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それはいつか、魔王となりて  作者: 志位斗 茂家波
1章 旅立ちと始まり
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1-08 説明を受け、まずはやってみるべし

「さてと、この辺りで良いかな?ハクロ、準備をしよう」

【シュルル~!】


‥‥‥ギルドでちょっとごたごたがありつつも、僕等は無事に冒険者登録を受けることが出来ていた。


 受付嬢のアリアさんに聞けば、冒険者にはランク付けがされており、僕等はDランクという部分から登録されたようだ。


 本当であれば一番下のGランクから登録されるらしいが、ギルド内でのごたごたに関してその場を収めてくれたし、実力を見せてくれたから上がったようだが…‥‥うん、まぁ色々あったというしかない。


 そう、例え喧嘩を売って来たオッサンたちを返りうちにしつつ、ハクロが説教をする現場があったとしてもだ。魔物にも説教する知能があったのか、ハクロが賢すぎるだけなのかは不明だとしてもだ。

 まぁ、もう実はもうちょっと高いランクにもできたらしいが、僕の方の経験不足があるので、見合った者になるまで学ばせてもらう意味合いも兼ねてそこに落ち着いていたりするけれどね。



 何にしても、冒険者登録をすると、この後他のところに言って旅をする際に色々と役に立つようだ。


 行く先々の街でギルドがあれば依頼を受けて小遣い稼ぎをしやすかったり、あるいは商人たちの護衛をして人脈を作ったりすることがよりやりやすくなるようで、登録して損はない。


 けれども、まだ登録したばかりという事もあり、僕等はしばらくあのエルモスタウンに滞在して、しっかりとどうやって冒険者は動けばいいのか学ぶ必要がある。


 そう思い、登録して早々ギルドから出される依頼とか言うのを受けたが‥‥‥今回の依頼は、いたって簡単なものだ。


「『ブルビットの討伐』かぁ。大体10匹ほど、狩ればいいってあるね」


―――――

「ブルビット」

ウサギの身体にブルドッグのような犬の頭が付いた魔物。

群れになって動く習性があり、見た目に寄らず草食ではあるのだが、農作物を荒らすことが多く、その為見つけ次第討伐して駆除する必要性がある。

その牙は探検の材料になったり、ウサギ肉の部分はうまく調理すれば美味しくもなる。

―――――


「依頼を受け、達成してランクを上げていけるようだけど‥‥‥まずは僕らのやり方をどういう風にするかやらないといけないからね。ハクロはその背中の『従魔の証』とかいうのを無くさないようにせずに、動いてね」

【シュル!!】


 冒険者登録をするにあたり、実はギルドの方からハクロに渡された品として『従魔の証』という宝石があった。

 

 受付嬢のアリアさんに理由を聞くと、魔物を仲間として連れ歩く冒険者はいるようで、その魔物を総称して従魔と呼ぶようにしているらしい。


 とはいえ、魔物から採れる素材目当てで動く人もいるようで、そう言った輩に狙われにくくするのが、この従魔の証なのだとか。


「従魔の証がある魔物を悪意を持って攻撃したら、ギルドから手痛いお仕置きがある、か…‥‥」


 良くて罰金、最悪の場合冒険者の資格を剥奪どころか投獄されることもあるようで、結構大事なもののようだ。


 万が一なくしたら、きちんとした申請手続きをすれば再発行されるらしいが、そこそこお金のかかるもののようで、結構きついようである。


 森で生活していた時にお金は気にしなかったけど、人のいる場所で過ごすのあれば必要なんだなぁ‥‥‥爺ちゃんが学ばせてくれた理由が、今になって物凄く大事だったと分かるよ。






 とにもかくにもブルビット討伐が今回の依頼なので、街からちょっと出てその依頼の場所へ僕らは仕掛けをすることにした。


 一体一体はあまり強くないらしいが、群れで来る様子はちょっとキモ、もとい恐ろしい光景に見えるらしく、いざ戦いとなると数が結構大変である。


 その為、正面から堂々と行くことはせずに、罠を仕掛けて討伐することにしたのだ。


「ハクロ、もうちょっと糸を出して。そう、大体そのぐらいで切って」

【シュル】

「それでここに、ハクロの糸をドラムスさんに売って得たお金で買った薬草を調合した薬品を振りまいてっと‥‥‥このぐらいで良いかな?」


 最初から一文無しはきつかったかもしれないが、ドラムスさんと取引をしたので資金はあった。


 なので今回はその資金を利用して道具をそろえ、しっかりとした罠を作ったのである。


「まぁ、毒薬も作れたけど、肉部分が食べられるのならちょっと不味いからね‥‥‥内臓とかは焼却処分で良いなら、このぐらいで良いかな?」


 作ったのは、『激烈悪臭薬』というものをちょっと改造し、小さなゼリーの粒にしたものである。


 ブルビットは草を食べるので、その草にちょっとくっつけ、口の中に入って磨り潰した瞬間に、弾けるようにしたのだ。


…‥‥まぁ、後は何が起こるか分かるだろう。鼻って外からじゃなくて、案外食べている時も嗅いでいるものだ。


 そして何よりも、ブルビットは頭は犬の頭であり、犬は嗅覚が人以上に鋭いそうで、それがさらに魔物であればより敏感だと爺ちゃんから聞いたことがあり…‥‥




【【【ギョゲガワァァァァアアアアアアアアン!?】】】


 数分後、仕掛けてすぐにかかってくれたブルビットたちの鳴き声でしっかりと効果があったことを確認できたのであった。


【シュ、シュルゥ…】

「うわぁ、臭いだけで即死しているよ。この薬、水をかけるとあっという間に無臭になる欠点を使って、近寄る前に水をかけたけど‥‥‥」


‥‥‥そういや昔、爺ちゃんがより強力な奴を作って、魔障の森から出てきた巨大な狼のような魔物の鼻に直接注入したことがあったっけ。あの時でさえも威力がすごかったけど、僕の作るのはまだまだ爺ちゃんのものに及ばないとはいえ、薬と毒って表裏一体なのが良く分かるなぁ。


「とりあえず臭いを消して、あとはしっかり血抜きと解体っと。それじゃ、持って帰ろうか」

【シュルル】


 初依頼を受けたのは良いけど、なんかまだやりようがあった気がする。


 しばらくは冒険者としてどう旅をしていくべきか、ここに滞在してしっかり考えていこう‥‥‥








‥‥‥ジークたちが帰路についていた丁度その頃。


 エルモスタウンのギルドに、一台の馬車が止まっていた。


 その馬車は、ココのギルドの所有品であり、降りてきたのはその持ち主でありつつギルドを収める人物。


 そう、立場としてはギルドで一番上なはずなのだが…‥‥



「今頃帰って来たかこのボンクラギルド長ぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「こっち、いない間本当に大変だったんですよぉぉぉぉぉ!!」

「タラテクトに暴れられたら、不味かったんだよぉぉぉぉ!!」


「…‥‥なるほど、色々大変そうなのは分かった。なら、ほどいて自由にさせてくれないかね?」

「「「いや無理。絶対に逃げるでしょ」」」


 ぎっちぎちに拘束されているのは、このギルドを治めているギルド長。


 だがしかし、今は下克上でも起きているかのように自由を奪われており、職員たちに責められていた。


「しかし、特急で手紙が送られてきたが、ここにダークネスタラテクトかぁ…‥‥だが諸君、一つ言って良いかね?」

「どうぞ」

「それ、本当にダークネスタラテクトか?聞いた感じ、タラテクトの好戦的な感じや、凶暴さもないのだが。それどころか、かなり知能が高いというぞ」

「まぁ、確かにそうかもしれませんが‥‥‥」


 普段がちょっとアレな人なので、意外にもまともな質問が出てきたことに、ギルド職員たちは少し驚きつつも冷静になる。


 話に聞いていた者や、副ギルド長のトラウマ話だと、もうちょっと恐ろしい魔物を想像していたが、実際にここで遭遇してみると抱いていた印象とは少し違っていたのだ。


 狂暴でもなさそうだし、大人しい感じがするし、それでいて文字で意思疎通が可能など知能の高さがうかがえるのだ。


「…‥‥まぁ、その分こちらとしてはやりやすくもあるが、余計に厄介な魔物に該当する可能性が出てきたがな」

「え、ギルド長は知っているのですか?」

「ああ、このわたしを誰だと思っている?」

「遊び人」

「問題児」

「逃げるが勝ちで恥を知らない人」

「嵐を呼ぶ疫病神」


「‥‥‥本当に何だと思っているんだね?」


 出てくるのは全て本音ではあるが、そこにツッコミをいれる意味はない。


「ギルド長たるもの、ある程度の魔物の情報を把握しておくものだ。確かに手紙での報告できいた容姿などではダークネスタラテクトに近いと分かるが‥‥‥これはまだ、前の段階だ」

「と言いますと?」

「この種のタラテクトは、いや、この魔物が仮にアレ(・・)だとすると、おそらく数日程で姿が変わるぞ。そうだとすると、余計に面倒事になるが‥‥‥幸いなことに、わたしは明後日にはタコランテタウンの方に出向く用事があるからな。しっかりと、対応してくれたまえ」

「「「説明をきちんとしろよ!!というか、すぐに逃げるなぁぁぁぁぁ!!」」」


‥‥‥逃さないためにも、職員たちは協力してギルド長に拘束具を付けていく。


 だがしかし、ギルド長という立場に就くだけあって、その実力もしっかり見合ったものであるようで、容易くはいかないのであった…‥‥



初めての依頼はあっさりとしつつ、僕等はどうやっていくべきか考える。

やり方をしっかりものにして、旅の道中で慌てることがないように、しっかり学ぶのだ。

そして一方で、職員たちは胃痛に悩まされているらしいが・・・・・

次回に続く!!



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