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それはいつか、魔王となりて  作者: 志位斗 茂家波
1章 旅立ちと始まり
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1-21 風のままに、気ままに

‥‥‥ハクロの健康状態に関しては何も異常はないと診断され、出発することに何の憂いも無くなっている。


 ギルド長の脱走対策も兼ねて、ハクロの編み上げたロープを納品しつつ、ようやくこのエルモスタウンからあちこちへ旅立つ用意が出来ただろう。


 そこで明日旅立つことを決定しつつ、宿屋にて僕らはどのように進むべきか考えていた。



「一応、ルートとしては先日魔法陣で移動した王都へもう一度向かうルートで、そこから国外へ向かう形で良いかな?」

【シュル】


 爺ちゃんの遺言通り、しっかりと世界を見て回りたいのだが、どこにどのような人の街や国があるのか把握し切れているわけではない。


 だからこそまずは、より多くの人の場所が集まる場所でしっかりと情報を収集するのが大事だと思いつつ、一度短い時間とは言え訪れたことのある場所を、当面の目的地とすることにした。




 なお、冒険者として目的地に向かう方法に、護衛依頼を受けてお金稼ぎも兼ねて進む手段がある。


 でも、残念ながらそう都合の良い依頼はないので、僕等の旅路としては近くの村や町を聞いて方向を決めながら進むしかなさそうだ。


【シュル、シュルルル、シュル】

「うん、エルモスタウンからこの街や村を経由すれば、最短距離かな?でも、冒険者として旅路の便利グッズもそろえたいんだよなぁ」


 この街で依頼を受けつつ、他の冒険者がどう生活をしているのかいろいろと探ってみたが、旅路の中で物をそろえている人が多い。


 特に、迷宮やダンジョンなどと呼ばれる場所には、普段過ごしていたら手に入らないようなお宝も眠っているそうで、その他からの中には旅路に恐ろしく役立つ様な魔道具などが存在しているそうだ。


 水が湧き出るツボ、一度だけ死を逃れる事の出来る人形、魔法が使えなくても魔法を使えるようになる杖、移動が物凄く便利になる空飛ぶ絨毯などなど、おとぎ話にでも出てくるのかと言いたくなるような代物も存在しているらしい。


 

 なのでここは、王都を目的地にしつつ、道中にダンジョンがあればそちらにもよるコースで向かうのが吉と判断し、僕等は進路を決定する。


「まずはエルモスタウンから、徒歩で3日ほどの場所にあるガルサンドタウン。そこからミツムラ村やゴルガベッサタウンも経由して…‥‥その近くにあるダンジョンに挑戦してみよう」

【シュルル!!】


 他の冒険者たちにも話を聞いてまとめてみたが、とりあえずここが一番近場かつ簡単に進みやすいようで、そこそこお宝も出る場所のようだ。


 できればその便利な道具の中にある物がたくさん入る魔法のカバンや、一瞬で風呂に入ったのと同じ状態になる霧吹きというのも耳にしたので、そういうのを手に入れたいところ。


 目的もそこそこ固まったので、あとはゆっくり寝るだけである。


 なお、ハクロはこの間まで馬小屋の方で眠ってもいたが‥‥‥うん、流石に人の体が生えた以上、そこで寝るのはちょっと絵面が良くないという事で、宿屋の主人に交渉した結果、同室で寝ることが可能になっていた。


「それじゃ、お休みハクロ。明日からここを離れて旅路に出るから、しっかり英気を養うためにもぐっすり寝よう!」

【シュル!!】


 眠るのに気合いを入れてしまうのはどうかと思うこともあるが、横になるとゆっくりと眠気が襲って来て、しっかり熟睡できそうである。


 このエルモスタウンで学んだことを活かしつつ、先へ進めると良いなぁと思いながら僕らは眠りにつくのであった‥‥‥


【シュルル‥‥‥スピィ】

「…‥‥というか、ハクロ寝つきが良すぎるね。5秒で寝ちゃったよ」


 ちなみに、旅立ったら野宿も多くなり交代しながら見張りをすることにもなるので、しっかりと寝られるうちに寝たほうが良かったりする。


 できれば寝る時間の確保のために、もうちょっと仲間も欲しく思うが…‥‥それは道中、見つけていこうか。











「‥‥‥そうか、彼らが旅立つのか。思ったよりも早かったな」

「ええ、そのため当分の間、ギルド長を拘束するためにこのロープをありがたく使わせてもらうことになります。だから、使われたくなければ大人しく仕事を進めてください」


‥‥‥ジークとハクロが宿屋で熟睡している真夜中。


 ギルドの執務室では、残業が決定して遅くまで仕事をしているギルド長と副ギルド長の姿があった。


「分かっているけどなぁ‥‥‥むぅ、できれば長居してくれた方が人を呼びやすくてよかったんだがなぁ」


 既に国から通知が出ており、国滅ぼしの魔物が出現したことは周知されている。


 とはいえ危険性がすごく高いことよりも人懐っこい面なども出されており、恐れられまくることはないようだ。


 賢きものは無駄に干渉せず、如何にして付き合い国のために動かせるか策略を練り、身のありようをしるものは興味を示しつつも、滅ぼされることが無いように立ち回りを考える。


「だが、それでも多少は愚者が出るのは残念だが‥‥‥そこはどうにもならないか」

「本日だけでも12件ほど、不審者が衛兵や冒険者の手によって抑えられていますからね。欲望を隠さない者や領分を越えようとする者など、釣って膿を出すことが出来るのでこれはこれで掃除がしやすいですけれどね」


 国滅ぼしの魔物に対して過度に恐れる事もないが、逆に愚かな企みを抱く輩は潰していかなければならないだろう。


 過去の例と比べるとハクロは穏やかな方だが、その実力は健康診断の中でも見られるように、魔物として優れすぎている面が多い。


 ゆえに、下手な怒りを買えば‥‥‥それこそ、そこで終焉が決まってしまう可能性もできてしまうのだ。


 だからこそ、そのような愚か者どもがやらかす前に、動ける者たちは動き、叩き潰していく。


 せっかくの国の益になるようなものを手放すことにならないためにも、冒険者として優れた者がいなくなるような事態を避けるためにも、他国であったとしても敵対するようなことにならないためにも、ココはどこのものだろうと守ることに関して一致団結をするのだ。


 国滅ぼしの魔物が現れたという事は、一致団結するいい機会でもある‥‥‥危ない橋を渡ることになるかもしれないが、その分強固な手助けを得られる機会を増やすことにもつながるのだ。


「でも、気になるよねぇ。エリート種の発生も少ないけど、国滅ぼしの魔物が出る時は‥‥‥大抵の場合、それこそ大きく動くような事態があるらしいからね。彼女の出現が、何か示すようなことにならなければいいんだけどなぁ。例えば魔王(・・)の出現とかね」

「‥‥‥ありえなくもない話しですが、最悪の事態にならないように動けばいいと思います。過去には敵対するような道を選ばなかったものもいると聞きますからね」


 何が出るのか、何を示すのか、そしてそれらがどういう結果を生み出すのか誰にもわからない。


 ただ一つ言えるとするならば、彼らはまだ若いのでより多くの物事を知ってもらうことこそが、この世界のためになるのかもしれないと思えることぐらいであった…‥‥



「だからね、そんなヤバい案件にならないためにも影から護衛する必要もあると思うんだよ。というわけで、当面副ギルド長に権限渡すから、逃がしてほしいなぁ」

「だめです。あなた以外にも優れた冒険者の護衛も付けられますし、何よりも出現させてしまった元凶とも言えるような人がいると余計な事態を引き起こしかねません。あ、むしろここで始末したほうが、それこそ

世のため人のためになるのでは…?」

「さらっと恐ろしくシャレにならないような、結構マジな目で言わないでくれないかなぁ!?」


‥‥‥でも、副ギルド長のいう事もある意味正しいような気がするのではないかと、もしもこの場に職員たちがいるのならば全員そう思うのであった。

ふたたびの旅路の始まり。

出発したての時のように一人ではなく、今度は二人旅である。

ああ、相手がいると楽しさも面白さも倍増しそうだなぁ

次回に続く!!



‥‥‥いや本当に、副ギルド長の判断もあながち間違ってないのかもしれない。

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