閑話 頑張れ! 政見放送たん3
「魔法スキルか……」
皆の力を得て、というのも気になる。
1週間後には、力を見せるというが、さて。
自衛隊ともしっかりと連携していかなくてはな。
それにしても、多様性について討論するだと?
調子に乗りおって、エイリアンめ!
良いだろう、やってやる、やってやんよ!
私は毎日遅くまで資料を見て勉強した。
私の真似をして隣で資料を読むふりをする我が子が本当にかわいい。
雫は日本初の女性の首相になるかも知れんな……。
多様性についての討論を行い、新たな施設を作る事を宣言する。
まさか利用者が現れるとは思わないが、予想の斜め上を行くこともあるかも知れない。予算もプレハブ小屋なので、そうかからないはずだ。もちろん、準備はきっちりするが。
「首相! エイリアンの利用者が現れました! 大繁盛です!! グレイ型宇宙人も来てます!!」
「な、なんだって〜!?」
やめろ、アイドルもどきで手いっぱいなんだこっちは。
とにかく、大量のエイリアンが釣れて、細工をした5000円券はばら撒かれることになった。利用者いすぎだろう……!
「首相、電子チップを搭載した5000円券を使った人間を追跡しました」
「監視はバレないようにしろよ」
「首相、雫ちゃんが……」
「娘がどうしたというのだ」
娘の机の中に、5000円券があった。
私は崩れ落ちた。
いつからだ……? いつから、娘は入れ替えられて!?
悲しみに暮れながらも、私は娘の徹底的な監視を命じた。
次の会談の内容は、「エイリアンと考える国防」。
よくもぬけぬけと言ってくれるものだ。
よかろう、私の国防魂を見せてやろう、娘の偽物よ……!!
監視をしていて、絶望的な事がわかった。
娘は娘だ。小さい頃から乗っ取られていたのか、あるいは初めから……。
とにかく、雫は私の育ててきた娘で間違いはなかった。
だって、よく考えれば最初から小学生レベルの言動だった。
よく勉強してはいるが、小賢しいの域を出ない。
そんな人間が宇宙を行き来するエリートであるはずもない……。
そして、起こったレイドボス事件。
娘はテキパキと対処をしてみせた。まさに国益に沿う存在だ。
ならば、それを利用するのが私の仕事だ。仕事なのだ。
『しばらく家出します』
こんな紙切れ一枚で3日の不在を騙せると思っている娘にプルプル震えながら、私は娘の教育方針の転換を決意するのだった。
管理してやる! 秘密のベールを奪い取って、国のもと、国民と同様の管理を受け入れてもらうからな!!
「というような事があったのだ。わかってくれるかね、美剣城くん」
「は、はあ……。娘さんが、大変ですね」
「君なら、私の気持ちをしっかりと理解して協力してくれると思っているよ」
「は、はあ……?」
「同じくエイリアンの子を持つ親同士、仲良くしようじゃないか」
どさっと資料を渡された美剣城くんの顔は引き攣った。