表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それはいつか、魔王となりて  作者: 志位斗 茂家波
1章 旅立ちと始まり
43/87

1-41 正面衝突

「8階層に入ったけど…‥‥こうなってくると、もうちょっとだなと思えるよね」

【シュルゥ】

【グラァ】


 うんうんと頷きつつ、僕らは8階層の地へ降り立つ。


 ダンジョン突き進みつつ、経過は順調。変な魔物も特に出現せず、事前に頭に叩き込んだここのダンジョンの魔物に関しての情報との違いなども特にないので、安全な道のりになっていた。


 まぁ、基本的にハクロがすぐに敵を見つけて、遠距離から素早く叩き潰すようにしていたりするのでそんなに出会うこともないというのもある。糸で動きを封じて、ラナを投げつけて硬い身体を鈍器にして、あとは全員で弱ったところをボッコボコにすれば楽な戦いが多かったのもある。



 何にしても、いよいよ目標の10階層に近づいてきたが、ここからは警戒心をより一層強める必要があるだろう。


 というのも、相性的に不利だと思われる魔物がこの階層から出現すると聞いているのだ。


「『フレイムバード』に『ボンバーボール』あたりに気を付けないとね。ハクロ、ラナ。赤い光が見えたら要注意だと思ってほしい」

【ウン、分カッテイルヨ】

【グラグラァ】


―――――

『フレイムバード』

全身が常に炎上し続けている炎の鳥。燃え続ける体は死後も鎮火せず、水を受けるとさらに燃え上がるという厄介な性質を持っている。

その火を消すには油しかなく、間違えて大惨事を引き起こしやすいうえに、遠距離から攻撃を受けるとその方向に向かって自身の火を投げつけてくることがある。


『ボンバーボール』

芸術は爆発だという輩がいたりするが、この魔物はまさにそれを具現化したようなもの。

見た目は丸っこい岩石なのだが、一度爆発すると大輪の火の美しい花を咲かせるが、周囲に火の粉が凄まじい勢いと量で飛び散る事がある。

―――――


 遠距離から攻撃すればいいような気もするが、こいつらはどっちもその手段を取るとその場ですぐに対応してしまうようで、後者の方がより酷いことが多い。


 ラナの中に入ればその高い防御力で大丈夫だとも思えるのだが、それでも炎上した場所に居続けるのはいやらしいし、ハクロの糸でも流石に耐火性能を付けることが出来てもそこそこ程度で防ぎきれるわけではないので、どうにか戦闘を避けたいのだ。


 その為、この二体の特徴である火などの明かり光が見えたらすぐに隠れて様子を伺い、気が付かれないように回避する必要がある。


 なお、ギルドで聞いてきたが過去にこのダンジョンでその両者に巡り合ってしまった冒険者がいたそうで、見事に間違った対応をしまくったために大惨事が引き起こされたこともあるらしい。


「そう考えると、巡り合いたくないなぁ‥‥‥警戒を緩めずに進もうか」



 大惨事を引き起こしたくないので、僕らは慎重に歩み始める。


 怖いのが単体の状態ならまだしも、大量に出てきた時が一番不味いのだが‥‥‥そうなったら、隠れてやり過ごすしかあるまい。


 




 そう思いながら先へ進み、周囲を細かく警戒していた…‥‥その時だった。


【シュル!ジーク、アッチニ赤イ光アッタ!!】

「よし、まずはラナに入れてもらって様子見だ。ラナ、頼む」

【グラァ!】


 あーんっと大きく宝箱の身体を開いてもらい、その中に僕らは潜り込み、箱のふたを閉じてもらうギリギリにしてもらう。


 隙間に手をかけてしがみつき、ラナにはその場でじっとしてもらって宝箱として偽装してもらい、その内部から外の様子をうかがう。


 

 見れば、さっきハクロが言った方角に赤い光がいくつもあり、こちらに向かってきていた。


「あれは‥‥‥フレイムバードか」

【シュル?デモ、様子ガオカシイヨ?】


 何やら慌てているようすというか、既に何処かで一戦交えているのか、やけにボロボロの大群のようだ。


 全力で逃げているようだが速度は出ておらず、ひぃこら必死になって羽ばたいており、火の粉が後から元気なく落ちている様子だ。



【シュル、ナンカ皆、叫ンデル】

「何て?」

【『逃ゲロ、ヤバイ、アレヒデェ、助ケテー』ッテ】


 ギャァスカ鳴いているようにしか聞こえないが、魔物同士の言葉ならば翻訳できているようだ。


 状況を推察するに、何かから逃げているようだが‥‥‥あの数で、何がと思っていた次の瞬間だった。



ギュルルルルルルル、ズッバァァァン!!

【ギャスァカァァァァァア!?】

【【【ギャギャギャギャギャァスカァァァ!?】】】


 何処からともなく飛んできた何かによって、一体のフレイムバードが切り裂かれる。


【シュル、ナンカ斧ミタイナノ、飛ンデキタ?】

「斧?」


 フレイムバードたちが逃げ惑う中、その追いかけて来たものらしい相手が姿を現した。



【コケェェェ!!】


 出てきたのは大きな斧のようなものを背負った一体の魔物。


 頑丈そうな足をしており、手の部分に短い翼がありつつも、少女のような顔をしているあれは‥‥‥


「まさか、ハーピー?」

【違ウ。ダンジョン内ノ魔物ダト…‥‥『チキンハーピー』カモ】


―――――

『チキンハーピー』

人のような体つきをしつつも、手足が鳥の魔物ハーピーが更に地上で過ごしやすように変わった魔物。

雄ならば真っ赤なトサカが目につき、メスならば翼の色が真っ赤になっている。

ハーピーが空での戦闘を得意にするのに対して、こちらは陸戦特化となっており、岩をも砕く蹴りを炸裂させていく。

容姿として人に近い部分もあるため、好事家などが求めることもあるが、正直言って捕獲するにはかなり命がけになりうるほどのものである。

―――――


 チキンハーピーならば、基本的に足技を使うはず。


 だがしかし、あの攻撃を見る限りあの背中に背負った斧を武器として扱っているように見える。


「というか、あの斧さっき投げられていたけど何でいつの間にか背負われているんだ?」

【ウーン、魔道具ナノカモ?】


 ダンジョン内で産出する魔道具だが、人だけが扱えるという訳ではない。


 過去には偶然拾った魔道具で大暴れをした魔物の記録もあるそうで、おそらくあのチキンハーピーもその類なのかもしれない。


 手元に回る斧を武器に扱うチキンハーピー‥‥‥これは結構やばいのかもしれない。



【ギャスカァァァ!!】

【ギャァァァスカァァ!!】


 先ほどまで逃げ回っていたフレイムバードたちが、どうやら腹をくくったようで決死の攻撃を仕掛け始める。


 ここで全滅するぐらいならば、いっそ相手を炎上に巻き込んで相打ちの形でかたき討ちでもと思っているのかもしれなかったのだが、残念ながらその想いは届かなかった。


【ココケェ!!】


 器用に足で背中にあった斧を握り締め、ジャンプして振り回すチキンハーピー。


 かなり重そうな武器なのに平然として振るっており、次々に仕留め‥‥‥そして一分も経たないうちに、フレイムバードたちは全て地に落ちた。


【コケェ‥‥‥コケッ!!】


【シュル!?コチラニ気ガツイタ!!】

「戦う気か!!」


 地面に落ちたフレイムバードを気にせず、ダッシュし始めたチキンハーピー。


 僕等の存在に気が付いたようで、こちらに戦いを挑みに来ているのだろうか。


【コケコケコェェェェ!!】

【エット、『戦ッテアタシ強サ証明スルンダァァ!!』ッテ!!】

「強さの証明?」


 何か気になったが、どうやら僕等と戦う気なのは間違いないらしい。


 飛んで戻って来る斧は脅威だが、避けられない戦いのようであった‥‥‥‥

ダンジョン内で拾ったと思わしき斧を扱い、戦いを挑むチキンハーピー。

何やら事情がありそうだが、避けられないようだ。

相手の強さは未知数だがやるしかない!

次回に続く!!



‥‥‥ダチョウ案もあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ