ひらりとスカートが翻り、パンツが見えそうになった。


 彼女はカツカツと自分の名前を黒板に書くと、くるりとこちらに振り向いて、


「私はミーナクシュットガルド。人間ども滅ぼすため、神よりこの地球に遣わされた第二位天使の使徒だ。完全無欠のスーパーヒロインだ。普通の男子生徒には興味ない。御曹司、オラオラ王子様系、熱血スポーツマン系、インテリ男子系、フェミニン系、カワイイ系、サブカル男子系、とにかくイケメンたちは私のところに来るように!」


 そのように宣言したのだった。 



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